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75話

 俺はスリンガーさんから、ダンジョンコアについて説明された。


 本来はダンジョンに縛られており、破壊することでのみ、破片を手に入れられる品物らしい。

 だが、ダンジョンコアを失ったダンジョンはダンジョンとしての力を完全に失う為、ダンジョンが存在する地域や国ではダンジョンコアの破壊を禁止している地域が殆どだそうだ。


「つまりですね。ダンジョンコアを完全な形で手にするなんてことは、本来のこの世界のルールでは、ありえないことなのです」


 スリンガーさんが必死に説明をしてくれたが、俺は一つ気になったので質問する。


「なら、なんで、ミラさんとスリンガーさんは、ガラス玉をダンジョンコアだって言い切れるんだ?」


「それはですね。この場所とそのダンジョンのサイズにあります。

このゲーム世界『異世界騎士のマイライフ』オープニングには、多くのダンジョンコアが破壊されるシーンや廃ダンジョンとして、廃棄されるダンジョンが映し出されます。

スタンピードを恐れた世界が平和な世界を作るために愚かな行動を行い、魔物がいない世界は人が争い出すといった世界史が語られるのです」


 長い説明を聞き、俺は手に握ったままのガラス玉を見つめた。


「なぁ、このダンジョンコアってのは、持ち出しても問題ないのか?」


「え、いやはや、それなのですが……こちらとしても、まさにイレギュラーでして……実際にダンジョンコアが手に入るなんて描写は存在しませんでしたからねぇ」


 逆に言えば、こちらの世界で直接調べるしかないってことか……


「つまり、誰か分かりそうな人に聞くしかないってことか?」


「ホタルさん。それはダメだよ? むしろ、オススメしないよ。ダンジョンコアを手に入れたなんて、話を信じる人もいないだろうし、本物だってなっても、いい結果にはならないだろうからね」


