66話
朝の賑やかな2度目の朝食が終わりを迎えると話の流れが変わり、ミラさんとスリンガーさんがどうやってこちらの世界に来たのかについて聞かせて貰うことになった。
「改めて、私は、三良 望愛流。この世界のゲームキャラとして、日本連合から飛ばされたんだ。親切に自分達が使ってたオリジナルキャラとしてね」
「僕は、投石 真人。こちらの世界での名前はゲームプレイ中に使ってた名前そのままになっているらしい」
2人から改めて、日本語の名前を聞かされて、俺は困惑していた。
わかってた事だが、2人は本当に別の日本から飛ばされて来たらしいと再確認してしまう。
何より、いきなり情報量が多すぎるんだよ!
この2人は気づいたら、ゲームプレイ中に異世界に飛ばされたって話を聞いてたら、控えめに言って、女神ってやつは頭がイカレポンチなのか?
なにより、騎士団の話だが、間違いなくアルムさんなんだが、ゲーム世界の主人公選びのセンスもガタガタじゃねぇか……
言いたいことだらけの内容だった。ただ、その中で、本来のクエスト発生条件はアルムさん率いる討伐部隊から蘇生不可になった者が2人以上いる場合という笑えない条件だった。
胸糞悪い条件内容だったが、逆に言えば、仲間が2人、失われたなら助けが来る仕様だ……本当に言葉にしにくい内容だぜ。
「話は聞いたが、やっぱりよく分かんねぇ! ただ、ミラさんとスリンガーさんよう? 2人が求めてたイベントってやつの条件はクリアしてるはずだ」
その後の話し合いで、2人は一度、街の教会に向かうことを決めた。
なんでも、教会に行けば、イベントが発動するかもしれないとか、なんとか?
とにかく、朝から難しい話でパンクしそうな頭を空っぽにする為、俺は冷やしておいたアイスコーヒーを口に流し込み、煙草に火をつける。
そんな俺の横にやってきたモモが何かを言いたげに視線を向けてきた。
「先輩。何が“よく分かんねぇ”なんッスかぁ……説明を聞いてたら、『一度帰還しますか。YES、or、NO』って選択肢を選べるって、はっきり言ってたっスよ」
煙草の煙を吐き出しながら、モモの話を聞き、俺は返事を返す。
「仮に戻れるとしてよう……ドレイクや、ソマリ、ポメラの3人をそのままにできねぇ。むしろ、強制的に戻されたらってのが、気掛かりでな」
「素直に言えばいいのに、格好つけてる先輩は、逆にダサダサッスよ。とにかく、理解してるなら、モモ達も先のことを考えないとッスよ」
そう言いながら、ニカッと笑って見せたモモは、ウチのちびっ子3人組を呼び寄せる。
当然、モモに懐いてる3人はあっという間に集まってくる。
しかし、煙草を吸いながら、アイスコーヒーを飲む俺の姿を見て、小さな首を3人揃って傾げていくのが見えた。
沈黙が流れていくと、不意にモモが口を開く。
「今から、みんなで教会に行くッスよ。着替えてくるッス!」
耳を疑うような言葉に俺は咥えていた煙草をその場に落としそうになった。
「モモ! 何言ってんだ! そんなことしたら」
「シャラップ! 先輩はビビりッスか! 逃げない、詰めない! 捕まらない! これから教会に行くだけの話に、何を慌ててるんッスか!」
返す言葉がないほどに、しっかりと伸ばされた指を前にして、俺は何も言えなかった。
そうこうしてる間に、獣人コンビが着替えを済ませてドタバタとこちらに戻ってくる。
ただ、逆にドレイクは、普段着選びに時間が掛かっているらしいな。
待つことに痺れを切らしたのか、ソマリがドレイクの部屋に向かって歩き出す。
「ボクが呼んできてやるぞ! ピカピカのホタルも着替えないとなんだから、急ぐんだぞ!」
その後、俺も軽く服装をラフな柄シャツとジーパンに着替えていく。
「先輩……マジにチンピラにしか見えないッスよ……教会に懺悔しても許されないタイプッスよ」
「モモ、お前が一番懺悔しろ……」
小さな言い合いをしているとソマリが困った表情を浮かべて戻ってきた。
「ホタル! ドレイクが、ボクの話を聞かないんだよ! ボロボロの服を着てくって言うんだぞ!」
ソマリがプンプンしながら、そう説明をしてくれた。
更に待つこと数分で奴隷の際に着ていたボロを身に纏ったドレイクがやってきた。
「マスター、できたよ」
ドレイク本人は嬉しそうに笑みを浮かべている。
確認のために、なんでその服を選んだのかだけは聞いておくことにした。
「ドレイク? なんで、俺達と会った時の服で教会に行きたいんだ?」
「え? ドレイクね。教会に行ったら、この服のときにマスターと会ったんだよってするんだよ」
ドレイクの返事に俺は“着替えたらどうだ?”なんて言えなくなってしまった。
「そうか……ただなぁ、そのままだと目立つから、上からローブを着ような……」
ボロボロの服の上からローブを着せてやり、やっと俺達は移動を開始する。
ドレイクのローブ姿はお子様魔法使いみたいで可愛らしいが、首に付けられた鉄製の首輪がどっちかというと、他人様にダメなイメージを与えまくりなんだよな。
「先輩の格好で、首輪姿のドレイクは本当に犯罪臭がヤバいッスね」
世間様からの痛い視線を全身に浴びながら、俺達は街にある教会に到着する。
俺達が到着すると同時に教会の扉が開いた。
扉の先からは、ミラさんとスリンガーさんがちょうど教会から出てくるところだった。
「ん? ミラさん、スリンガーさん。教会はどうだったんだ!」
俺達の存在に気づいたミラさん達が歩いてくると教会での内容を話してくれた。
「ホタルさん達も来たんだね。まぁ、思ってたのとは違う感じでさ」
ミラさんはそう言うと教会に一度、視線を向けた。
「私達の思ってた選択肢は貰えなかったよ。まぁ、ホタルさん達も、女神像にお祈りしてみなよ。そうしたら、きっとイベント……ううん。多分違うかな、まぁ、行ってみたらわかるよ」
「ミラさんの言う通りかと。少なくとも、我々の期待する答えではなかったのは事実だが、むしろ、別の収穫はありましたからな」
ミラさんとスリンガーさんは、それを俺達に伝えると挨拶もほどほどに、その場から立ち去っていった。
俺は一度、みんなに確認する。
「俺は教会ってのは、入ったことがないんだが……誰か入ったことあるやついるか?」
当然、全員が首を横に振る。
ただ、ドレイクは俺の服を、くいくいと引っ張り、それに合わせて俺はしゃがみ、ドレイクに耳を傾ける。
「マスター、あのね。わがまま言うよ。ドレイク、教会に入りたいよ……」
その一言で教会に入ることを決める。
ミラさんとスリンガーさんの反応を見れば、期待はしない方がいいんだろうが、イベントってやつが、俺達にも起こるのかは、正直、気になるからな。
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