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59話

 奴隷商館を後にした俺は、モモ、ドレイク、大型犬ゴーレムのビッグブル、ソマリ、ポメラを連れて冒険者ギルドへと向かう。


 ソマリとポメラの2人は冒険者ギルドと聞いて嫌な顔の一つも浮かべるかと思ったが、嬉しそうにしている。こいつら、神経図太すぎるんじゃないか?


「ソマリ、オイラは幸せだぞ! なんでか分かるか?」

「ポメラの気持ちわかる! ツルツルのホタルがやっと仲間になるんだもんね!」


 そんな2人の会話を聞いて、俺は釘を刺しておくことにする。


「言っとくが、今回はダイルのやつに来いって言われたから、手討ちで行くだけだからな! 絶対に手を出すなよ!」


「わかってる! ボクは約束するぞ!」

「だな。オイラも約束を守るぞ!」


「マスター、ドレイクも守るするね!」

「モモは大人ッスから、心配いらないッスよ」



 一抹の不安を感じないわけでもないが、流石に大丈夫だろうと信じたい。


 そうして、冒険者ギルドのある大通りへと抜けると、他の通りとは違い、飲み屋が多く並んでおり、歓楽街かと勘違いしそうになる。


 冒険者ってやつは、宵越し(よいごし)の銭は持たないらしいな。


 ギルドから伸びている通りの幾つかの店には、飲み屋以外にもアレがアレでアレするための店などもあり、俺は自然と視線を向けたくなるが、しっかりと理性を働かせていく。


「先輩……今、チラ見しなかったッスか?」


 一瞬で理性が研ぎ澄まされるような、モモからの言葉、当然即答する。


「見てるわけねぇだろうが!」

「どうッスかねぇ? もし、そんな如何わしいお店を見るような目なら、物理的に真っ暗にするッスよ? いいッスか、先輩?」


「目がマジじゃねぇか……お前らがいるんだから、俺はそんなことしねぇよ!」

「目がマジとか、そんなことないッスよ。先輩のことは信じてるッスよ……軽いブラックジョークじゃないッスか?」


 ぜってぇ、ジョークじゃねぇ……


 その後は、無我の境地もびっくりな程の無心で冒険者ギルドまで歩いていく。


 何人かの呼び込みに声を掛けられたが、その度にモモがしっかりと断っていき、俺達は無事に冒険者ギルドへと辿り着く事ができた。


「やっとついたッス。ガルル! なんで先輩に声を掛ける奴ばっかりなんッスか!」


「いや、客引きってのは、そんなもんだろうが?」


 イラつき過ぎてガルガル言ってるモモを宥めてから、冒険者ギルドの扉を開く。


 冒険者ギルドの中は、早い話が酒場みたいな作りになっており、飲み屋の中に複数の受付が作られていて、クエストボードから依頼を選んで受ける形になっている。


「なんか普通ッスね?」

「普通だな……まぁ、普通じゃないと困るがな……」


 俺とモモがそんな感想を呟くと、ソマリとポメラの獣人コンビがカウンターへと駆け出していく。


 そんな2人の前に数人の冒険者が立ち上がり道を塞ぐ。


「誰かと思えば……クソ獣人共かよ!」

「よく顔を出せたもんだなぁ? まだ人探しか……あれだ! 『ホタル〜ホタルをだせ〜』だっけか、あはは!」


 俺は自分の目の前でのやり取りを見てイラついた。


 ガキ2人を相手に大人が寄って集って、なにバカやってんだ!


「おうッ! ウチのチビ共が世話になったらしいなァ! 責任者として、挨拶に来たが……猿山の猿公よりも残念な奴しかいねぇのか?」


 俺は大人だから、我慢する時は我慢する。ただ、大人だからこそ、ガキを寄って集ってグチグチ言う奴らに我慢する真似もしねぇ!


「さて、猿には言葉なんか、いらねぇよな?」


 ニヤリと笑う俺、それに対して、怒りを顕わにする冒険者。


「金は昨日渡したんだ。今から返す分は怒りに対する100倍返しだかんなァ! 馬鹿やろぅ!」


 目の前でガキ2人のモノマネをしていた奴から、フルスイングでぶっ飛ばす。


「ぎゃああああ──ファァ!」


「悪りぃ、顎が砕けたかもしれねぇな? それじゃ自慢の猿真似もできねぇな」


 そこからは大乱闘になる。ガキ達を心配したが、モモがしっかりと外に連れ出してくれたのがわかった。


「てめぇ! ここは冒険者ギルドだぞ!」

「ふざけた野郎が! 全員で掛かるぞ!」


 やる気満々の冒険者を前に俺はしっかりと拳を握り直す。


「上等だ、ゴラァ! 佐乃村さのむら ほたるが全員相手してやんぞ!」


 手当たり次第に殴り、殴られても殴り返す。そんな殴り合いも、冒険者側が武器を抜いたことで空気が変わった。


「冒険者が舐められたら終わりなんだよ!」


「ヤクザみてぇなセリフは、根性見せてから口にしろやァ!」


 俺に向けて振り抜かれる剣に対して、【身体強化】を発動させた拳が迎え撃つ。


 剣の横っ腹にジャブを食らわすように拳を打ち込み、僅かに剣先が肩を掠めてシャツに赤い染みが滲む。


 ただ、剣が床に触れた瞬間、俺の手は冒険者の頭部を鷲掴みにすると、勢いのままに顔面から床に叩きつける。


「ぎゃはがッ……」


 剣を振り回していた冒険者が完全にダウンすると、さっきまでの勢いが消え去り、後退る冒険者達ばかりになっていた。


 俺はポケットから、くしゃくしゃになった袋から煙草を1本取り出し、火をつける。



「ふぅ……次は誰だ? 冒険者の根性を見せるんだろうが!」


 そう怒鳴り声をあげた時、冒険者達の後ろからダイルが姿を現す。


「おいおい……マジかよ。床は直したばかりだってのに、ったく……なんでこんな事になってるのかねぇ? 何、君達はギルドマスターが昼寝をするとギルドを壊すのが楽しみなワケ?」


 俺はダイルの言葉に『?』と首を傾げる。


「ダイル? アンタがギルドのマスターなのかよ?」


「まぁなぁ……それよりさぁ。訳分からないんだけどねぇ……説明頼めるかな?」


 俺は揉めた流れを一から説明していく。

 ダイルはただ、静かに頷きながら話を聞いた後に、冒険者達に鋭い視線を向けた。


「あのさぁ? 冒険者だからさぁ、わかるよ……そりゃ、嘗められたら冒険者稼業なんて出来ないもんねぇ」


 最初に獣人コンビへと絡んでいった冒険者の肩にダイルが手をポンっと置く。


「でもさぁ……それでやられてビビってたら! ダメだろうがァ!」


 ガンッ!


 床に向けて、冒険者が沈められる。


「って、ことでさぁ、ウチの奴も頭下げたから、許して貰えないかなぁ? あ、今回の修理費はこっちから始めた問題だから、払わなくていいから、どうだい?」


 呆気に取られて、咥えていた煙草を落としそうになったが、俺はしっかりと頷いた。


「いやぁ、話が早くて助かるねぇ……さぁ、本題の為に、奥に来てくれ。あ、チビちゃんと……あのおっかない姉ちゃんも一緒に連れてきてくれ、放置して怪我人を出されたら困るからなぁ……」


 そう言われ、俺達は冒険者ギルドの奥にある部屋へと移動した。


 冒険者ギルドってか、マジにやべぇな。



お読みいただきありがとうございます!

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☆ギャグが笑えなくても、クーリングオフは勘弁してください。

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