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99話

 門番から森の魔物がどうとか、話されたが、今のところ問題は無さそうだな。


 全力で走る俺はすぐに別れ道まで辿り着く。

 2枚の看板が立っており、俺は立ち止まり、内容を確認する。


 文字が消えない魔導具なのだろう。長く設置されているように見えるが、文字ははっきりと表記されていた。


『ボルガ山、山道入口』

『深奥《しんおう》入口、魔物注意』


 こっちだな!


 俺は方向を確認して、ボルガ山に向かって走り出す。


 はっきり言うが、アイツら……毎回毎回こんな不気味な森を通ってクエストしてたのかよ。


 俺が走っている道も人が通れるようにはなっているが、日本生まれの俺からしたら、単なる獣道にしか見えないな。


 森の中をボルガ山に向けて駆けていけば、やはり魔物ってやつの1匹や2匹は遭遇する訳だが、角ウサギやスライムといった可愛らしいやつばかりだった。


 走ってる俺に飛び掛かる角ウサギが逆に弾かれ、スライムも同様にネバネバの液体に変化する。


「はあ、なんだかなぁ……」


 当たり屋が調子に乗って、装甲車に体当たりしているような感覚に、むしろ、罪悪感すら感じる。


 そうして、森を抜けた瞬間、こじんまりとした山が姿を現す。


 木々が生い茂り、森との境目も僅かな差しかないため、無意識に駆け抜けたなら気づかなかったかもしれないな。


 すぐにボルガ山に登ろうとすると、山頂付近から、複数羽の鳥が舞い上がるのが見えた。


 空に舞い上がった鳥の群れが、空で急転回すると一気に急降下していく。


 今更だが、俺の立っている位置から鳥だと確実に認識出来るのには、違和感があった。


 豆粒サイズに見えるなら、違和感なんて感じないはずだったが、俺の目には、山頂の群れの1匹1匹が鷹を間近で見た時と同じサイズに見える。


「つまり、ありゃ、めちゃくちゃデカい鳥なんだよな……」


 あまりに予想外の光景に俺は逆に冷静になっていた。


 ソマリとポメラが心配だからな、急がねぇと……


 俺は山道に沿って、ボルガ山を上に登って行く。


 こんな時、普段ならモモが何かしらいいアイディアをくれたり、エスが助言をしてくれるんだがな。


「泣き言は、ガキの頃だけだろうが、甘ったれんな俺!」


 自分に気合いを入れたが、意外に恥ずかしいな……


 山道を進むと、森では見なかった緑色のクソガキが襲ってきた。


 棍棒や木製の弓を俺に向けてきて、最初は驚いた。


 見た目は緑色の肌をしたクソガキで、尖った耳にカエルみたいな口とギザギザでボロボロの歯並び。


 ただ、そいつらは、いきなり矢を放ち、棍棒で襲ってくる。

 その結果、ぶっ飛ばした。

 人に狂気を向けるクソガキは亜人だろうがなんだろうが、容赦する気はねぇ。


 そうして、山を進むと、緑色のクソガキは、親か兄弟か知らないが、体格のいい仲間を連れてきた。

 ここで謝罪するなら、許してやったが、当然、そんな雰囲気も素振りも見えない。なんなら、手には剣まで握ってやがる。


「おいおい? 目を血走らせて、剣を握るとか、やべぇもんでも、やってんのか?」


 雄叫びを思わせる言葉にならない叫び声が周囲に響き、俺も会話を諦める。


「剣を相手にするのは、正直……嫌なんだがなぁ」


 流石の俺も剣を相手に戦えるか不安だ。むしろ、一般人の俺が剣を向けられてるってのが、理不尽すぎるよな。


「グガァァァァァッス!」


 叫び声と共に駆け出してきたやべぇ奴は剣を振り上げて、地面に剣を叩きつける。


 地面にめり込んだ剣を見て、俺は拳をフルスイングで顎にぶち当てる。


 緑色の大男は完全に白目を向いている。


「やべぇ!」


 一瞬、力加減を間違えたことに気づき、慌てて倒れた緑色の大男を見るが意識は無いらしい。


