29話
俺とモモに奴隷君はその後、騎士団で一晩を過した。
俺的には部屋を分けてもらうつもりだったんだが、モモから全力で否定された。
「先輩はもしも、モモに何かあったらとか考えないんっスか! モモといるのが嫌になったんッスか!」
モモが前よりも困ったチワワみたいになってる気がするのは俺だけか……
「わかったから、待ってろ……話してくるから」
※モモ(夏波 李)視点──
先輩は本当にお馬鹿ッス! なんでいつもあんなに鈍感なんッスかね。
今回もアルムさん達を甘やかしたりして、許しちゃうなんて、本当にありえないんッスよ。
モモは知ってるんッス。アルムさんは間違いなく先輩に色目を使ってるんッスから、先輩は鈍感だから気づいてないみたいッスけどね。
ただ、アルムさん達と揉めてもメリットがないッスからね。
それでも、モモからしたら大ピンチなんッスよねぇ。
今までは、先輩に興味を持つ人なんていなかったッス。
いたとしても、ずっとモモが頑張って遠ざけて来たのに、こっちの世界に飛ばされてから本当に踏んだり蹴ったりッスよ。
「はぁ……先輩は本当に鈍感で嫌になるッス……嫌いって意味の嫌いじゃないッスから……あぁ、誰宛ての言い訳を口にしてるんッスか、ウチ!」
「……」
「何を無言で見てるんっスか! 奴隷君も危機感を持つッス! もし先輩がモモ以外の人と恋仲になったら、先輩がいなくなるかもしれないんっスよ!」
「えぇぇ……でも、先輩様だったら、そんな事はないと思います……」
「ダメッスよ。奴隷君……先輩を先輩と言っていいのは、モモだけッス!」
「えぇぇ……えっと、なら……なんて呼べばいいですか……」
「ふっふっふっ! モモが教えてあげるッス! いいッスか──」
モモが奴隷君に呼び方を教えていると先輩が帰ってきたッス。
奴隷君には悪いッスけど、先輩を先輩と呼んでいいのはモモだけッスからね。
「おい、2人とも大きい方の部屋を支部長さんが用意してくれたからいくぞ」
「先輩! 待つッス! 今から奴隷君が大切な発言をするッスから、しっかり聞いてあげるッス!」
「なんだ? 大切な発言って」
さぁ、奴隷君! しっかり先輩に言ってやるッス!
「お、おかえりなさいませ……ご、ご主人様……も、もえ……もえ……」
「待て! とりあえず、待て……モモ、説明しろって、なんでいきなり秋葉原なんだよ……」
「先輩、決めつけはよくないッス! 秋葉原とか言わないんッスよ! 何故なら、奴隷君は大阪難波系なんッス!」
「はぁ……お前なぁ、見てみろって、完全に混乱して困ってるじゃねぇか?」
それから、先輩は必死に奴隷君に呼び方を説明してるッス。
先輩が必死に説明して、最初はビビってた奴隷君も返事をするようになったッスね。
あんまり教えたくないッスけど、先輩って普段から話しにくい雰囲気を出してるんっスよね。
先輩はこうしてあげないと相手と上手く話せないッスから、本当にモモがいないとダメな先輩ッスよ。
「だからな、いいか? 俺をご主人様なんて呼ばなくていいんだからな?」
「え、あ、えっと、分かりました……ご主人様」
「だぁ、モモ! 何とかしてくれ!」
仕方ないッスね。
「奴隷君!
モモを今日からモモ姉!
先輩をマスターと呼ぶッス!
先輩もマスターなら問題ないッスよね!」
「はい、マスター……モモ姉……」
お、奴隷君が上手く言えたッス。さすがモモッスね。
「はぁ……わかった。それでいいから部屋を移動するぞ。案内の為に部屋の外でアルムさんが待ってるからな」
ムッ! またアルムさんなんッスか! やっぱり先輩を狙ってるようにしか見えないんッスよね。
でも、モモはいつから、こんなに嫌な子になったんッスかね……
違うッス……モモのママも言ってたッス。
先輩みたいな人には、とりあえずライバルを作らせない!
先輩の良さを一番知ってるモモだけを見るようにさせる!
ママもパパをネックロックとチョークスリーパーでガッツリ捕まえたんっス! 頑張れモモ!
※モモ視点──終了
※奴隷君視点──
モモ様と2人きりで放置された。やっぱり捨てられるのかな……最後にたくさん食べれたの嬉しかったなぁ。
「はぁ……先輩は本当に鈍感で嫌になるッス……嫌いって意味の嫌いじゃないッスから……あぁ、誰宛ての言い訳を口にしてるんッスか、ウチ!」
モモ様は、すごく元気でいつも先輩様と楽しそうに喋ってる。
ただ、たまに分からない言葉がある……
「何を無言で見てるんっスか! 奴隷君も危機感を持つッス! もし先輩がモモ以外の人と恋仲になったら、先輩がいなくなるかもしれないんっスよ!」
「えぇぇ……でも、先輩様だったら、そんな事はないと思います……」
「ダメッスよ。奴隷君……先輩を先輩と言っていいのは、モモだけッス!」
「えぇぇ……えっと、なら……なんて呼べばいいですか……」
「ふっふっふっ! モモが教えてあげるッス! いいッスか──」
モモ様は、なんでも知ってた。だから必死に言われた言葉を覚える事にした。
「いいッスか、奴隷君にはまだまだ! 先輩との距離感があるッス! むしろ……あれッス! 月とスッポンの住んでる池くらいのとんでもない距離感なんッスよ!」
月とスッポン? また知らない言葉だった。でも次に言われた言葉はもっと分からない言葉だった。
「だから、奴隷君が覚えないとならないのは、モモと先輩がいた日本で誰もが仲良くなれる魔法を覚える事にあるッス!」
魔法! 本当に魔法が使えるの……モモ様は魔法使いだから、騎士様を一撃で倒したのかもしれない。
「いいッスか、魔法の言葉は『おかえりなさいませ。ご主人様、萌え萌えきゅん♡』ッス!」
まったく分からなかった。それでも何回も言わされた。
先輩様は、ご主人様と呼ばないといけないと何回も心で繰り返した。
「いいッスね。大切なのは、ノリと勢い、そして、真心!……つまり、目指すのは都内じゃなく、大阪難波、オタロードの熱意なんッス!」
よく分からない。でも、きっと大魔法使い様の言葉なんだ。
オオサカナンバ・オタロード様からの教えなんだと思うと秘密の魔法なのかもしれない。だから必死に覚えた。
でも、ご主人様を前にしたら、なんか恥ずかしい……モモ様といっぱい練習したから大丈夫だよね。
「お、おかえりなさいませ……ご、ご主人様……も、もえ……もえ……」
そこで、魔法の言葉は止められた。
怒られると思って怖かったけど、ご主人様は優しく話し掛けてくれた。
それからモモ様に、モモ様をモモ姉……ご主人様をマスターって呼ぶように教えてもらった。
奴隷君って名前も貰えて、優しいご主人様……じゃなくて、マスター様とモモ姉様にずっと使われたい……少しわがままな願いも素直に思える日に感謝します。
※奴隷君視点──終了
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