1─3話、困った女騎士とリセットカンパニー?
「おい、本当に大丈夫なのか……何か私がしたのなら、謝罪しよう。だから頼む」
膝から崩れた俺の姿に慌てる銀髪鎧の女性。
その手が俺に触れようとした瞬間だった。
「待つッス! ウチの店は頭も身体もお触り禁止ッスよ! さぁ、先輩、ウチが来たッス」
モモに起こされ立ち上がる。
「すみませんでした。色々と驚きが溢れ出して、意識を失いかけただけですので」
「先輩! しっかりするッス。モモは先輩の傍にいてあげるッスからね!」
キラキラした瞳を向けるモモを落ち着かせると、俺は一度、銀髪鎧の女性に質問する。
「お客さんに質問は失礼だと重々理解していますが、教えてください。ここは何処ですか? 日本じゃないってのは、何となく分かりましたが」
「よく分からないが、場所で言えば、『ネハン王国』の首都『ライム』から5日ほど馬で駆けた森林地帯といった感じになるが? なぜ、そんな質問をするのだ?」
「そうなのか……ネハン王国ですか……えっと、ありがとうございます……」
ダメだ、まったく分からない。話が通じてるが、よく見たら、完全に外人さんなんだよな、この人。
「すまない。自己紹介がまだだった。私は、アルム・ニヤンキ。ネハン王国に所属している騎士の1人だ」
「あ、こちらこそ、俺は佐乃村 蛍です。いきなりですみません。あと、こっちのが、モモ……『夏波 李』です」
「親子じゃないのか、私はてっきり……」
そう口にしたアルムに、モモが待ったをかけるように手を伸ばす。
「それ以上、言ったらダメッス! 先輩のライフが既にデッドゾーンを振り切って、毛根ごと召されちゃうッスよ!」
「誰が召されるかぁ! 俺のライフも毛根もピンピンしてるわぁ!」
モモのアメリカンジョークを受け流した俺は再度、アルムさんに向き直る。
「騒がしくてすみません。それで、アルムさんは確か、食料を探してたんですよね?」
俺はアルムさんから、同行者がまだ大勢いる事実と怪我人もいることを会話から理解すると、すぐモモに向けて問い掛ける。
「たしか、救急箱とか、無駄に用意してたよな?」
「バッチリッスよ。なんせ、先輩の店に来る間に何度、ウチも擦り傷ができたか分からないッスから、ヤバい量を爆買いしてあるッス!」
聞いてて、悲しいよなぁ。俺の店に来るだけで怪我するってなんだよ……
「モモ、お前、よく働く気になったなぁ……」
「がってん! 先輩のためなら、モモは人肌も生肌も出しますよ! 先輩を1人にしたら、寂しさから、きっと孤独死しちゃうッスからね」
軽くモモに脳天チョップを食らわすと、アルムさんに視線を向ける。
「すぐに怪我人と皆さんを連れてきてください。食材はあるので、食事は俺が作りますから」
「え、だが……いや、助かる。すぐに仲間を連れて戻るので、待っていてくれ」
アルムさんはそう告げると走って行ってしまった。
後ろ姿を見送ると、何故かモモから脛を三回蹴られたが、日常なので気にしない。
「ほら、今から忙しくなるぞ? お冷の用意をしてくれるか?」
「先輩はおかしいッス! なんで普通にしてるんスか!」
突然、そう言われて、俺は改めてモモに気遣いが足りてなかった事実に気付かされる。
「そ、そうだな。いきなり異世界だと、日本じゃないとか言われても困るよな……お前にも帰る家とかあるし」
「先輩は馬鹿なんスか! モモの実家は18になったら独立がルールッスよ! それよりも、異世界ならなんで水が普通に出るんスか! 冷蔵庫も電気も冷房も動いてるんスか!」
「なっ! 確かに……なんで動いてんだ! これ、もしかして、知らない間にソーラーパネルを設置されてるとか……地下バッテリーがあったのか」
「ある訳ないじゃないッスか! 屋根はピカピカでも、先輩の店なんスよ!」
「な、ならなんで動いてんだよ!」
慌ててブレイカーを確認すると『リセットカンパニー』と書かれた保証シールが貼られていた。
「なんだこりゃ……」
その後、冷蔵庫や電子レンジ、冷房に洗浄機のすべてが『リセットカンパニー』に代わっていた事実に俺は両手両膝をついて、床を叩いた。
「どこ産だよ……メイドインジャパンで揃えた俺の設備が……せめて、国くらい書いてくれよ」
「先輩、そこじゃないッスよ……なんで使えるかを調べないとッスよ……」
「そうだな、取り扱い説明書は一纏めにしてあるから、まずはメーカーの確認からだ」
俺が事務所兼、寝室にしている部屋から説明書を取ろうと引き出しを開けると、一枚のメモが入っていた。
『異世界でも、安心安全快適をお約束するリセットカンパニー。すべての電気と水に安心を(すべて使えるのでクレームや対応などはおこなっておりません)』
「クーリングオフもできないのかよ!」
俺の叫びが店にこだまする。それと同時にアルムが仲間を連れて店の中に入ってくる。
「ホタル殿! アルム・ニヤンキ、今戻りました!」
その声に俺は気持ちを入れ替えてエプロンを腰に巻いた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
「嫌いじゃない」や「まあまあ読めるよ」と感じられた方は下の欄で
☆☆☆☆☆マーク、ブックマークに登録などをしてくれたら嬉しいです。
小さな支えをいただければ大きなモチベーションになります。よろしければお願いします。