 ただ、他の緑色のクソガキ共は懲りずにまた襲ってきたので、全員に拳骨をくれてやった。


「ガキはガキらしく遊べ! 他人に迷惑を掛けてんじゃねぇぞ! バカ野郎!」


 そのまま、山の頂上に向かうと前方から複数の鳥の鳴き声が聞こえてくる。正直、いい知らせには思えない……


 前方には、小さな人影が見え、それがソマリとポメラだとすぐに分かった。


 普段、2人が戦闘に使用している武器は見えない。むしろ、何かを抱えているように見える。


「来るなよ! バカ! ボク達は美味しくないぞ!」

「そうだぞ! オイラ達は卵を少し貰っただけだぞ!」


 2人の叫び声に対して、後ろ側から追っ掛けている巨大な鳥が“ギャアァァァァスッ!”と次々に声を上げる。


 あの巨大鳥がキレてるのは、アイツらが卵を盗んだからか……はぁ。


「ホタルぅぅぅ! ボク達食べられちゃうぞ!」

「食べられるより、食べる方が好きだぞぅぅぅ!」


 頭が痛くなるような光景だった。


「鳥からしたら、卵泥棒を許せねぇよな……ただなぁ、目の前でウチの連中をスナックにされたりしたら、一緒に明日から笑ってやれねぇだろうがァァァァ!」


 【身体強化】を発動して、横に生えていた木に視線を向ける。

 そこそこに太めの木を両手で引き抜き、肩に担ぐ。


「お前ら! 全力で駆け抜けろぉぉぉぉッ!」


 声を聞いたソマリとポメラが速度を上げる。

 俺の横を駆け抜けた2人を見てから、担いでいた木を勢いよく前に振り抜いた。


 “ギャアァァァァ!”


 【身体強化】をした状態で振り抜いた一撃により、先頭を飛んでいた鳥が後方に吹き飛んでいた。


 それを見て、足を止めたのか俺の背後からも「ホタル! すごいぞ!」と2人の声がする。


「お前ら止まるな! とっとと山を降りろぉぉ!」


「わ、わかったぞ! だからボク達を怒るのはよくないぞ!」

「そうだぞ! ホタルが怒ると怖いから、オイラはすぐに山を降りるぞ!」


 それから、標的が俺に移ったらしく、鳥の群れがギラギラとした目で睨みつけてくる。


「なに、ガンくれてんだ! 理由はどうあれ、やる気ならやってやんぞ!」


 向かってくる鳥に対して、俺は拳を叩きつけていた。


 俺がボルガ山を降りる頃には、鳥の群れもボロボロになって、巣へと飛んでいった。


 山を降りてすぐに、俯いた状態の2人を見る。


「あ、ホタル……ボク達、格好悪いぞ……」

「ホタルがいなかったら、食べられてたかもだぞ……」


 無駄に凹んでいた2人の頭をポンと叩く。


「理由は知らないが、戦えない理由があったんだろ?」


 頷く2人は、卵がまだ生きてるため、マジックバッグに入れられなかったと教えてくれた。


「戦えてたら、負けないんだぞ……ただ、卵を捨てたら、クエストがクリアにならないんだぞ……」

「10個の卵を持ってくるクエストで、オイラ達、1人で10個は持てなかったんだぞ」


 そんな2人に笑いかけてから、俺はマジックバッグに入れてきた弁当を取り出してやる。


「あぁぁぁ! ボクのお弁当だぞ!」

「あぁぁぁ! オイラのご飯だぞ!」


 2人に笑顔が戻ったところで昼食にすることになる。


 嬉しそうに巨大弁当の蓋を開き、嬉しそうに足をパタパタと動かしている。

 獣人ってこともあって、シッポもフリフリと動かし、耳をピコピコと動いていた。


「幸せの味だぞ! 美味しいぞ!」

「ホタルの弁当は最高なんだぞ!」


 嬉しい言葉を聴きながら、俺はある事実に気づいた。


 あ、俺の弁当ないじゃんか……やっちまった……


挿絵(By みてみん)

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大将は頭にタトゥー入れているの?(*´∀`)笑
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