↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/153

77話

「ホタル殿。それにドレイクさんも、お久しぶりですね。いきなりの訪問とは、どうされたのですか?」


 奴隷商の主、リオ・タミンの執務室に通された俺はドレイクと共に座るように言われたソファーに腰掛けている。


 リオのオッサンが正面に腰掛けてから、俺は本題を切り出すことにした。


「いきなり来て悪いな。実は、一つ頼みがあってだな」


「頼み? ですか、ただ、ホタル殿に奴隷を売るとなると、我先にと……当館の奴隷達がざわめきまして……何人くらい必要なのでしょうか?」


「勝手に奴隷購入の話にすんなよ……頼みってのは、この新しくなった館で使ってない厨房なんかがあればと思ってな」


 予想外の質問だったのだろう。リオは首を傾げるが、軽く悩むと、厨房について教えてくれた。


「使っていないと言うと語弊《ごへい》がありますが、新しくなった厨房ですが、やはり使いにくいと当館の女奴隷達が言いまして、元々の窯を使っていますので、ある意味で新しくなった厨房は使っていないと言えますな」


 ビンゴだな。前にそんな話をしてた気がして来てみて良かったぜ。


「なら、少し見せてもらえないか?」


「へ? 厨房をですか?」


 こちらの意図がさっぱり分からないと言いたげな表情のリオのオッサンから、許可をもらうと厨房へ向かう。


「些か、当館の裏側を見せるようで、心苦しいのですが……」


 厨房にリオのオッサンが先に入り、後に続いて入ると、厨房内にいた女性人達からの視線が一斉に向けられた。


「主様、ホタル様!」


 そんな声が一斉に叫ばれる中で、ドレイクがポツリと呟く。


「ドレイクは……マスター、ドレイク見えてない?」


 そんな可愛いドレイクの言葉を聞きながら、頭を撫でてやり、俺は目的の物を探す。


 リオのオッサンから許可をもらってから、厨房内の棚を開き、机の中を調べ、とりあえず、手当たり次第に引き出しを開けていく。


「ホタル殿、いったい、何を探しているのですか?」


「悪りぃ……説明が難しいんだが、改築前になかった物で、よく分からない物があるはずなんだ。心当たりないか?」


「はて?」


 顎に手を当て考えるリオのオッサンは何かを思い出したと言わんばかりに、女奴隷に指示を出す。


 指示を受けた女奴隷が小さな木箱を手に戻ってくるとリオのオッサンは木箱を開いて俺に見せてきた。


「はい、こちらなのですが。持ち主が不明の品を入れておくための保管箱となっていまして、こちらの品は改装前には当館になかった品になります」


 木箱から手渡された卵型の青い置き物、俺はすぐに確信した。


「すまないが、この青い石を譲ってくれないか」


 突拍子もない発言だと俺も思う。普通なら断られてもおかしくないだろう。


 ただ、リオのオッサンは、何も質問せずにそれを俺に渡してきた。


「構いません。この木箱の中に入れられる品は本来の持ち主が分からないために集められた物ばかりですからなぁ」


「悪いな。有り難く頂いてくよ」


「はい。また、人が必要になった際には、当館をご利用くださいませ。ホタル殿のために働く奴隷をご用意させていただきますので」


 奴隷商を後にして、店に向かって歩いていると、ドレイクは不思議そうな瞳で質問をしてくる。


「マスター? さっきの丸いやつってなに?」


「この青い石はルーターだ。モモの魔力を遠くに送るための道具って言えばわかるか?」


 俺はドレイクになるべく分かりやすく説明をしていく。


「つまりだ。モモは魔力が無くならないスキルがあるんだ。だから、その魔力をこの青い石《ルーター》を使って飛ばすんだ」


「なんで、魔力が飛んでくの?」


 うぅ、鋭いなぁ……なんでだ……スマホにしてもネットにしても、なんで飛ばせるかなんて説明できねぇよ。


「あ、あれだ! 花の花粉とか、種みたいなもんだ! 花を咲かす時には飛ばすだろ!」


「あぁ、マスターは物知りだね。ドレイク、知らなかったよ。へへ」


