1─5話、支払い前金代わりに鑑定をしてみよう。
兵士達が食事を終えてから、浮かない顔をしてる。なんだ? 俺の料理に問題があったのか? まさか、口に合わないもんを、美味そうに演技して食べてたのか?
気になった俺は、とりあえず、表側に歩いて行く。
俺の姿に気づいたアルムさんが慌てて、こちらに駆けて来ると、申し訳なさそうに小さな袋を前に差し出してきた。
「ん? これはなんですか?」
察しはつくが、素直に受け取るのも、なんか違う。傍から見たら、まるでカツアゲか、借金の取り立てにしか見えやしないからな。
「少ないが、我々が今出せるすべてだ! 水にパン、肉料理、手当ての品も含めれば足りないだろう、その分は、首都『ライム』についてから、必ず戻って払わせてもらう。今は信じてくれ」
必死に頭を下げるアルムさんと、それを見守るように伺う兵士達。
正直、気分のいい光景じゃねぇな。
「あの、一ついいですか?」
「あ、ああ、なんだ」
「ポークピカタは確かに料金が入ります。ただ、パンとスープはセット価格です。水もサービスですし、手当ての品は、店の判断で出したので金銭は頂きません。あと、会計はレジでお願いします」
淡々と説明すると、アルムさんは、何を言われてるか分からないといった表情を浮かべて固まっていた。
周囲で話を聞いていた兵士達はざわつき、アルムさんの次の言葉を待っているように見えた。
「ち、因みに……いくら払えばよいのか、教えてもらえますか?」
ポークピカタは普段なら800円、セットで200円プラスだから、1人1000円だが、メニューも聞かないで出したからな。
「1人、800円で、20人分なんで、1万6000円か、まとめてでいいのか?」
俺がそう口にした瞬間、兵士達が一気に動き出し、俺を敵視するような視線を向ける。
そして、兵士の1人が声を出す。
「1人が800金貨だと! 確かに美味い料理だったが、人の弱みに付け入るような真似を!」
「やめよ! ザック、落ち着け! 今、店主のホタル殿は、“円か”と口にしただろう! “金貨”などとは言ってない。我々の使う通貨と異なる物だ!」
突然のことに驚いたのか、モモが俺の後ろに避難してくる。こいつはいつも、俺を盾にしやがるなぁ。
「アルムさんの言う通りだ。正直、俺は日本の円以外の通貨を知らねぇ! だから、円と釣り合うのかも分からないんだ」
互いが冷静になってから、袋の中身を確認する。
「これは金貨か?」
「ああ、ネハン王国では、一番大きな金貨がゴル金貨となり、片方の小さい方を金貨としているのだ。普段使う銀貨や銅貨はそのまま“銀貨一枚”などの呼び名だな」
「わざわざ、ゴルだなんて、大層な呼び名だな? 大金貨って言えばいいのにな?」
「ゴルとは、金貨5枚分の価値がある物を指すんだ。金貨だけだと、取引の際に困るからな」
つまり、ゴル金貨、金貨、銀貨、大銅貨、銅貨ってことか……ややこしいなったく。
「普通の金貨もあるのか?」
俺の問いに、袋からゴル金貨よりも小さな金貨をアルムさんが取り出す。
「うーん……銀貨も見せてくれ」
出された銀貨は1オンスくらいで、俺はそれを1枚指で掴み微笑む。
「銀貨の相場なら、1オンス、1万6000円くらいだから、丁度だな」
「何言ってるんッスか! 単なる銀貨にそんな価値はないッスよ! よく考えるッス」
俺とモモの会話に今度はアルムが声を上げる。
「待て待て! モモ殿の言う通りだ、ホタル殿! いくらなんでも善人がすぎるぞ! これだけの料理と柔らかいパンだぞ! パン一つで、銀貨数枚の価値があろうことは、我々でも理解できる!」
そこからの話は面倒くさかった。
俺が仕入れてるパンは確かに美味い。だが、一つが数万円するパンなんて、ありえないだろうが?
