43話
魔導具屋の婆さんから買った品を改めて確かめる。
“魔法カバン”
“マジックバッグ”
“土人形の指輪”
この3点でマジックバッグ以外は婆さんのオススメらしい。
……らしいってのは、説明をきいてもまったく理解できなかったからだ。
マジックバッグは、まぁ沢山入る袋だってのはわかった。
この魔法カバンってリュックも似た物らしい? デザインが斬新でとか、どうちゃらこうちゃらと婆さんが話してたが……正直、わからん。
最後に指輪なんだが、これが一番わけが分からん品物なんだよな。
俺は婆さんから言われた“土人形の指輪”の説明を思い出してみる。
「この指輪は、魔力を大量に使いゴーレムを生み出す指輪だ。術者が魔力切れを起こすと指輪とゴーレムは自然と砕けて土に戻る。まぁ、才能がない魔法使いが身を守る為のお守りみたいなもんさ」
つまり、一回限りの使い捨てってやつだよな……ドレイクかモモにこれは渡すとして……早く帰らないと2人が心配するよな。
朝市が賑わいだし、人が増えてきたので、俺は素早く最初のオバちゃんの店に向かって目的の野菜を買っていくことにする。
「お、買えたみたいだね。ならオマケしとくから、また買いに来ておくれよ!」
オバちゃん達の店を回りながら、俺は欲しい品を買いながら歩いていく。
そうして歩いていると、やけに賑やかな人集りができていた。
「見ろよ……喧嘩らしいぞ。威勢のいい嬢ちゃんが冒険者に絡まれたらしいな」
「あの嬢ちゃん達、大丈夫か? 弟さんかねぇ、早く騎士団が来てくれたらいいんだけどねぇ」
どうやら、騎士団待ちらしいな……ただ、誰も助けに入らない感じなら、見過ごせねぇよな。
人混みを掻き分けながら、俺は騒ぎの中心に向かっていく。
人集りの中心で5人程の冒険者が犬耳のチビと猫耳のチビを怒鳴りつけている真っ最中だった。
「おい! 睨んでんじゃねぇぞ。ガキがぁ!」
「生意気に冒険者様に逆らう馬鹿はお仕置してやらないとな!」
あれが冒険者かよ……なんて民度の低い奴らなんだ……ただ、言われてるチビ達は怯えてるってわけじゃなさそうだな。
「お前達がボク達にぶつかって来たんだろ!」
「そうだよ! お前らがぶつかって来たんだろ!」
犬猫キッズが牙を剥き出しに冒険者達を睨んでんな……ただ、火に油って感じか……
冒険者達も引けないらしいな……
そう思った次の瞬間、冒険者の1人が鞘に手を伸ばす。
「謝って、あり金を出せば許してやったのによぅ……もう許さねぇからな!」
潮時だな……
「オイ! ガキ相手に剣を抜く必要があんのか!」
見守るのが限界だと感じて声を出すと、チビ達を睨んでいる男が振り向きもせずに大声をあげる。
「誰だよ、お前! ガキ共の味方してっとぶっ飛ばすぞ! 引っ込んでろや!」
俺はそう口にした男の背後から肩に手を伸ばす。
「オイ……人の話を振り向かずに聞くのは、流石に面白くねぇぞ?」
「あぁ! うるせぇ……え」
俺はその冒険者に見覚えがあり、相手も俺の顔は見覚えがあったらしい。
他の奴らも、俺が声を掛けた途端に黙ってしまっている。
「それで、その剣を抜くのか? 抜くなら俺が相手してやる。チビ共も、構わないか?」
確認をすると犬猫キッズは互いの顔を見合わせてから、何故か俺を睨みつけて来た。
「ボク達の喧嘩だぞ! ツルツル!」
「そうだ! オイラ達の敵だぞ。ピカピカ!」
ボク猫とオイラ犬のガキが……俺は勘違いしてたみたいだな……
「口の聞き方を知らないらしいな……なら、まとめて俺が教育ってやつをしてやるよ……ガキ共もまとめて掛かって来やがれ!」
そこからは、冒険者達が吹っ切れたのか、武器を抜いて来たので、全力で顔面に拳をめり込ませていく。
確かに剣筋はいいが、急所を狙いすぎなのと、人相手に剣を振るうのを躊躇ってくれたのか、殴りやすい相手だった。
俺が冒険者5人を【身体強化】した拳でブラックアウトさせてから、犬猫キッズに振り向く。
一歩、また一歩と近づく度に犬猫キッズが身を震わせる。
「ボク達は……つ、強いんだぞ……」
「そうだ……強いから、今引けば……見逃してやるんだぞ……」
「言いたいことはそれだけか?」
俺は耳に挟んでいた煙草を手に取り、口に咥えてからターボで火を着ける。
「はぁぁ……言いたいことは他にないらしいな?」
視線を下に向けながら、煙を吐き出した俺は手を猫耳側に伸ばす。
「ヒッ!」と、怯えた声を出した猫耳と涙目の犬耳、周囲からは視線を逸らす人の姿が目立つ。
「いいか? 失礼なことを言ったら、ごめんなさいだ!」
そっと猫耳キッズの頭に手を置く。
「わかったか? 相手を見ないで喧嘩をするってのは、危ないんだ。だから、次からは気をつけるんだ。お前らが強くても、上には上がいるからな」
そう口にすると、犬猫キッズが急に泣き出した。
やり過ぎた……あちゃあ、やっちまったなぁ。
「オイラたちだって、つよいのに……強いのにぃぃぃ」
「泣くなよぅぅ、ボクたちは、もっと強くなるし、次は負けなければ……いいんだからね……うぅぅぅ」
「お前ら泣くなって、頼むから……ほら、泣きやめって……」
そうして、犬猫キッズを泣かしてしまった結果、周囲からの視線が痛ェよ。
「ハァ、わかった。俺の負けだ。だから泣き止んでくれないか?」
「ツルツルは負けてない……ボクは嘘は嫌い!」
「そうだ……オイラもピカピカに負けたのに、嘘つけない……」
どうしろってんだよ……
「なら、どうしたらいいんだよ……」
犬猫キッズが互いの顔を見合わせると頷いてから俺に視線を向けてくる。
「名前! ツルツルの名前は! ギルドで確かめる!」
「ピカピカの名前を教えろ! オイラ達とパーティー組め!」
「名前だぁ……俺は佐乃村 蛍だ。名乗ったぞ」
「ツルツルのホタルだな! ボク達がパーティー申請したら組むんだぞ!」
「そうだぞ、ピカピカのホタル! 約束だからな! ギルドで絶対にパーティー申請するからな!」
勢いのまま言いたい放題言い終わると、走り去ってしまった。
俺は気絶した冒険者の1人を起こしてから、しっかりと目を見て会話をする。
「オイ……次、あいつらに絡んだら……回復屋でも治せないくらい、殴るからな。わかったか?」
しっかりと頷いた為、俺もその場を後にする。
周囲の視線が早朝よりも突き刺さるが、今回は俺は悪くねぇだろうが、ちくしょう。
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☆ギャグが笑えなくても、クーリングオフは勘弁してください。




