49話
俺が困った表情を浮かべた瞬間、モモがオーバーアクションで割り込んできた。
「ドレイク1人で、“はじめてのおつかい”なんて危ないッス! なので、ここは……このモモが一肌脱いであげるッスぅぅ!」
歌舞伎のポーズみたいに前に手を突き出したモモ。
しかし、婆さんはその前に突き出されたモモの手に視線を向けていた。
「なんだい? アンタ、この嬢ちゃんに“土人形の指輪”を渡したのかい……」
「まずかったのか?」
「マズかないよ。その“土人形の指輪”は、魔力さえあれば、ゴーレムを作り出せるって品だ。魔力切れを起こさない限り、永遠の働き手になるからねぇ、荷物運びなんかに、アンタが使うと思ってただけさ」
そんなことを言ってた気がするな……多分。
婆さんの説明を聞いたが、曖昧な部分が多かったから、むしろいい機会だな。
本当にゴーレムが使えるなら、婆さんへの届け物も任せられるかもしれないしな……
そう考えていると、俺のズボンが軽く引っ張られる。
「マスター……ドレイクじゃ、ダメ……やっぱり、役立たず?」
「ち、違うぞ! ドレイクはドレイクだからな! 役に立ってるし、届け物に関しては、モモにも手助けをしてもらおうかと……」
泣きそうな顔はやめてくれ、反則だからな……
「マスター……ドレイクね、役に立てるのを見せたい……の……やっぱり、ダメ……かな」
俺は首が吹き飛ぶんじゃないかと勘違いする速度でモモへと向ける。
モモは全力で笑うのを堪えてやがる……
「はぁ……わかったッスよ。ドレイクが届ける時の乗り物として、モモがゴーレムを作ってあげるッス! だから、泣いたらダメッスよ。ドレイク」
「モモ姉……本当に? ドレイク、お届けできる?」
モモのお陰で何とか話がまとまった。
ただ、それからが大変だった。
ゴーレムを作ると息巻いたモモだったが、センスが残念すぎて、外の土がまるでスライムみたいになっている。
「モモ? ゴーレムってわかるか、ゲームなんかにいるやつだぞ?」
「知ってるッスよ! 先輩は黙ってるッス」
必死に土から形を作るモモの横でドレイクも土を触りだし、色々と作っているのが微笑ましい。
そんな感想を思いながら、待っているとモモがドレイクに話し掛け、ドレイクが悩んでから頷いていく。
ドレイクが今までよりも大きな土の塊を形になるように必死に大きくしていく、モモはそれを軽く撫でて整えているように見えた。
そうして、大型犬と同じサイズに作られたのは、ウルフ型のゴーレムだった。
「見るッス! モモとドレイクがタッグを組んだ結果を! 完璧じゃないッスかァ!」
とりあえず、1人で盛り上がるモモをスルーして、俺はドレイクの頭を撫でる。
「よくできたな……かなりリアルでびっくりしたぞ。スゴいなドレイク」
「マスター……頑張れしたよ! ドレイクは次からも頑張れ、するよ。へへ」
と、いった感じでゴーレムの試作一号がモモとドレイクの頑張りで完成した。いや、ドレイク風に言えば頑張れって言うべきか?