 ミラさんからの否定的な言葉に俺は驚きながらも話を聞いていく。


 ただ、話を聞いて、俺は考えを変えざるを得なかった。

 仮定の話だが、ダンジョンコアだと認められた場合、ダンジョンコアは国に強制的に回収される可能性が高いと言われたからだ。


 冒険者の功績を奪うことを極力避けている国であっても、未知の可能性が秘められたダンジョンコアを冒険者の手に委ねるような真似は決してしないからだ。


「ただなぁ……なら、どうしたらいいんだよ……」


 スリンガーさんは、両手を組むと悩みながらも、一つの提案をしてくれた。


「そうですねぇ……単純に鑑定士を見つけて、本当にダンジョンコアかをまずは調べる必要があるでしょうな。あくまでも可能性のままでは、話が進みませんからね」


 そう言われた俺はスリンガーさんに申し訳ない気持ちを持ちながら、女神ネーメからもらった鑑定を発動させてみることにした。


 鑑定の結果は、間違いなく“ダンジョンコア”だった。


 しかも、丁寧に使い方まで提示してくれていた。


『ダンジョンコア』──ダンジョンの種であり、ダンジョンコアを中心にダンジョンが形成される。

 ダンジョンマスターが存在する場合、ダンジョンマスターの意思により、ダンジョンの危険度と形状を変化させられる。


 なんか……すげぇな。ただダンジョンマスターってのが、エストだとすると困ったなぁ。


 ただ、発動させたら、分かることだから、ゆっくり考えるとするか。


「話はわかった。今は保留にして、一旦帰ってから考えよう」


 そうして、長かったダンジョン探索は、予定を大きく過ぎる結果になったが無事に終了した。


 店に戻ると、ドレイクが扉の前で待っており、俺達の顔を見て泣きながら駆け出したかと思ったら、俺に向かって飛び込んで来た。


「マスター! 心配したよ。なんで、すぐに帰ってこないの……ドレイクは待ってたんだよ」


「よしよし、大丈夫だからな。悪かったってドレイク。ちゃんと帰ってきたからな」


 ドレイクの行動にモモと獣人コンビも、仕方ないといった表情を浮かべていた。


「先輩……ドレイクだから、許すッスが、他の女に抱きつかれたりしたら、絶対に許さないッスからね!」


 なぜか、釘を刺されたが、モモの言葉に獣人コンビが異議申し立てをしていた。


「ずるいぞ! ボク達もホタルに飛びつきたいぞ!」

「そうだぞ! オイラもホタルに抱きつくぞ!」


「なんでそうなるんッスか!」


 獣人コンビと暫く言い争いをしていたが、最後はモモと獣人コンビが落とし所として「この場にいる人だけ」って言葉で解決した。


 その後は背中と頭に獣人コンビが飛び込んできて、俺はチビ達に取り囲まれたが、まぁ、こんな日もあるよな。


「ホタル殿。仲睦まじいところ、恐縮なのだが、我々はこれで失礼させてもらうとします」

「だね。私もスリンガーさんと同じことを考えてたからね。ホタルさん。またね!」

「ですね。色々あった気がしますが、私も暇じゃないので、ホタルさん。失礼するわ」


 そう言われ、俺は帰っていく『黒龍の息吹』のミラさん、スリンガーさん、ナンシーさんを見送った。


 それから、俺達も店の中に入り、食事を済ませていく。


 その後は、各々が自室に移動して眠りにつく。


 ベッドに横になり、薄い布を布団代わりに被る。


 …………

 ………

 ……


 だぁ……寝苦しい……なんでこんなに熱いんだよ。


 目を開いた瞬間、予想外の光景が目に入る。


 寝息を立てるドレイクの顔があり、反対側をゆっくりと向くと、ソマリとポメラの2人が眠っていた。


 何がなんなんだよ……なんで、3人が俺のベッドに寝てんだよ!

 こんな所をモモに見られたら……色々とやべぇ!


 とにかく、抜け出さないと……


 俺はゆっくりと、ベッドから廊下に移動する。


「……無駄に汗だくだぜ。店舗側で寝るにしても、汗を流さないとだよな……はぁ」


 俺は寝泊まりに使っている宿屋の浴室に向かってシャワーを浴びていくことにする。


「流石に1人のために大浴場に湯を沸かすのはなしだよな」


 浴室に移動して、シャワーを浴びていた時だった。


「マスター……」


 突然、ドレイクの声が扉越しに聞こえ、ビクッと身体が震えた。


「マスター、あのね……お背中ね、流したい……」


「いや、ドレイク……あのな、あれだ! 俺は自分で洗えるからな……」


「……ドレイクは、流したい……でも、マスターは嫌だよね……ごめんなさい」


 酷く落ち込んだ声に俺は血迷ったんだと思う。ただ、このままにしたら、ダメだってことは分かる。


「なら、頼むかな……」


「マスター、いいの?」


 俺が返事を返すと、更に予想外の声が聞こえてくる。


「ドレイク、ホタルはいいって言ったぞ! 早く入るんだぞ」

「そうだぞ! オイラ達も一緒だから! 突撃するんだぞ!」


 声が増えやがった! なんで、ソマリとポメラのやつがいるんだよ!


 そうして、扉が開かれると、バスタオルをしっかりと巻き付けた3人が浴室に入ってくる。


「ホタル! ピカピカ頭みたいに、身体もボク達がピカピカにしてやるぞ!」

「ホタルはそのまま座ってるんだぞ! オイラ達がアワアワにしてやるんだぞ!」

「マスター、痛くしないからね。ゴシゴシだよ」


 逃げ場のない空間で身体をチビ達に洗われる俺、絵面を考えたら、単なる犯罪者でしかないだろうな。


 そうして、身体を洗われていた俺の耳にバタバタという、凄まじい速度で浴室に向かってくる足音が飛び込んでくる。


 ガラガラ──


「な、何してるんッスかァ!」


 飛び込んできたモモに俺はその後、長々と説教を食らわされた。


 今回は俺が悪いから、なんも言えないな。

お読みいただきありがとうございます!

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