支払いの話で安すぎるなんて、イチャモンは都市伝説だと思ってたが、実際に経験するとこんなに面倒くさいなんて思わなかった。
「な、なら、俺達は世間知らずなんでな、情報を教えてくれないか、常識の範囲で構わない、それでどうだ?」
「ふむ、わかった。何から話せばいい?」
そうして、俺とモモは自分達がどうやってこの場所に来たのか、スキルとは何かなどの質問をしていく。
最初は訝しまれたが、アルムさんは真剣に話を聞いてくれた。
「つまり、気づいたら、この地に転移させられたと言うんだな? ならば、国の名前を知らぬのも納得だな。ただ、その話が本当だとして、スキルが謎のままでは判断に困るのだが」
アルムさんは、首を傾げながら、両手を組んで悩み出す。
「そうだ! ザック! スキル鑑定のスクロールがあっただろ! あれは無事だったはずだ。持ってきてくれ」
そう言われてザックと名前を呼ばれた兵士が二本の巻き物を手にやってくる。
「これは、スキルを明らかにするスクロールで、本来は罪人や捕らえた敵兵士なんかに使う品なんだ。心苦しいが、今はこれしかないので勘弁してくれ」
俺はそう言われて、小さく頷いた。
「先輩……まさかの前科持ちッスね。カツ丼くらいは差し入れてあげるッスからね」
「モモ、お前もやるんだから、仲良く前科持ちだな?」
「えぇーー! 嫌ッスよ! 先輩と違ってモモは前科持ちになったらお嫁に行けないじゃないッスか!」
そんな言い合いをしていると、アルムさんが俺に向けて「発動させます」と言ってきた。
そうして、俺とモモのスキルの詳細が明らかになる。
『佐乃村 蛍』
スキル──【異世界言語理解】【身体強化】【店舗管理】
ユニーク【店舗管理】
【店舗収納】──自身が購入した店舗を自由に収納出来る。その際に店舗内を清潔に保つため、汚れやゴミをリセットする可を選択できる。
【店舗保管】──店舗管理の対象店舗内では、食材などが痛まなくなる。
【店舗受取】──店舗管理の対象店舗内では、一度持ち込んだ品物であれば、金銭により補助が可能。
【店舗安全保障】──店舗管理の対象店舗に所属する従業員へ危険が及ぶ場合、管理者のリミッターを解除する。
俺は店と旅ができるらしい。正直、自力で走るキッチンカーって感じのスキルだと理解した。
「なんで、なんッスか! こんな結果、理不尽じゃないッスか!」
怒りで騒いでるのは、モモだ。まぁ、スキル鑑定の結果があれだからなぁ。
『夏波 李』
スキル──【異世界言語理解】【身体強化】【サポーター】
ユニーク【サポーター】
【発電機】対象となる店舗の電気を魔力で変換して使える。(付与済み)
【浄化システム】対象となる店舗の飲水を含め、すべてを魔力で交換して使える(付与済み)
【ガス栓】対象となる店舗のガスを魔力で変換して、ガスが使える。(付与済み)
【永久機関】魔力切れが起きなくなる代わりに、魔力量を自力が増やせなくなる。
逆に言えば、店が使えるのはモモのおかげらしい。
「悪いな。モモ、嫌かもしれないが俺の一生の願いだ。今は傍に居てくれ」
「むむ……先輩が頭を下げると可哀想だから、しかたないッス……それに顔面凶器な犯罪者顔の先輩といられるのは、ウチくらいッスから仕方ないッスね、了解してあげるッスよ」
そうして、俺達は互いのスキルなついて知ることができた。
スキルが何かはわかったが、結局の使い方が分からないのがネックだな。
とりあえず、店を持ち運べるなら、試してみたい気もするがな。
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