1─9話、女性の扱い?謎の爺さん現る!
俺は改めて、4日間を振り返る。
最初はいきなり異世界だなんて、正直、アニメか小説かって思って夢でも見てるんだろう程度に思った。
ただ、現実はモモが居て、わけの分からない紙に選ばれましたみたいな内容だ。しかも、俺の“ベリーショート”を“ハゲ”扱いときたもんだ。
まあ、それは展開の相違ってやつだろう、『弘法も筆の誤り』って言うからな。女神ってのにも、勘違いはあるだろうさ。
そんでもって、アルムさんと兵士一同、猿公襲来、オマケに俺のメード・イン・ジャパンの設備が『リセットカンパニー製』になるわ……正直、泣けるよ。
何より、問題点は、スキルってやつだ。
普通に便利なスキルもあるが、一つ便利すぎてヤバいのは【店舗受取】だ。
このスキルは、金で無くなった食材を補充できるスキルなんだが……
試した結果、見てた全員の前で、アルムさんから支払われたゴル金貨1枚、金貨2枚、銀貨10枚を全部飲み食いされた食材に変えちまいやがったからな。
全員驚いて、大騒ぎだったが……
売り上げがすべて食材になるのは、正直、赤字とか黒字以前にやべぇだろう。
つまり、今俺達は、街に入る手前で門番に停められている。
理由はシンプルだ。
「街に入るなら、1人、銅貨5枚なんだが……本当にないのか?」
困ったように街の門番に質問されているアルムさん。
当然、今の俺達にそんな金はない。すべてを食事と酒に変えてきた4日間を考えれば当然だな。
「ほ、本当に私達は、首都『ライム』から騎士団の討伐命令を受けて、『邪猿の森』の魔引きをしてきたんだ! 生憎と身分を証明する物は魔物の襲撃で泥沼に沈んでしまってだな」
必死な説明に門番さん側も困り果ててるなぁ、ありゃ、泣き落としも無駄だろうな?
「先輩、諦めるッスよ。もう適当な場所に店を出しちゃうんじゃダメなんッスか? 流石に疲れたッスよぅ」
「お前は俺に抱えられてただろうが?」
「先輩は、レディの扱いを学び直すッスよ! 正直、小学生からやり直しレベルの落第点ッスからね」
そんなモモの声に俺が渋い表情を浮かべていると背後からゆっくりと門に向けて、一台の馬車がやってくるのがわかった。
次第に近づき、俺の横を抜けた少し先で馭者が馬を停止させる。
馬車側から、老人の声で「何事かね?」と周囲に聞こえる声量の声が掛けられる。
デカい声の爺さんだな?
俺の見てる前でアルムさんと話していた門番が慌てた様子で仲間であろう人物に声を掛けている。
呼ばれた別の門番が馬車の老人に挨拶をしてから頭を何度も下げていく。
「これはアッラマーノさん。すみません。少し問題と言いますか……宿場町に入りたいって連中でして、ただ、1人分の通行料もないって言われて困ってる次第で……」
「ふむふむ……そうなのかい? それは困った話だねぇ……ふむふむ?」
馬車の扉が開くと白髪頭の老人が降りてくる。整った身なりと立派な白髪の髭が印象的だな。
「ならば、若いの? お前さんらの防具や武器を我が商会で買い取ってやろうじゃないか」
視線がアルムさんや兵士連中に向けられると、アルムさん達は少し困ったような表情を浮かべる。
「お心遣いに感謝するが、我々の防具や武器などは騎士団から支給された物で、妄りに手放す真似は出来ないのだ……」
「そうなのかね、それを聞くと、王都なんかに行けば、済む話に聞こえるが、その為の移動手段と旅費はあるのかね?」
幾つかの質問をする爺さんに、アルムさんが身振り手振りで説明している。
話をきいて分かったが、この爺さんは、ドルミールの街で商館を開いてるらしいな。
「先輩? おじいちゃんに、猿肉とか他の魔物肉を買い取って貰えないッスかね? 正直、あのウォークインはお化け屋敷にしか見えないッスから……」
言われて納得だ。確かに今のウォークインに魔物肉のオンパレードだ。ダメ元で交渉してみるか……
「すまない。爺さん? あんたは、肉なんかの食材を買い取ったりしてないか?」
俺の発言に兵士が3人ほど下から睨みつける形で文句を言ってくる。
「貴様ァ! いきなりアッラノーマさんになんて口を!」
「この街でアッラノーマさんにそんな口を聞くとどうなるか教えてやろうか!」
勇ましいな……震えてなければ、本当に立派な覚悟と忠誠心なんだろうが……
「悪いな。今、俺は爺さんに話し掛けてるんだ。それで、食材なんかは買い取り可能なのか?」
「ふむふむ……失礼な態度もまた若さだねぇ。我が商会は食材は残念ながら、信用がないと取り引きは難しいのぅ」
立派な髭を擦るアッラノーマ。
流石にお手上げだな。
「そいつは残念だ。いい具合にワインに漬け込んだ肉があったんだが、確かに食の取り引きは信頼関係がないとな、無粋な頼みをしたな。話を聞いてもらって感謝するよ。爺さん」
「ほぅ、断られて礼を口にするか? 見た目は粗暴、言葉遣いも知らぬ、図体のでかい小僧かと思ったが、こりゃ驚いた」
「確かに言う通りかもしれねぇが、流石に言い過ぎじゃねぇか? 話を聞いてもらったら礼くらいはするさ」
「ならば、その礼に対してこちらも誠意を見せねばならんかな。どんなワインに漬けているかだけでも、見せて貰えるかね?」
そうして、話が進むと俺はある事実に気づき、若干の冷や汗を流していた。
どうやって出せってんだ? 今、この場で店を出現させていいのか……むしろ、街の入口に店って……どんな喧嘩の売り方だよ……
「な、なら少し待ってて貰えないか? 品を取ってくる……本当にすぐだ」
【身体強化】を使い、一気にその場を離れ、人気の無い街の裏で、俺は【店舗収納】をオフにして、カフェレストラン『Gold Rush キンザン』を出現させる。
店内から複数の肉のタッパーと漬ける際に使ったワインを手に取ると店を収納してから、爺さんの元に戻る。
俺が戻ると爺さんは、モモと話しているようで、楽しそうに笑っていた。
「そうなんッスよ! 先輩は仕方ない人なんッスよ。料理は馬鹿みたいに美味いッス! でも、他はモモがいないと本当にダメダメなんッスよ」
「ほうほう? それは困った男じゃのぅ」
「そうなんッスよ。しかも、先輩は悩んでもあの顔ッスから……モモ以外に話せる相手がいないんッスよ。まったく、だから頭も悩みでああなるんッスよ。困った……先輩……ッス、ねぇ……」
「ほぅ? 俺の顔とベリーショートがなんだって?」
爺さんに食材を見せる前にモモを問い詰めたのは言うまでもない。本当にモモはしゃあねえヤツだよな。