 多少の罪悪感は覚悟してたが、無邪気な感想はやっぱり、心に響くな。


 そうして、店に戻るとモモと獣人コンビが、頬を膨らませて、プンプンとお怒りモード全開で出迎えてくれた。


「朝からまたお出かけッスか。モモを置いてきぼりで、先輩は朝から遊び人モードッスか?」


「そうだぞ! ピカピカのホタルがいないから! 朝から気持ちが真っ暗だったんだぞ!」

「ソマリの言う通りだぞ! ツルツルのホタルがいないから、モモが真っ暗だったんだぞ!」


「モモは普通ッス!」


 賑やかな出迎えを有り難く思いながら、俺は全員をフロア側のテーブル席に移動させる。


 俺は真面目な顔でその場に座った全員の顔を見てから本題を切り出す。


 俺が考えているのは、モモの魔力をルーターを使って、ダンジョンコアに流し込むといった前代未聞の方法だ。


 モモの魔力が枯渇することがないなら、ダンジョンコアに最低限の魔力は送れるだろう。


「なんッスか……モモを都合のいい女みたいに考えてるんッスか!」


 突然立ち上がったモモが店舗のスタッフルームに向かって走っていく。


「ホタル! 追いかけろよ! モモが可哀想だぞ!」

「そうだぞ! オイラ達は、宿屋側で待ってるから、仲直りしろよな!」


「マスター……仲直りなら、萌え萌えきゅんだよ!」


 チビ3人に心配させちまうなんて……やっちまったな。


 ただ、目の前の問題と誤解はすぐに解決しないとだよな。


 俺は立ち上がると、スタッフルームに向かって歩いていく。


 扉の前に立ち、ドアノブに手を伸ばすと、内側からモモの声が聞こえてきた。


「開いたら絶交して、即日退職してやるッスからね……」


 本気の声に俺は握ったドアノブから手を離して、扉に寄り掛かるように腰掛ける。


「昔もあったな……たしか、モモの取っといたプリンを俺が勝手に食べた時だったか?」


「……」

「他にも、最初の頃は、俺がよくモモの母ちゃんに連れられて飯を食べさせてもらいに行く度に不貞腐れてたもんな」


 モモと初めて会った頃の話をすると、スタッフルームから「今は関係ない話ッスよ……」と力無く返事が返ってきた。


 そう、最初から俺とモモが仲良くできたわけじゃない。

 モモの母ちゃんであるカナミンが、どうしても忙しくて帰れない日なんかは、強制的にモモの面倒を見せられたことも何度もあった。


 決まってカナミンからは「手を出すなら、責任を取れるくらい大きな男になってからにしな」と娘と生徒相手に言いながら笑ってるような人だった。本当に親かと疑いたくなるような発言も山ほど耳にした。


「あの頃のモモは……1人が寂しいんじゃないもん! 1人が嫌なんじゃないもん……って泣いてたよな」


 俺は煙草を取り出して火をつける。


「そんな頃の話は忘れたッスよ……」


「モモ、頼む。1人でずっと暗闇を耐えてるやつがいるんだ。力を貸してくれねぇか……モモにしか救えないんだ」


「……モモは、嫌な子になったッスから……先輩に反抗期中ッス」


 その返しは予想外なんだがな……


「俺には、モモが必要だ。なにより、ドレイクや、ソマリとポメラの獣人コンビも含めて、みんながいるから、やっていけるんだ。だから、都合がいい女とか、反抗期中なんて言うなよ。優しいモモが1番好きだからよ」


 そこまで口にすると、スタッフルームの扉が内側から開かれる。

 扉を背にしていた俺は内開きの扉が開いたと同時に室内側に頭からひっくり返る。


 口に咥えていた煙草がモモにより、掴み上げられると灰皿に押し当てられシケモクに姿を変える。


「先輩、なら信じてあげるッス……モモは優しいッスから」

お読みいただきありがとうございます!

もし少しでも『蛍とモモの掛け合いが面白いな』『続きが気になる』と思ってくださったら、ページ下部の【☆】や【ブックマーク】で応援していただけると、ハゲみになります……!(毛根的な意味で)

☆ギャグが笑えなくても、クーリングオフは勘弁してください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。