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1─4話、モモの覚悟とリアル問題

 泥塗れの兵士達がアルムさんに続いて、店内にやってくる。ただ、予想外だったのはその人数だ。

 俺は正直、多くても10人程度だと考えていたが、現実はその倍の20人だった。“嬉しい悲鳴”なんて言葉があるが、現実はヤバいしか言葉が出ないな。


「モモ、俺は調理に入る。アルムさんに救急箱の中身を説明したら、手伝ってくれ」

「がってん! モモに任せて先輩はギラギラに料理を頼むッスよ」

「一言余計だ! 任せたからな!」


 俺は俺の戦いだな。まったく、大人数の調理は久々すぎて腕が鳴りまくりだ。


 三つあるコンロにフライパンを並べて、加熱していく。

 温度が上がれば、次に取り出すのは肉だ。


 豚肉の塊を冷蔵庫から取り出して、一気に捌き、小麦粉、卵、塩コショウを用意。


「順番につけたら、焼くだけだ! モモ、来れるか?」

「今行くッス! 皿ッスか? 盛り付けッスか?」


 俺は笑って答える。


「皿に付け合せを並べてくれ。バランス良く頼む」


 指示に即座に動けるモモは、普段は言わないがやっぱり、心強いな。


挿絵(By みてみん)


「先輩は身体がデカすぎさんッスから、繊細な作業はモモがしてあげるッスよ! パンも焼き始めるッスよ」


「あぁ、バターロールを1人前2つだが、今日は3つにして出してやれ」

「おっ、先輩、ムキムキなのに、太っ腹ッスね! 毛も残らないくらいの大奮発じゃないッスか」


「いちいち、頭をネタにするんじゃねぇ!」


 そうして、ポークピカタを次々に作り、盛り付けていく。

 米を炊いてあれば、生姜焼きの方がいいかもしれないが、今から米を炊く時間はないから仕方ないな。


 そうして、作られた料理がカウンターに並べられ、パンとスープが用意されていく。


 フロア側は、アルムさんが他の兵士さんと協力して、怪我人の手当てをしてるらしい。モモの話だと、死にそうな人はいないらしいので、ホッとした。


 アルムさんには悪いが、いきなり事故物件にされたら、流石に泣きたくなるからな。


「先輩。すごく楽しそうッスよ。本当に見た目に反して、料理が好きなんッスから、まったく。でも、モモがいなかったら、先輩は顔面凶器で接客無理なんスから、感謝するッスよ」


「わあってるよ! 感謝しかないから、ほら、運ぶぞ」


 そうして、フロア側に料理を運んでいく。

 両手にポークピカタとパンを乗せた皿を手にテーブルに向かうと、兵士さんらの視線が何故か集中した。


「ありゃ、毛死病けっしびょうか?」

「それより、デケェ……180いや、190近くあるだろ……」

「あの目につけてる色付き眼鏡はなんだ……」


 どうやら、俺の身長と、薄紫の眼鏡が気になるらしいな……それと、ベリーショートって言葉も広めないとな……まぁ、異世界らしいからな。


「おい、お客様……俺はベリーショートですので……間違えないようにお願いします」


「先輩! お客さん脅すより、動いて欲しいッス! ピカピカが止まってるとサングラスが必要になるじゃないッスか! ブルーライトバリバリッスよ!」


「じゃかましい! 誰が有害ライトだ!」


 俺とモモのやり取りは出会った頃から変わらない。既にモモと知り合ってから、二年程が経つが、こいつは本当に変わらない。


 アルムさんが怪我人の手当てを済ませると、俺の方にやってきて頭を下げてきた。


「本当にありがとう。応急処置と包帯までいただけるとは、思っていなかった。私達は……本来なら負傷者が限界になれば、置いていくしかない状況で……」


「あぁ、そう言う話はいいから、まずは怪我人も飯が食えるかだけ教えてくれるか? 流石にポークピカタを怪我人にってのは、俺も引っかかるからな」


「え、あ、いや……怪我は足や手で、重傷者はいない。軽く骨を折った程度だから、王都に帰還さえ出来れば問題ないが」


「そうか、ならまずは腹ごしらえしてくれ。飯を食べれば、元気も湧くし、いいアイディアも頭から出てくるもんだ」


 横からモモが「食べても髪は伸びないッスけどね〜」と口にしたので、しっかりとチョップを入れておく。


 その後、兵士達は凄いスピードでポークピカタとパンを平らげ、多めに作ったスープも綺麗にからになった。


 美味そうに食べる姿に安心したが、正直、ここからが本当の戦いだな。


 厨房側に戻り、モモを呼ぶ。


「モモ、マジにどうする? 本気で異世界ってやつなら、俺達の常識なんて、通じねぇはずだからな」


「先輩……常識がある人は、過去に喧嘩で捕まりませんし、何より、酔っ払いを頭突きで病院送りにしないんッスよ」


 暫しの沈黙だった。


「過去は忘れよう。何より、異世界で生きるか、日本に帰るかの選択になるなら、モモはどっちがいい?」


 そう言いながら、俺は引き出しに入れておいた煙草(ヤニ)を取り出してターボライターで火をつける。


「先輩、現実世界には、家賃と高すぎる税金に保険料があるッス……更にいつ帰れるか分からないと滞納金、つまり追徴課税が発生するッス……一年以内に戻れないと絶望しかないッスよ」


 俺は静かに煙草の煙を肺から吐き出す。


「日本は無しだな……一年後に戻れても、貯金は全額店に食わせちまったからな」

「なら、モモも先輩について行くッス! 一生生活安泰なくらい稼いで可愛い後輩を養うッスよ先輩!」


「なんでだよ!」

「いいじゃないッスか! ピチピチッスよ! 合法ッスよ! お得で可愛いは正義ッス!」


 とにかく、話し合いの結果、三ヶ月で日本に戻れない場合は諦め、戻れたら、すぐに銀行に融資の申し込みで話が決まった。これから忙しくなりそうだな。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


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