28話
正直、腹が空いて夕食を食べたかっただけなのに、大事になったな……まあ、よく分からんが皆の腹が膨れたみたいだし良しとするか。
俺はカツサンドと、ドリップしてから冷やしていたアイスコーヒーをブラックのまま飲み干して、胃袋を満たしてやる。
「ふぅ、まったく賑やかな時間だったな……」
そう言いながら、煙草に火をつける。
個人店だから許される店主の一服だな。
まぁ、今の時代はすぐに炎上で、迷惑系警察もどきが集まるが……自分の店でくらい気楽にしたいからな。
「この状況で葉巻をつけるとは、本当に君の豪胆さには恐れ入るね。まだ話し合いもまとまってないのだがね」
「支部長さんは吸うのか?」
「仕事柄ね」
「なら、一本吸いなよ。食後の一服は至福だからな。他には代えらんねぇ良さがあるからな」
ついでに、文句を言いそうなイケメン眼鏡にも勧めてやる。
2人とも煙草というか、葉巻を吸うらしい。逆に言えば、煙草って品物がこちらにはないらしい。葉巻があるなら、煙草も作れよ異世界!
「これは間違いなく売れますよ! ウチの商会で独占契約をしませんか!」
「だから、商業ギルドを無視した取引はやめてくださりますか……ブルーさん?」
本当に成長が見えねぇ、ダメなブルーベリーだな……
そんな2人は放置で支部長と煙草を吸いながら話を進めていく。
「君への疑いは既に晴れた。残念だが、ガストンには騎士団を出て行ってもらう。それを詫びとして許してもらえるかね?」
「そうか、あいつはクビになるのか……」
「いや、斬首まではしないね……それを君が望むとなると、話が変わるがね」
「いや、仕事を辞めさせられることをクビって言うんだ。誤解させて悪いな」
その後は、【店舗収納】をオンにして、取り調べ室へと戻り、話し合いがまとめられる。
奴隷君を正式に俺の奴隷にする場合は、登録料が掛かるらしく、最初は断ろうとしたが……断ることができなかった。
「ふむ。奴隷登録をしないとなると、野良奴隷や闇奴隷扱いになるから、オークションにかけるか、強制労働先の鉱山を選ばねばならなくなるね」
断ろうとした俺に支部長がそう告げてきた。正直、納得できなかったが、奴隷には厳格な規則があり、それだけは曲げられないとはっきり言われる結果になった。
正直、俺が買ってから自由にするって話だから、すんなりとそうしてほしかったんだがな。
「はぁ、話は理解した。支部長さん、それで構わないから登録ってやつをしてくれ、その後で奴隷から即解放するから、その手続きも頼む」
支部長が頷くと、奴隷君が慌てて俺の前で頭を下げてくる。
「お、お願い……行く場所ないです……捨てないで……」
「はぁ、いいか!」
「待つッス! ここはモモに全部任せるのが、一番ッス!」
はぁ……
「いいッスか! “奴隷君”から“奴隷じゃない君”になって、先輩とモモと働いてお腹いっぱい食べるッス! モモがしっかり仕事は教えてやるッスよ!」
はぁ……奴隷君、俺とモモの顔を見ながら困ってるじゃねぇか。
「ふぅ、とりあえずだ! 奴隷君のままだと、俺もモモも、気分よく働けねぇから、どっちにしても解放はする。いいな?」
「は、はい……」
話が決まり、明日の朝に騎士団に奴隷商から人を呼んでもらえる手筈になった。
奴隷君の件はこれで終わりだ。
ただ、ここから支部長の表情は険しくなった。理由は……まあ、あれだ騎士団の支払いについてだ。
「……大男君、正直に言って申し訳ないのだが、何とかならないかね……」
支部長の言葉はテーブルに置かれたワインやブランデーなどの金額を鑑定したブルーベリーの2人が書いた鑑定結果のせいだ。
全部で“ゴル金貨”が数百枚って話になっているらしい。
「まぁ、そうなるよな……別に俺は最低金額を保証して貰えれば構わないんだが」
「最低金額でも、騎士団全体の資金が傾く程の金額か……いっその事、アルム達を奴隷として引き取るかね?」
怖ぇことをサラッと言い出したな……しかも、目がマジじゃねぇか。
「なら、奴隷にしてから解放、再雇用して今の地位を与えるって条件で金額を減らすから、無茶苦茶言わないでくれ、流石に心臓に悪いからな」
支部長からの提案に俺よりもその場に呼ばれていたアルムさん達の方が絶望の表情を浮かべてたな。
当然ながら、俺の発言に安堵の表情を浮かべてたが、モモが交渉相手だったら、全員従業員になってたかもな……
そこから交渉が続いていき、騎士団からはゴル金貨を50枚受け取る事になった。
本来の支払い額よりかなり減ったが、俺からすれば最低限ってやつだから問題なしだな。
「何! 問題なしみたいな顔をしてるんッスか! 先輩は甘いッスよ! こんなの立派な脅迫じゃないッスか!」
モモ、頼むから静かにしてくれ……話がまとまらなくなるじゃねぇか。
更にイケメン眼鏡が加わって本当に騒がしくなったが、支部長が別の提案を出してくれた。
「エレガ副長。少し黙りなさい。実際に脅しと取られても仕方ない話なのは事実だ。ならば、騎士団からも商業ギルドへの推薦状を出すというのはどうかね?」
「推薦状? いや、金は貰ったし……爺さんからの手紙もあるからなぁ?」
「アッラノーマ氏の手紙が信頼に値する事は理解している。ただ……この『ライム』では、騎士団も信頼では劣らないだろう。この街を拠点にするなら悪い話ではないと思うがね?」
「はぁ、モモ? ここが落とし所だ。いいな?」
モモは納得してない感じだったが、頷いてくれた。
結果だけをまとめれば、アルムさん達の飲食費と騎士団へのカツ丼とカツサンド代を込みでゴル金貨50枚。
騎士団から商業ギルドへの推薦状、奴隷君の奴隷登録に奴隷解放の手続きになった。
本当に手続きってやつは苦手だ。ただ、日本に帰るにしても、こっちに居座るにしても拠点は必要になるだろうから、悪い話じゃねぇな。
ただ、問題は奴隷君の名前だよな。モモみたいに“奴隷じゃない君”なんて、俺は呼べねぇぞ?
お読みいただきありがとうございます!
もし少しでも『蛍とモモの掛け合いが面白いな』『続きが気になる』と思ってくださったら、ページ下部の【☆】や【ブックマーク】で応援していただけると、ハゲみになります……!(毛根的な意味で)
☆ギャグが笑えなくても、クーリングオフは勘弁してください。




