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1─8話、魔物料理とモーニングセット。モモを脇に抱えて

 俺が猿公をウォークインに入れてから、4日が過ぎた。

 その間にも猛獣……じゃなくて、魔物と複数回出くわすことになったが、アルムさんや兵士さんらがきっちりと討伐していた。


 最初の猿公は俺とモモに気を取られた結果みたいで、正直に言えば、アルムさんは俺が見てきた女性の中では何人かを除いてかなり強い方だと感じた。


「ホタル殿! すまないが、また仕込みとやらを頼めないだろうか? もちろん、首都『ライム』に着いた際には仕込みに使ったワインについても支払いは行うぞ!」


 アルムさんの後ろの兵士連中も期待した眼差しを俺に向けてやがる……はぁ。


「わかった。ただ、しっかり支払いはしてもらうからな? マジに支払って貰えないと大赤字になっちまうからな」


 最初は金貨だなんだと、アルムさん達は手持ちがあったが、酒に飯にと、一食で20人分を三食、ワインのボトル数本付きで飲み食いした結果、綺麗に手持ちを使い果たしてしまっている。


 この残念騎士団は、本当に大丈夫なのかと心配ばかりが頭を過ぎる。

 ただ、アルムさんが凄く頭を下げてくるので、仕方なく流されてる感じだな。


 何より、猿公の肉を色々な物に漬け込んだ結果、ワインに漬けてた肉が余程好みだったらしい。

 アルムさんを始め、兵士達は魔物を捕まえてきては、ワイン漬けにしてほしいと言われ続け、今に至る。


「はぁ……残りストックはスキルってやつのお陰で補充出来てるが、良くて2日分程度か……無駄に開店祝いで酒屋から安くワインを仕入れたが……完全に赤字だなぁ」


「先輩、どうせ初日から出るはずのなかったワインなんッスから、むしろ売り上げって割り切った方が気楽ッスよ!」


「モモ……お前の給料は、店の売り上げから出るんだぜ? このままじゃ何も出せないぞ?」


 モモが愕然とする中、俺は魔物肉をワインが入ったタッパーに漬けていく。


 そうして、漬け終わると次にウォークインから、古い順にワイン漬けの肉を取り出して、フライパンで焼いては皿に盛り付ける。


 既にヤケクソ気味になっているが、モモから言われた通り、日本で俺の店があった場所や立地条件を考えれば、最初から赤字だったかもしれない。

 そう思えば、気持ちも楽になる。


 ついでに言えば、最初こそ、ふざけんなと思ったリセットカンパニー製の換気扇だが、これだけワイン臭い肉を焼いても問題ない事実を考えたら、かなり優秀だ。


 ただ、絶対に普通の店ならクレームもんだろうがな。


 そうして、昼食になり、『魔物肉ワイン焼き』と『よく分からない美味い草の入ったオニオンスープ』が完成する。


 初日は俺とモモが運んでいたが、ここ数日は兵士達が自分から取りにくるようになっている。飲食店としてはなんとも言えないが、フードコート感覚でやる方が助かるので、今はその件は保留だな。


「ホタルの旦那。いつもありがとうございます」

「ホタルさん。いただきます!」

「モモちゃん。パンありがとうな」


 まぁ、こんな感じで……正直、学校給食を思い出すような綺麗な列を作る大人ってのが不思議な光景だがな。


「なに! 黄昏てるんッスか先輩! 次の肉を早く焼いてくれないとヤバいッスよ!」

「悪りぃ。すぐに焼けるから待ってくれ!」


 ここ数日はこんな感じだ。必要な時は【店舗収納】を使い店舗を出し入れしている。


 そんな食事の時間が終われば、また俺とモモは、アルムさん達と移動を開始することになる。


 ただ、店を収納する度に、使った食器なんかがリセットされるが、流石に使う前に洗うので、二度手間感は否めないな。


 そうして、アルムさん達と出会ってから4日、明日には目的地のネハン王国に入れるようだ。

 予定よりも長く掛かっているのは間違いなく、食事に時間を使い過ぎているのと、俺とモモに気を使って夜の移動を避けているからだろう。


 正直、申し訳ない気持ちと、モモがいる以上は無理ができないので、気遣いに感謝しかない。


 朝になり、軽めの朝食として、モーニングセットとコーヒーを用意していく。

 因みに、この世界はコーヒーは酒よりも高価な品らしく、1人、二杯から三杯は飲むため、朝の移動もやはり遅くなっている。


「先輩……ドリップが間に合わないッスよ! なんでアイスコーヒーの紙パックを買ってないんッスか! 夏場なら完全にやらかしッスよぉぉぉぉ!」


「曲がりなりにも、カフェレストランなんだよ! いつも言ってるが、ドリップの方がかっこいいだろうが!」

「変に格好つけた結果が! 朝から戦争になってるんッスよ! 中二病は卒業しといてくださいよぅぅ!」


 俺とモモのやり取りも毎朝のお約束になっている。


 こんな数日間のルーティンも今日で終わりだ。


 俺達は、昼過ぎには森を抜けることが出来た。


 長く鬱蒼とした森の中を進んでいた俺の目に広がる草原、何処までも続くような広い一本道が姿を現す。


「ホタル殿、ここからはただ、真っ直ぐに進めば街に辿り着けるぞ。そうすれば約束を果たせるぞ」


 俺は小さく頷く。正直、金銭の話を今されても困るからだ。


「その話は、街についてからにしよう。一番近い街にはどれくらいで到着するんだ?」


「普通なら、半日も歩けば辿り着けるだろう? 少なくとも夜までには街に入れるのは保証するぞ」


 アルムさんの言葉に俺は頷きながらモモを見る。


 半日と言われた辺りから、表情が凍りついていたが、まぁ……最悪は脇に抱えたらいいから問題ないな。


 そうして、太陽が地平線に消えると同時に俺達は一番近い街に辿り着くことができた。


「ホタル殿、モモ殿。この街で宿を借りるとしよう。それに、モモ殿は既に限界みたいだしな……」


 俺は有言実行ってやつで、モモを脇に抱えて全力で走ったため、グロッキーになったモモの姿があり、兵士を含め全員が心配そうな視線を向けているが、こればっかりは仕方ないよな。

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