54話
奴隷商と奴隷達を宿屋側に泊めることになり、時刻は昼を過ぎていた。
そうなると、朝食しか食べていないウチの連中が騒ぎ出す。いや、モモが騒ぎ出すだな。
「昼ごはんを食べないと、モモとドレイクのお腹と背中がペアリンクしちゃうッスよ」
「えっと……しちゃうよ」
普段なら2人だけのやり取りなんだが……
「ツルツルホタル! ご飯食べさせろ!」
「ピカピカのホタルはボク達にご飯を食べさせないとダメなんだぞ!」
犬と猫が増えて、騒いでんだよな……
「なんで、俺が……ドッグフードもキャットフードも流石にねぇぞ……」
奴隷商の方は、宿屋で厨房を使い、自炊するそうなので心配ないんだが、この二匹? 2人? も面倒見て欲しかったな。
「いえいえ、わたくしは、わたくしの奴隷達の食事を与える義務がありますので、そしてホタル殿には、あの2人の主人として食事をさせる義務が生まれております」
そう言われちまったからな。しゃあないとは思うんだが……困った。
「犬猫って何を食わせたらダメなんだ? 玉ねぎに、チョコ? イカにエビだっけか……ナッツもダメだったよなぁ……」
厨房で頭を悩ませるが、やはり思い出せねぇ……はぁ、一服するか。
とりあえず、外に出てから煙草に火をつける。
食材1つで命に関わるなら、安易に出せねぇよな。
犬と猫に食わせたらダメなのは……
ネギ類はダメなはずだよな。あとチョコ、カカオがあれなんだっけか? ブドウなんかもダメだし、アルコールもダメだから、ワインを使った料理もダメだな。
はぁ……ダメだ、思い出してみたら、なんも作れねぇ……
「まじに昼食をどうするかなぁ」
小さく呟き、店の中に戻ると、カラン! と、ボウルが落下した音が厨房から聞こえる。
急ぎ戻ると、モモとドレイクが『アボカドとエビのサラダ』をバリバリと食べており、その横には獣人コンビの猫と犬の2人もおり、同じように『アボカドとエビのサラダ』を食べていた。
「おいお前ら! 大丈夫なのか!」
慌てた俺が大声を出したせいで、4人が一斉に俺へと振り向く。
「ゴクン……せ、先輩……これは味見ッスよ?」
「ふぁじひぃだふぉ。ゴクン、マスター」
「ツルツルは料理が上手いな! ボクは気に入ったぞ」
「だね。ピカピカは料理の腕もピカピカだとオイラも思う!」
俺の心配など、知ったこっちゃないと言わんばかりに、獣人コンビは更にサラダをバリバリと食べている。
「だ、大丈夫なのか?」
質問に対して、4人は逆に首を傾げている。
「先輩? なんかヤバい食材でも混ぜたんッスか?」
「いや、だって……そいつら、犬と猫だしよぅ」
その後にわかったのは、獣人は基本が人と変わらないらしい。
つまり、俺の心配は杞憂だったらしい……心配したが、むしろ、獣人相手に飯を出す際に気兼ねなく料理ができる事実がわかったから良しとするかな。
そうして、遠慮なく料理をすることにする。
むしろ、普通なら食べれない食材ってやつを使ってみようとすら思うんだから、俺は悪い大人かもしれないな。
その結果、昼飯はピザ作りに決めた。
「お前らも手伝ってくれ。昼はピザを作るぞ!」
「先輩! ピザッスか! モモはシーフードにするッス!」
「ピザって何? マスター、アボガボも入る?」
アボカドだな……ドレイク。
「大丈夫だ。どっちも入れてやるから、具材のカットを頼む」
俺は生地を作る為に小麦粉を取り出していく。
そうして、生地を作り始めると、ドレイクは当然ながら、獣人コンビも興味を示してきた。
「なんだ? ドレイクに、お前達も手伝いたいのか?」
「お前達じゃない! ボクは、ソマリだ! ツルツルのホタル!」
「そうだぞ! オイラは、ポメラだからな! ピカピカのホタル!」
「そうか、ソマリとポメラだな。俺は蛍だ。ツルツルでもピカピカでもなく、これはベリーショートだ」
そうして、ドレイク、ソマリ、ポメラの3人が生地を捏ねていき、俺はオーブンの温度を上げていく。
モモが具材のカットをしてくれているので本当に助かるんだが、間違いなくエビの量が減ってやがる。
そうして、出来上がった生地を常温発酵させてる間に俺は白身魚のフライを揚げるとするかな。
ピザの付け合せには、ポテトや唐揚げなんかもいいが、俺はこの白身魚のフライにタルタルソースが一番だからな。
「先輩! エビも揚げるッスよ! エビのフリッターをいっぱい食べたいッス」
モモからのリクエストもあり、揚げ物も幾つか増やしていく。
オニオンリングも追加して完全にパーティースタイルだな。
ピザ生地の発酵が終わり、ピザ生地を伸ばすと、4人から気分のいい「おおぉぉぉ!」という声がハモったのは笑ったな。
そうして、広げた生地にトマトソースを塗り、好きな具材を乗せていく。
モモは、希望通りにエビが山盛りのシカゴ風。
ドレイクは、アボカドとトマトに挽き肉のタコス風。
ソマリとポメラの2人は、サラミや肉をテンコ盛りにしたアメリカンスタイル。
それぞれの個性が出るなぁ? まぁ、俺の選んだ具材はトマトソースの上に、モッツァレラチーズ、生バジル、オリーブオイル……つまりは“マルゲリータ”だな。イタリア・ナポリピザの王道だからな。
すべてのピザにチーズをこれでもかと乗せてオーブンへと滑らせていく。
そうして、オーブンの中で焼かれるピザを眺めながら、俺は軽く一服、モモ達4人は飲み物で喉を潤していく。
一回で4枚のピザが焼けるオーブンは神だな。
俺のマルゲリータを残し、4枚のピザが焼き上がる。
素晴らしい香りだな。モモのシカゴ風シーフードからは、エビやイカなどの海鮮が焼かれた香りが一気に広がる。
次にドレイクのタコス風ピザも最後に刻んだサニーレタスを散らしてやって完成だな。
最後にソマリとポメラのペパロニとサラミたっぷりのアメリカンスタイルが姿を現す。
この2人は直感で具材を選んだが、アメリカ人となら、一瞬で分かり合えるんだろうなとマジに思う。
最後に俺のマルゲリータが焼けたので取り出していく。
「なんか、先輩のだけ、寂しくないッスか? モモのイカと貝を分けてあげるッスよ」
「マスター、アボガボあげる。美味しいから食べれるよ!」
「ホタルはやっぱりツルツルだな! 肉を食べないと生えないぞ!」
「オイラの肉もやるよ! ピカピカのテカテカは肉で隠すんだぞ!」
待てって! 俺のマルゲリータが、イタリア・ナポリピザの王道が!
色々言いたいが、1つだけはっきりさせよう。食べる前からわかってたが、やっぱり美味い……マルゲリータ、すまん。
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