52話
ドレイクの風呂場事件から、二日、色々と後からモモに疑いの眼差しと小言を言われたが、やっと機嫌が良くなったな。
そして、今日は普段よりも慌ただしい日になるだろうと俺は確信している。
理由としては、婆さんから「アッラノーマの爺さんが、明日時間を取ってアンタの店に顔を出すそうだよ。明後日にはドルミールに戻るらしいねぇ」と、言われたからだ。
「先輩! お爺ちゃんが来るって話なんッスから、早く何を用意するか決めるッスよ!」
機嫌が良くなってるはずなんだが、何故かトゲを感じるんだよな……
ドレイクを抱きしめて、ガルルって感じに睨みを効かせるモモ。
「モモ姉……マスターが可哀想だよ?」
「大丈夫ッスよ。先輩が限界を迎えたら、しっかりモモが癒してあげる予定ッスから、でも、今は油断したらダメッス! シャアーッス!」
そうして、なんとも言えない雰囲気の中、昼を前にして、店の前から馬の嘶きが聞こえ、馬車が止まる音がする。
ドレイクがトタトタと扉へと向かっていき、扉を開く。
「爺ちゃん! じゃない?」と、ドレイクの声に俺とモモが慌てて、扉に向かう。
そこに居たのは、見慣れない男で胸には冒険者ギルドのマークが刺繍された上着を着ている。
すぐにドレイクを下がらせて、前に出てから質問をさせてもらう。
「あんた、誰だ? ウチになんか用なのか?」
冒険者ギルドの男は言いにくそうに馬車を一度見てから、俺に向かって確認するように質問をしてきた。
「申し訳ないんだがな、アンタが“ホタルさん”で間違いないかい? そうだと話が早いんだがねぇ?」
明らかにわかって聞いてんだよな? まどろっこしいやり取りは苦手だし、性に合わねぇ。
「間違いなく、俺が蛍だ。アンタとは初対面のはずだが、何の用なんだ?」
「そう警戒するなって、冒険者ギルドから確認するように言われた使いパシリだ。敵対する気はねぇからさぁ」
「確認? 冒険者ギルドが俺に何の用だってんだ」
身に覚えしかねぇんだよな? モモも俺も冒険者ギルドの奴を回復屋送りにしたからなぁ……
ガッツリ、恨みつらみが溜まってても文句言えねぇなぁ。
「冒険者ギルドから、確認したい内容ってのが、ホタルさん、アンタの知り合いに、小さなお子様なんかいませんかねぇ? 因みに2人なんですが」
モモとドレイクのことを言ってんのか?
「おっと……ホタルさん、そんな怖い顔を向けるのはやめてくれないか、流石にこっちとしても気分のいい視線じゃないんだがねぇ?」
「それで、その2人ってのがどうしたってんだ?」
「なぁに、冒険者ギルドとして、その2人の保護者……と、いうより責任者を探してる感じでねぇ? 単刀直入に聞くが、ホタルさん、アンタが責任者だっていうなら話が早いんですがねぇ?」
チッ、ドレイクが婆さんの店に出入りすることになった矢先にこれかよ!
「もし、そうだと言ったら?」
「それは認めたという意味に我々、冒険者ギルドは取りますが、よろしいですかねぇ?」
「構わねぇよ。全部わかって来てんだろうが! 白々しい雰囲気出しやがって」
「白々しいですかねぇ……実際に半信半疑でしたからねぇ、ただ先程の言葉は間違いなく我々の耳で聞いたよなぁ? “リオ・タミン”さん?」
その呼ばれた名前には聞き覚えがあった。
「なんでアンタが一緒にいるんだ? 奴隷商さんよぅ?」
ゆっくりと中に入ってくる奴隷商に俺は鋭い視線を向ける。
視線に気づいたのか、奴隷商は気まずそうな顔を浮かべて冒険者ギルドの男と俺を交互に見ている。
「おいおい、リオさん? 話が違うんじゃないのか? ホタルさんは、関係ないって話だったみたいだけど、本人は認めてるじゃないか?」
「ダオ殿、間違いなく、あの子達とホタル殿は私の知る限り、他人のはずです……」
そこから、奴隷商とダオって呼ばれた男が言い合いになるが、人の店で何してんだよ。
そんな言い合いもダオの「いいから、2人を連れて来い」という一言で中断する。
俺は奥で様子を窺っているモモとドレイクを気にしながら身構える。
だが、奴隷商は何故か諦めたように溜め息を吐くと何故か外に向かって歩いていく。
そうして、奴隷商は、2人の獣人を連れて戻ってくる。
「ホタル殿、大変申し訳ないのですが、所有権がホタル殿に強制的に移されます。それにより……奴隷達が行った冒険者ギルドでの破壊行為に対する賠償金支払いの義務が譲渡されます……」
「離せ! オイラ達を自由にしろ! 助けろピカピカのホタル!」
「そうだぞ! ボク達は、ツルツルのホタルを仲間にしたいだけだぞ!」
ん? なんの話だよ! ってか、こいつ、市場で騒いでた獣人のガキ2人組じゃねぇか!
「おい……奴隷商さんよう、説明してくれ……なんだよこれ」
「ですから、なんで認めたんですか……普通に知らないと言えば済んだ話でしたのに……はぁ」
そこから俺はこの獣人2人について説明をされる。
猫耳が『ソマリ』で、犬耳の方が『ポメラ』だと名前を教えられた。
この2人は俺と会った日から、毎日のように冒険者ギルドに出向いては俺について聞いていたらしい。
ただ、俺が冒険者ギルドに行くはずもなく……来る日も来る日もギルドへ通い続けたらしい。
当然、行くはずがないので、俺を見つけられず時間だけが過ぎていった。
最後には冒険者ギルドが俺を隠していると考えて、大暴れしたらしい。
聞いてるだけで頭が痛くなる話だな。
そうして、暴れて捕まり、修理代を請求されるが手持ちは皆無だった。
結果、冒険者ギルドとしては、犯罪者として奴隷商に2人を連れていき犯罪者奴隷としたらしいんだが……
「それがなんで、俺の奴隷なんて、変な話になるんだよ……」
「はい、私の商館に2人が連れて来られまして、ホタル殿の名前を叫ばれており、確認している際に、会話を聞かれてしまいまして……」
申し訳なさそうに謝る奴隷商に俺は溜め息を吐いた後、冒険者ギルドの修理代について確認する。
「修理代が金貨18枚、更に迷惑料で金貨10枚、怪我人の治療に金貨8枚、奴隷契約に1人、金貨2枚ですので、2人で4枚……全額で金貨40枚になりますねぇ……因みに言いづらいのですが、期限は3日です」
絶望的な事実が俺に突き付けられる。
「いや、流石にヤバすぎだろうが! なんで金貨40枚なんだよ!」
「むしろ、これでも安いくらいかと……冒険者ギルドからすれば、奴隷2人分……つまり、1人金貨20枚なのですからねぇ……」
ガキ1人、日本円で100万って、聞いてて頭が痛くなりやがる。
「少し待ってくれ……手持ちだけじゃ足りねぇかもしれねぇ……」
「残念ですが、足りないとなりますと、主になられたホタル殿の資産から差し押さえになります……」
なんでだよぅぅぅッ!
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