そこから、モモは婆さんの手助けを借りて、ゴーレムを動かすための練習を開始した。
最初はすぐに転んだり、走っても曲がれなかったりと不安しかなかった。
ダメかと思ってたら、いきなりドレイクが大型犬ゴーレムの背中によじ登り、その場で指示を出して始める。
それが、かなりいい感じに指示を送れていて驚かされた。
ただ、その結果、モモは複雑そうな表情で指輪を見つめる事になってしまっている。
「むむ……これって、あれっスか……ドレイクに指輪をあげるべきなんッスかね……」
モモがそんな一言を呟くと婆さんが呆れた表情で止めに入る。
「変な気は使わない方がいいよ。お嬢ちゃんの魔力だから、あんだけあの犬型は動けるんだ。普通の人間が使っても盾にするか、荷運びかですぐに解除する事になるからねぇ」
婆さんの言葉に俺は首を傾げた。
「そんなに、ゴーレムってのを動かせるのは、すげぇのか?」
「当たり前さ、この魔法堂のヤキスー・ガーニが保証するよ。あれは、嬢ちゃんの魔力あってこそさ」
「だ、そうだぞ? モモの魔力無しだと動かないし、ドレイクが危なくなるらしいな」
そうして、モモの表情が明るくなる。少しだけ、ヒヤヒヤしたが問題は解決だな。
因みに犬型ゴーレムには色々な飾りがつけられていく。赤いバンダナにエプロンを加工した服と、見ていて着せ替え人形みたいになってるな……
「ふぅ、先輩! 見るッス! モモとドレイクはやり遂げたッス」
「マスター……見る! やり遂げしました!」
ドヤる2人に俺は笑って見せる。
「この狼型のゴーレムちゃんの名前を発表するッス! 名前は“ビッグブル1号”ッス!」
俺は口をあんぐり開けたまま固まってしまった。
見た目、狼だぞ! なんでブルなんだよ! などとツッコんでも、揉めるだけなので、本人達が納得してるなら俺は何も言わない。
「ふぅ、流石に疲れたッス。先輩、栄養ドリンクの『レポビタ』を貰うッスよ。みんなも飲むッス」
「おい、ドレイクには半分にしろよ? 俺達と違って子供なんだからな」
婆さんにも、モモがレポビタを手渡し、みんなでキャップを回して開封していく。
俺はドレイクと半分にする為、小さなコップに入れてから、炭酸ジュースで割って飲む。
ドレイクは、驚きながら飲んでいたが、それ以上に興奮していたのは、婆さんだった。
レポビタを飲んだ途端にガラスの入れ物や缶の蓋を見ながらブツブツと呟き、目を輝かせている。
婆さんがガキみたいに目をキラキラさせるのは、不思議な光景だな……
「話があるんだが、このレポビタってやつをアタシの店にも下ろさないかい? 石鹸と合わせて金貨2枚分を毎月仕入れたいんじゃがねぇ?」
「石鹸が大銅貨2枚って言ってたが、レポビタを幾らで仕入れる気なんだ?」
「そうさねぇ……出来れば同じく、大銅貨2枚で買いたいが、どうだい? 石鹸と違って、これならすぐに売れるだろうからね……」
一旦、確認するようにモモに視線を向けると全力で親指をグッと立てられた。
「なら、その条件で契約成立だな。口約束になるが構わないか?」
「アタシは構わないさ、それに紙の契約なんて、信頼関係の前には単なる落書きと変わらないからねぇ。ホタル、改めてよろしく頼むよぅ」
「おう、任せてくれ」
「あと、モモの嬢ちゃんと、ドレイクの嬢ちゃんも品物の運送をよろしくねぇ」
「任せるッス! モモのゴーレム……じゃなくて、ビッグブル1号がいれば、大丈夫ッス!」
「ドレイクもいるから大丈夫する!」
こうして、俺は婆さんの提案で品物としては3種類、『煙草』『石鹸』『レポビタ』を金貨2枚分まで、魔法堂へと下ろすことになった。
安定の収入には、まだまだ遠いが少なくともこっちの世界なら10万円分の金貨2枚が約束された。
それは同時に、【店舗受取】を発動した際には300万円分(金貨1枚、日本円で150万円)の品が受け取れることを意味している。
いや、マジに金銭感覚バグるんだよなぁ……
お読みいただきありがとうございます!
もし少しでも『蛍とモモの掛け合いが面白いな』『続きが気になる』と思ってくださったら、ページ下部の【☆】や【ブックマーク】で応援していただけると、ハゲみになります……!(毛根的な意味で)
☆ギャグが笑えなくても、クーリングオフは勘弁してください。




