36話
マダムピンキーが物件を探し始めてから、いくつかの紙が俺の前に並べられる。
「この物件は全部、とびっきりのデンジャラァァァス! インパクトゥゥ・オブ・インパクトゥゥ!」
説明にならない説明を聞きながら、場所などの説明だけはきっちり聞いていく。
1つは屋台で言えば二軒分の広さで、二階建ての物件だった。
一瞬引かれたが、既に店は【店舗収納】である為、建売り物件はすべて除外してもらう。
「なんてびっくりサプラァァ〜イズ! まさかの降り出しナッシング!」
「なんか、悪ぃな……更地でいいから広めの土地はないか?」
「うぅ〜ん。土地だってのがむしろ難題なのよねぇ〜それに場所もやっぱり大通りで探すと無理難題のミステリィィ〜!」
「ん? いや、マダムピンキー、俺達は別に大通りにこだわってねぇんだけど?」
「ぬぇッ! なんでそんな大切なカミングアウトを黙リングしてたのよぅ! それなら話がぐるリングからのクラクラム・ドピンキーじゃな〜い!」
マダムピンキーは、テーブルの書類を綺麗に束に直すと天高く人差し指を伸ばしていく。
「ベリーちゃん! 別区画! ゴル金貨で5枚までの土地をチョイス!」
そうして、マダムピンキーが選んだ土地からいくつかの候補が見つかり、俺達は直接土地を見ることになった。
案内には何故か、ブルーベリーの2人……ただ、喧嘩をする気はないらしく助かったな。
「次の土地はあちらですね。大通りや居住区から離れた位置になりますが、今まで見てきた土地の中では一番大きいサイズになります」
「確かに広いな? あとあの建物はなんなんだ?」
ベリーの説明する土地の範囲に横長の建物があり、俺は首を傾げた。
「あちらというよりも、あの建物を中心とした土地になりますね」
土地は確かに広い……ただ、汚れた建物がやっぱり気になるな。
「ベリーさん。ダメじゃないですか。しっかりと情報を伝えるのは、商人のルールであり、義務なんですから。このブルーが分かりやすく説明致しましょう」
ブルーはそう言うと建物について話してくれた。
無駄な部分が多い説明だったが、分かりやすく言えば、元宿屋らしい。
ただ、大通りから離れていて人もあまり来ない。大きな土地と宿屋に全財産をぶち込んだが、宿屋は閑古鳥で1ヶ月ほど前に店主が夜逃げしたらしい。
まぁ、見た感じ補修作業も間に合わずに自転車操業だったんだろうな?
「なぁ、あの宿屋付きの土地なら買い手がいたんじゃないのか?」
「いえいえ、むしろ逆でしてね。建物が横長の二階建て、しかも一階は食堂と普通過ぎて、誰も買いません」
ブルーの説明を聞いて、俺個人はそんなに不便さを感じないしいい物件だと思うがな?
「更に言えば、家として一家で住むにも不便ですからね。同じく宿屋をやるにしても人が来ないのでは話になりません」
「随分と素直だな? ただ、俺は気に入った! 宿屋はオマケだから構わないしな。モモ、ドレイク、お前達はどうだ?」
「モモはいいと思うッスよ! 先輩もこれで宿無し髪なし顔面凶器から、宿あり髪なし顔面凶器にグレードアップッスね!」
「マスターは、顔面アップだよ!」
2人の意見は置いといて、とりあえず買う流れで話をまとめるとするか。
その前にモモの頭にはしっかりとお仕置チョップを入れておかないとな。
「暴力反対ッスよ! 身長が縮んだらどうするんッスか! 先輩の頭みたいに簡単には伸びないんッスよ!」
「じゃかましいわ! 愛の鞭ってやつだから、暴力じゃねぇ。むしろありがたく受け取っとけ」
「横暴ッスよ!」
「マスター、ドレイクにも愛のむち?」
「ドレイクには、まだ早いかな……」
悲しそうな顔すんなって……
「モモ、ドレイク……ちょっとこい……」
2人が傍に来たタイミングで、しっかりとハグをする。
「血迷ったんッスか! 先輩……」
「マスター? ハグ?」
「俺なりの愛のハグだ……今はこれで勘弁してくれ」
恥ずい……柄でもねぇ。だぁ……何してんだ俺!
「あの、終わりました? 終わったなら契約だけは先に済ませたいのですが?」
「はぁ……ベリー、ベリー、ベリー? 君は本当に空気が読めない人だねぇ! 今の雰囲気でそんな風に割り込むなんて?」
「いえ、ブルーさん程、無神経ではありませんので安心してください」
このブルーベリーコンビは……
それからすぐにベリーが持参した仮契約にサインを入れる。
「こちらの土地は、購入ならゴル金貨で5枚、金貨なら125枚になります。土地を借りる方向で契約でしたら、月の支払は銀貨5枚になります、どうなさいますか?」
「いや、最初から借りたりするのは考えてないからな。買う方で契約させてくれ。手持ちがある内に話を決めないと後から泣きをみそうだからな」
「かしこまりました。差し出がましい発言をしてしまい申し訳ございませんでした。改めてホタル様、ご購入でよろしいですか?」
そうして、話が決まるとブルーを立ち会い人として、ベリーにゴル金貨5枚を手渡す。
「確かに、このブルーが仮契約を見届けました。おめでとうございます。あちらの土地と建物はすべて、契約書に則りお客様の物となりました」
「私、ベリーからも感謝とお祝い申し上げます。正式に土地と建物のすべてが譲渡されました。あとは商業ギルドでギルドマスターに報告を済ませれば完全にホタル様の土地となります」
無事に土地の権利を手に入れたが、またマダムピンキーと話をしないとならないらしいな。
「わかった。2人とも行くぞ」
「了解ッス!」
「はい、マスター」
ブルーベリーコンビと商業ギルドに戻るとマダムピンキーがニヤついた表情で出迎えてくれた。
「ナイスなタイミングで戻って来たじゃないのよぅ! まさにドンピシャ! 伝わる衝撃的インパクトゥゥゥッ! テルテルボーイにお客様なのよぅ!」
俺に客って誰だ?
マダムピンキーの背後から顔を出したのはアルムさんだった。
「やぁ、ホタル殿……朝ぶりだな……あはは……」
「あぁ! アルムさんッスよ! なんで商業ギルドにいるんッスか、まさか……騎士団を追い出されたんッスか?」
「ち、違うぞ。モモ殿もホタル殿も、憐れむ表情をやめてくれ! 騎士団からホタル殿に依頼があって探しに来ただけなんだ」
騎士団からの依頼? いや、正直……面倒くさいんだがな……はぁ。
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