33話
色々ありましたが、最後まで頑張ります。すみませんでした。
奴隷商館でリオのおっさんに礼を済ませてから、俺はモモとドレイクを連れて外に出る。
リオのおっさんは馬車で送ると言ってくれたが、商業ギルドまでは一本道だと分かったので、歩いて移動することにした。
何より、モモが走りたがったのが一番の理由だ。
「モモは完全体モモになったッス!」
まぁ、こんな感じで今までのモモなら限界を超えていたはずの速度で走ってみたり、飛び跳ねたりと大騒ぎになってる感じだな。
そんなモモの後ろを必死に追い掛けるドレイクも見ていて、なんというか……あれだ! ほのぼのするな。
「先輩〜! 何、公園で子供を見守る不審者みたいな顔してるんッスか! 捕まっちゃうッスよ!」
「……ほう? 俺を不審者扱いか、いい度胸じゃねぇか、ならとっ捕まえて叱り飛ばしてやるかんな、モモぉぉッ!」
「あはは! 早く捕まえてみるッスよ! ドレイク、先輩から逃げ切るッスよ〜。逃げられないとハグされて頭でジョリジョリされるッスよ」
「え、えぇ……マ、マスター……捕まえてくださいね」
ドレイクが止まってから頭を下げる仕草に俺は毒気を抜かれて、笑いそうになってしまった。
その後は、しっかりと2人を捕まえてやったが、満足そうで何よりだな。うんうん。
「おい! そこの人攫い、ガキ達を離しな!」
「冒険者ギルドの縄張りで人攫いなんて真似しやがって、少し話を聞かせてもらおうか!」
なんか柄の悪ぃ兄ちゃん達が勘違いしてるみたいだな。今どきの日本なら見て見ぬフリをする奴もいるわけだから、むしろ高評価だな。
「誤解させちまったみたいだな。2人は俺のツレだから問題ない。騒がせて悪かったな」
とりあえず、笑って話を穏便に済ませることにしよう。
争いからは何も生まれないし、モモとドレイクの為にも我慢は大切だからな。
「何を笑って喧嘩売ってんだ! 人攫い野郎が!」
「そうだぜ。こっちはしっかりと逃げるガキンチョ2人の姿を見てたんだからな! ハゲの“毛死病”野郎がァ!」
俺は大人だ。だから我慢だ……
「黙ってねぇで、早くチビ達を離しやがれデカブツがァ!」
「何度言ったら分かる。俺は人攫いじゃねぇ!」
「誰がチビのガキだって言うんッスかァ!」
モモのやつ! はぁ……
「ドレイク! モモの足を全力でハグしろ!」
「えぇ、あ、うん!」
「ちょ! ドレイク、何をするッスかぁぁぁ、うわぁ」
あちゃあ、頭からしっかりと転けたな……
モモが盛大に転けたタイミングで俺は勇気ある兄ちゃん達に向かって忠告してやる。
「お前ら、モモにチビだの、ガキだのって言ったが……悪い事は言わないから謝って逃げろ。完全回復したモモがキレたら、マジに面倒くさいからな」
ただ、俺の優しさは響かなかったらしい。ドレイクのハグから脱出したモモは話し合いという概念を拳と膝でブチ砕いていった。
「モモ、それくらいでやめとけよ? 流石にやり過ぎるとやばいぞ? それに俺でも担げるのは4人までだからな」
「先輩は優しすぎるんッスよ。いいッスか! こいつらはモモを可愛過ぎるお子ちゃま扱いしたんッスよ!」
可愛いなんて言ってたか?
「うーん。まぁ、とりあえずやめとけって。ドレイクの前でやり過ぎると嫌われちまうぞ?」
モモがドレイクに視線を向ける。ビクッとした後で左右に首を動かしてから俺の後ろに隠れる。
その様子にモモが口をあんぐりと開ける。
「モモがドレイクに怖がられたじゃないッスか!」
その後も荒れ狂ったモモに兄ちゃん達がボコボコにされてた。
俺はドレイクと近くにあった屋台で串焼きを買って食べながらモモが止まるまで待つことにした。
モモが止まってから、兄ちゃん達に話し掛けてみたが「覚えてろよ……」「もう無理……」とちゃんと意識があるみたいなんで、ホッとした。
「とりあえず、回復屋に連れてってやるか……このまま放置したら逆恨み間違いなしだからな」
奴隷商のリオから教えてもらった回復屋に到着すると、カウンターのお姉ちゃんが話し掛けてきた。
「ようこそ、治療師ギルドへ。どのようなご用件でしょうか……」
はぁ……どいつもこいつも、人の顔を見る度に固まりやがる。本当に失礼な奴らだな。
「いきなり悪ぃんだが、こいつらを治してやってくれないか? 多分、頭をかなり打ってるはずだから、頼む」
最初は引き攣った表情を浮かべてたお姉ちゃんも、しっかりとゴル金貨を見せたらあっさりと営業スマイルを見せてきやがった。
まぁ、示談金ってことで、勇敢にもモモと喧嘩して生き残った兄ちゃん達には許してもらおう。
俺はモモとドレイクを連れて本来の目的地である商業ギルドへ向かう。
「はぁ、先輩は本当にお金を無駄にするッスから信じられないッスよ。ドレイクはこんなダメな先輩みたいになったらダメッスよ」
「え、でも……モモ姉もマスターもスゴいから、どっちかみたいになれたら、嬉しい……」
「モモ、あんまりドレイクを困らせるなって、何より、ぶっ飛ばしたのはお前なんだからな……わかってんのか?」
「相手が悪い場合は無実ッス! むしろ、モモは相手が誰でも、敵は仕留めに掛かるようにママから言われてるッスからね!」
残念な胸を張るモモに俺は無言で溜め息を吐いた。
カナミンはなんで、娘をバトルジャンキーに育ててんだよ。教師ならもっと大切なことを教えてやれってんだよ……
俺は恩師であるカナミンの性格を思い出してから、更に溜め息を吐いた。
「まぁ、モモの母ちゃんはカナミンだから、しゃあないか」
「なんでそうなるんッスか!」
「だってよぅ? カナミン、つまりお前の母ちゃんに言われた言葉ってのがな──」
『いいか、お前等ッ! 人生は一度しかない! だから覚えておけ! 私が好きな言葉ベストスリーだッ!
「力は見た目に非ず、拳に有り!」
「弱者は鍛えて強くなれ!」
「一発もらったら、100倍返し!」
本気で生きて、理不尽なんてやつは、力で全部ブッ潰せ! 私はいつでも相手になってやる!』
「わかるか……これが最初の挨拶だからな? 正直、俺は呆れたからな」
「そんな先輩はママに喧嘩を売って、ブッ飛ばされたんッスよね?」
黒歴史だな。当時172cmの俺は喧嘩に明け暮れてたのは事実だからな……ただ、身長158cmのカナミンにタイマンで完膚無きまでにボコボコにされたからな……問題教師すぎんだよ。
俺とモモの会話を聞いていたドレイクは小首を傾げた。
「マスターとモモ姉を倒せるカナミン様はスゴい……」
純粋なドレイクの返事が眩しすぎる。
そんな俺達は、寄り道をしながらも昼過ぎには、目的地である商業ギルドに到着した。
お読みいただきありがとうございます!
もし少しでも『蛍とモモの掛け合いが面白いな』『続きが気になる』と思ってくださったら、ページ下部の【☆】や【ブックマーク】で応援していただけると、ハゲみになります……!(毛根的な意味で)
☆ギャグが笑えなくても、クーリングオフは勘弁してください。




