1─2話、マジに異世界です。
入口からの女性の声に慌てる2人、その視線の先には、銀色の短い髪をした鎧姿の女性が立っていた。
厨房側から隠れて様子を伺う2人。
「先輩……見るッスよ……コスプレイヤーッス!」
「アホか、俺達の店の場所を考えろ……駅から徒歩40分で、バス停から20分なんだぞ……あんな姿で歩いて来れる訳ないだろ」
「先輩真面目ッスか? 少しは色々妄想とかないんスか! 白馬ならぬ、バイクに跨るコスプレイヤーかもしれないじゃないッスか!」
「バイクでわざわざ来るような場所に店を出せれてたらあったかもな……だが、俺の店の立地だと……ないなぁ」
店内を警戒するように見渡す女性、身長からも成人しているか、成人手前にしか見えず、バッグやリュックなどは見えない。
ただ、2人の視線は女性の腰に釘付けになっていた。
「先輩! アレって、アレッスよね?」
「ああ、モモのいう、アレがアレなら、あれで間違いないな」
「「剣ッ!」」
2人が指差し確認をするように指が重なり、声が同時に発せられた瞬間、女性の視線が厨房へと向けられる。
「やはり、誰かいるんだな。客を選り好みするタイプの主人か? しっかり支払えるから安心してくれ“ゴル金貨”も持っているからな。頼む、食料を売ってくれない?」
ゴル金貨ってなんだ? よく分からないが、とりあえず、腹が空いてるって話だよな?
「モモ、とりあえずテーブルに案内してくれるか?」
「はぁ! 先輩……ウチが剣でザクザクされたらとか、心配しないんッスか!」
「お客様優先だ。もし、モモが剣でザクザクされたら、しっかり骨は拾ってやるから」
「人でなしッス! 可愛い後輩の骨で何をする気ッスか!」
「なんもしないわ! いいから、水とおしぼりを出して注文を聞いてきてくれ」
モモが銀髪鎧の女性に向かっていくと、女性は嬉しそうな声で喋り出す。
「おぉ、やっと話を聞いてくれる気になってくれたんだな。実は、私は──」
「すみません。お客様、まずはお席に案内しますので、コチラへどうぞッス」
言われるまま、モモの後ろについて歩く銀髪鎧の女性は、モモがテーブルの前でお辞儀をすると驚いたように後ろを振り向く。
「こちらのお席になるッス。 お冷とおしぼりになるッス。あと、注文が決まったら、そこにあるボタンを押して欲しいッス」
「いや、待って……水は有り難いがいくらだ。それより食料をだな……」
「水はサービスッスから、おかわりが必要な時もボタンをポチッと押すッスよ」
驚いて固まる銀髪鎧の女性にモモはメニューを開いて手渡す。
メニューを見て、目を見開く銀髪鎧の女性に頭を下げたモモは、厨房へと戻っていく。
「先輩、完璧な接客をしてきたッスよ!」
「どこがだよ……普通にアウトだろうが……はあ、よくそれでアルバイト時代に面接受かったなお前?」
軽い言い争いという名のじゃれ合いをしていると、フロアから、呼び出し音がなる。
「お、モモ、出番だぞ?」
「先輩……オープンは明日からッス……つまり、代わり番こッスよ」
「お前、はぁ……じゃあねぇか。わかったよ」
俺はフロアへと歩いていく。オープン前日だったため、白いシャツに黒のズボンといった姿だが、失礼にはならないだろう。
「ご注文はお決まりですか?」
そんな俺の声がテーブル席に座る銀髪鎧の女性へと向けられると、何故か驚かれた。
「なにか?」
「あ、いや、失礼した。まさか“毛死病”の者がいるとは思わなくてな……移らぬ病と分かっていても、驚いてしまったのだ。悪気はないすまない」
立ち上がり、分からない病名を口にして謝罪する銀髪鎧の女性に俺は笑顔で返事をする。
「大丈夫ですよ。これは単なる“ベリーショート”なだけですから、それよりもご注文はお決まりですか?」
「え、ベリーショート? あ、いや、それが文字がさっぱり分からなくてな、帝国式とも、王国式とも違う文体に困って押せと言われた魔道具を押させて貰ったんだ」
「メニューの文字が分からないですか? 日本語が読めないということですか?」
「ニホン語? すまない。そのような国の言葉は知らぬのだ。良ければ説明と、食材を売ってほしいのだが? おい、大丈夫か! なぜ、膝から崩れた!」
どうやら、俺とモモは本当に異世界に来ちまったらしい。マジにありえないだろう!




