35話
無駄にインパクト押しの商業ギルドのマスター、マダムピンキーは俺達を会議室に案内してくれた。
「お茶を入れましたのでどうぞ。ギルドマスターのお茶は、いつものカラフルフラワーの紅茶になります。初見の皆様は普通の茶葉ですのでご安心ください」
「もう相変わらずねぇ? ベリーちゃんは堅苦しいわぁ、服装は大胆不敵にインパクトゥなのになんで、アタシをマダムピンキーって呼ばないのかしら? テルテルボーイもそう思わなァ〜い?」
「むしろ、俺はアンタが飲もうとしてる虹色の紅茶が気になって仕方ないんだがな……」
虹色って普通、あれだよね……アニメとかで“オロロロロ”とかなる際に使われるやつだよな。現実に飲み物になるとあんな感じなのかよ。
「わかるッスよ。先輩が気になるのも間違いないッス! モモとドレイクも先輩同様にレインボー紅茶を所望するッス! ドレイクも言うッス!」
「えっと、所望です!」
そこから、紅茶がレインボーに代わり俺はとりあえず、口をつけた。
味は甘くて苦くて、とろみがあり、仄かにマイルドって! ホットチョコレートみたいな味がしやがる……見た目を裏切りすぎだろうが。
「プリティーちゃん達もテルテルボーイと同じく、見る目があるじゃないの。見た目に勝るインパクトゥ! 人が恐れ躊躇う物を試す勇気こそが、商人の駆け引きであり、未知の利益を生み出すのよぅ!」
まともなんだよな……すげぇ、まとも。ただ、オカマなおっさんで派手な服装って、脳がバグるんだよ!
俺はすべてを飲み込むように、レインボーな飲み物を流し込んでいく。
「気に入ったみたいで何よりだわぁ! それから本題に入らないとよねぇ? アタシもテルテルボーイ&プリティーちゃんズも遊んでたら、稼げないものねぇ!」
そう語ると、ベリーがマダムピンキーに数枚の紙を手渡していく。
見覚えのあるその紙は、爺さんから預かり、騎士団で手渡した手紙だった。
「おい、それって!」
「はい、私ベリーが騎士団にて、サンセル支部長殿より商業ギルド宛という事で預かったアッラノーマ氏からの手紙になります。他にサンセル支部長殿からの内容証明などもございます」
「ふむふむねぇ? テルテルボーイ、アンタ達、テルテルファミリーが、スンバラシイィィッ! 衝撃的なインパクトゥゥゥッ! をこの『ライム』に持ち込むって書いてあるじゃなァ〜い? ベリーちゃん。空き物件のリストをちょうだいなぁ」
ベリーが言われるままに、紙の束をマダムピンキーに手渡すと、すぐに内容を確認して、半分の束をベリーへと手渡す。
「ここから上の束は予算オーバーのオーバーキルねぇ! 流石のアタシも出し惜しみしちゃうレベルの物件だから今はいらないわぁ〜! 問題はここから下側、さぁ、テルテルボーイ。交渉のお時間よぅ」
マダムピンキーは上から順に説明をしてくれた。
最初の物件は広く、商業ギルドからも近い物件で本来ならゴル金貨40枚の物件だと言われた。
「ただしィ〜! テルテルボーイ&プリティーちゃんズが払える金額に限りがあるのはわかってるから、割り引いてあげちゃうわぁ! 最初の頭金でゴル金貨を10枚預けて貰って、コツコツ返済っていう、テルテルボーイちゃん達だけの特別なシステムゥゥゥ! さぁ、サインしちゃいなさぁ〜い!」
有り難い話だな。土地の場所も大通りだし、ローンなんて考え方してるのに、利子も吹っ掛けてこねぇ。
実際にマダムピンキーは最高の形で支援してくれてるんだよな。
「悪ぃ、予算が足りないから無理だ!」
「ぬぇッツ! なんでそうなるのよ! ねぇ、テルテルボーイ? 冗談なし、少なくとも最高にいい物件を破格の好条件でって話なんだわよぅ? さっきも言ったけど、頭金だけで、無理なく返済できちゃうテルテルボーイだけの特別扱いなのよぅ!」
俺からの返事が予想外過ぎたのか、マダムピンキーがガチで焦って身を乗り出した。
近づく顔がマジに怖いって……
「冗談じゃなく。所持金が足らねぇんだ。有り難い話なのも理解してるが、無いものを出せるとは言えないんでな」
俺の言葉にマダムピンキーは虫眼鏡のような物を取り出して支部長からの手紙を読み直していく。
その間に、モモから袖を引っ張られたので振り向くと何故かご立腹だった。
「先輩、何にお金を使ったんッスか! あれッスか、モモ達と離れてる間に奴隷商館で大人なアレで18Rですか!」
なんで、頭が真っピンクなんだよ……
「お前は俺がそんな事すると思ってるのか?」
「先輩は、欲望を我慢して破裂させるタイプッスから、モモとドレイクが離れてる間に……はぁ、モモの先輩が汚れてしまったッス……」
何故かドレイクを抱きしめて、ジト目を向けるモモ。
「マスター、汚れたの? ドレイクが一緒に身体洗う?」
ドレイクは純粋か……はぁ。
「言いたかないが、商業ギルドでの賠償金、これで結構な額が持ってかれてんだよ」
そう俺が口にすると、何故かマダムピンキーが声を出す。
「それでも〜! あまりに計算が合わないわぁねぇ〜!」
そう言いながら、マダムピンキーは支部長の手紙をなぞりながら喋り続けた。
「少なくともサンセルちゃんからの手紙で支払い額はわかってるから、商業ギルドへの賠償金後に土地の契約をしてもテルテルボーイの所持金はゴル金貨なら2枚、金貨なら10枚は手元に残るはずじゃな〜い?」
「そうなんッスか! なら、なんで無いんッスか!」
「えっと、マスター、ないんですか!」
「……モモ、改めてお前が何をしたか、言ってやるがなぁ! 絡んできた連中に何をしたか言ってみろ?」
「あ! あれは、不可抗力ッスよ……ただ、少しだけ、やりすぎただけッス……」
「少しやりすぎて、人の手足ってやつは明後日の方向にはならないんだよ」
理由がわかるとマダムピンキーは呆れたように、紙の束から更に半分をベリーへと手渡した。
「話を聞いて、出せない物件が増えちゃったけど、安心しなさぁ〜い。商業ギルドには色々とデンジャラスな土地も山積みびっくりパラダイスゥゥなんだからねぇ! さぁ、探すわよぅ。テルテルボーイ!」
不安を感じながらも、面倒見のいいマダムピンキーに感謝だな。
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