1話──女神の気まぐれルーレット! 選ばれたのはベリーショート?
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「女神様! また、別次元から人間の注文が入りましたよ。起きてくださいぃ、お仕事ですよぅ!」
天使の言葉に遊技の女神“フォルトゥナ”が気だるそうに頷く。
「わかったわよ。まったく、天使の癖に女神使いが荒いんだから……なら、とりあえず【ルーレット】を回すわよぅ」
ギラギラと眩い光を放ちながら、複数のルーレットが周り出す。
ルーレットには『髪型』『体型』『年齢』『性別』『国』と書かれたボールがまわっており、すべてのボールがマスに止まると女神は軽く微笑んだ。
「日本なら問題ないわね。説明が簡単な国で助かったわ。はい、天使ちゃん。マニュアル、あとはヨロシクねぇ」
同時刻、日本。
「先輩! 完璧ッス! ピカピカですよ。床も心も綺麗にツルツルッス」
「モモ……精神的にも、現実的にも、頭を見ながらピカピカとか言うんじゃねぇよ……凹むだろう」
「いやいや、先輩はまだ大丈夫ッス。夢が溢れる三十歳ッスから。店も明日にはオープンで大フィーバー間違いなしッス」
俺は『佐乃村 蛍』三十歳になるまで、飲食店で雇われ店長として働いて、念願の独立をしたばかりだ。
そして、俺にダル絡みをしてきてるのが、店長時代にアルバイトで採用していた恩師の娘でもある『夏波 李』だ。
何故か俺の独立を聞きつけて、面接に来たモノ好きの後輩だ。
結果だけを言えば、モモ以外に面接に来た者は居ない。だから、ありがたく採用させてもらった。
「先輩! 大変ッスよ……厨房が眩しいッス!」
「あ? どうした」
眩い光が店全体を包み込み、白い靄が広がる。
「おい、モモ、大丈夫か!」
「大丈夫ッス!」
俺がモモの手を掴むと同時に、視界の先でパタパタと飛んでいる生物に目を疑った。
「先輩……子供が飛んでるッス」
「見りゃあ分かる……モモにも見えてんだな?」
俺達が互いに確認をしていると、空飛び子供と視線が重なる。
「いきなりすみません。ボクは……早い話が天使でして、女神様が(ルーレットで)選んだ人間を別次元の世界に案内するために来ました。なので、急ですが、質問は今のうちにお願いします」
そう告げた天使は優しい笑みを浮かべる。
俺は動揺していたが、モモはすぐに質問を口にした。
「これって異世界転生ッスか、異世界転移ッスか!」
「えっと、異世界転移になりますね」
天使の返事に、モモが嬉しそうな表情を浮かべると浮かれながら、“小説屋になる〜”やラノベについて語り出す。
そんなモモを落ち着かせながら、俺も質問をする。
「なあ、それは拒否できるのか! 俺は明日店をオープンするんだ」
ただ、天使は俺の質問に目を逸らす。
明らかに反応が怪しいと感じた俺はそのまま、質問をすると、諦めたように天使が目の前に降りてくる。
「決定事項です! ごめんなさい!」
俺の目の前で土下座する天使に俺は言葉を失った。
それと同時に“ゴーン、ゴーン”と数回の鐘の音が耳に響いていく。
「すみません。お時間なので、質問タイムは終わりです! こちらが説明書きになります。では、失礼します!」
そう言い残された俺達は、次の瞬間、光に包まれる。
目を開くと何も変わらない店舗の厨房に俺達はへたり込んでいた。
「なんだったんだ……モモ、お前も見たよな?」
「あ、はいッス……間違いなく、天使がいたッス」
俺達が顔を見合わせると、一枚のメモが手に握られており、内容を確認する。
“異世界転移のお約束”と書かれたメモを見てモモが飛び跳ねる。
「先輩! ウチら、異世界人と話せるみたいッス! 言葉は英語もポルトガル語も全部話せるレベルッスよ」
どうやら、【異世界言語理解】と言うらしい。
そこから、モモの説明で、俺達は異世界にいるのだと理解した。
「先輩……ヤバいッスよ……ウチら、チートスキルがないッス」
メモには、『佐乃村 蛍』と書かれており、スキル【異世界言語理解】【身体強化】【店舗管理】とだけ記されていた。
そして、『夏波 李』と書かれたメモには、スキル【異世界言語理解】【身体強化】【サポーター】と書かれていた。
「なんだこりゃ、俺とモモの説明だと【店舗管理】と【サポーター】が違うだけじゃないか?」
「使い方が書いてないッスねぇ? ただ、選ばれた基準に『ハゲ』ってあるッス……先輩、諦めたらダメッスよ……」
「変な慰め方するな、俺は単なるベリーショートだからな」
「はいはい、大人はみんなそう言うんッスよねぇ」
メモを眺めていると不意に入口の扉が開かれる。
「誰かいないか!」
そんな女性の声に俺とモモは慌てて入口へと振り向いた。
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