70話
毒芋こと、キャッサバもどきの一件が解決すると、街には、フライド・キャッサバを販売する店が大量に現れた。
若い商人達が始めたらしい。
まぁ、商魂たくましいことこの上ないな。
ただ、俺は今まさに、そのフライド・キャッサバが原因でモモからお叱りを受けている真っ最中なんだがな。
「先輩……モモがなんで怒ってるかわかるッスか?」
「正直わからん。ただ、正座を崩したいってのが、本音なんだがな?」
「先輩……モモは思うんッスよ。普通に商業ギルドに呼ばれて、なんでフライドポテトを広める流れになるんッスかねぇ……」
「あれは、キャッサバもどきだ。フライドポテトじゃないぞ?」
一言余計だったらしい。明らかな怒りを感じる。
俺は朝から、足は痺れるし、説教は食らうし……踏んだり蹴ったりだな。
ご立腹なモモは、怒り爆発といった様子でドレイクと一緒にヤスキーの婆さんの店に石鹸やワインを届けに行った。
ただ、モモの言葉も間違ってないんだよな。本来は調理法と下処理は別だからな。
「ただ、フライド・キャッサバは、俺のオリジナルレシピじゃないから、むしろ問題ねぇと思うんだがな」
煙草を取り出して火をつける。
痺れた足に染みるなぁ……
「おい! ホタル! ボク達と冒険する約束はいつになったら叶うんだ!」
「そうだ、そうだ! オイラ達は仲間なんだから、ダンジョンに潜るんだぞ!」
一服してると、なんでいつも賑やかになるんだ……
「おい、獣人コンビ……なんで俺がダンジョンに行かないとならないんだ?」
「ボク達と約束しただろ! たぶん……」
「そうだぞ! オイラも約束……したよね?」
頭を傾げて考える獣人コンビ。俺は煙草の火を消して2人の前に移動して屈む。
「夕方までに帰れるなら構わないんだがな、それでいいなら今から向かってもいいぞ?」
「本当か! ボク達は信じてたぞ。フサフサホタル!」
「おお、ボーボーホタルはさすがだな!」
上機嫌になると変な褒め方するんだよなぁ、こいつら……
「なら、急がないとだな。夕暮れまでに戻るなら、今すぐに向かうしかないからな」
まぁ、ダンジョンの場所は分からないが、近いから誘ってきたんだろうしな。たまには付き合ってやるのが、大人の優しさってやつだろうと素直に思う。
俺はとりあえず、店に置いてあったリュックに食料と最低限使うだろうと思う品を詰めて準備を整える。
むしろ、何が必要なのかが分からないため、基本的に獣人コンビに任せることにする。
郷に入っては郷に従えと言うしな。
獣人コンビも装備を整えると普段のワガママコンビからは想像できないほど、冒険者らしい姿に軽く驚かされた。
本来なら、店を収納するんだが、ダンジョンに半日なら問題ないだろう。何より、モモ達が帰ってきた際に店が消えてたら驚くだろうからな。
そうして、賑やかなライムの街を歩きながら、俺達は、ライムの門を抜けて防壁の外に出る。
「よく考えたら、ライムに着いてから街の外に出るのは初めてだな」
「そうなのか! ホタルは出かけるのが嫌いだったのか?」
「オイラは、むしろ出かけるのが好きだぞ! ホタルもオイラ達を見習った方がいいぞ」
胸を張る獣人コンビ。ただ、たしかに少しは街の外を見とかないとダメかもな……情報弱者は食い物にされるなんてのは、よくある話だからな。
そんな風に考えていたのが、1時間前で今はライムの街から一番近い森の中を進んでいる真っ最中だ。
「まじにこんな場所にダンジョンがあるのかよ……獣道すらねぇじゃねぇか」
「任せろホタル! ボクは前にちゃんと確認したからな!」
「そうだぞ! 古いダンジョンだから、人はあまり来ないけど、ダンジョンなんだからな!」
いや、廃墟巡りじゃねぇんだから、古いとか関係ねぇだろ!
俺は獣人コンビの誘いにのったことを後悔しながらも、森をどんどん進んでいった。
そうして、ダンジョンがあるという場所に近づいていくと、多少の魔物達とも遭遇することになる。
「ホタル気をつけろ! オークだぞ!」
「オイラが相手だぞ! ホタルは手出ししたらダメだからな!」
獣人コンビがオークを前に武器を握りしめる。
ソマリは、小柄な姿に似つかわしくない戦鎚を握りしめてオークを睨む。
その横でポメラが両手斧を構える。
オークは最初こそ警戒しているように見えたが、獣人コンビを見てから、警戒を解いて、笑い出したように見える。
「おい、お前ら本当に大丈夫なのか?」
オークが手にしていた棍棒を振り回し、ニヤケ顔を浮かべると、獣人コンビはそれにイラついたのか、オークを睨みつけながら前に歩き出す。
お互いの距離が縮まっていくと、オークが雄叫びをあげ、棍棒を振り上げる。
「こいつはおバカさんみたいだね。そう思わないかい、ポメラ」
「思うぞ。間違いなく、おバカだ!」
棍棒を振り上げ、開いた脇に向けて、ポメラが両手斧を勢いよく振り抜いていく。
オークは慌てて回避しようと身体を捩るが、それは逆にソマリに背中を向ける結果になった。
正直、その後の倒されたオークを解体する作業が一番しんどかった。
猿公で慣れたつもりだったが、頭が豚でも、やっぱり人型は捌きたくねぇな。
とにかく、オークを1匹倒したことで、獣人コンビのテンションが上がり、俺のテンションが下がる結果になった。
「こんな感じに解体してたら、ダンジョンなんか行く気なくなるな……」
「ホタル! 何言ってるんだよ! ダンジョンで解体なんてありえないぞ!」
「そうだぞ! ソマリの言う通りだからな! ダンジョンの魔物は勝手にアイテムになるんだからな!」
獣人コンビから、予想外の形でダンジョンについての知識をもらうことになり、とりあえずオークの肉と魔石、ついでに棍棒を確保しておく。
そこからダンジョンまでの間にはスライムと角ウサギなども出てきたが、獣人コンビにより、ぺしゃんこにされていた。
改めて思うが、こいつら……容赦ないんだよな。普通は生き物を手にかける際には躊躇するもんだが、それがまったくない。
「なぁ、お前らは魔物を殺してなんとも思わないのか?」
質問した瞬間、嫌そうな顔をされた。なんだろうか、あれだ……Gを殺したら可哀想だよって、言って逃がそうとするやつに向けるようなあんな顔をされた。
「ホタル、まさか、おバカさんなのか!」
「ホタルは多分あんぽんたんなんだな!」
そうして、ダンジョンに入るまでの間に、魔物がなんなのかを2人に聞かされた。
魔物は魔石をコアとして、魔力が具現化した存在で、コアを魔物から抜き取ることで具現化された肉や装備まで回収できる。
逆にダンジョンの魔物は、ダンジョンの魔力を魔石に強制的に集め、一時的な形を形成した存在らしい。
「だから、ダンジョンの魔物は倒されたら、魔石だけが残るんだぞ! ホタルわかったか!」
「そうだぞ! オイラ達が分かりやすく教えてあげたんだから、覚えるんだぞ!」
「とにかく、ダンジョンの魔物は、ボス以外は魔石しか残さないんだな? ボスは稀に何かをドロップするって感じでいいか?」
「そうだぞ!」
「わかったみたいだな!」
色々と言いたいことはあるが、街を出て2時間が過ぎ、俺達は森にある忘れられたダンジョンに到着した。
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