27話
店のテーブルに並べられた大量のサラダボール。中身は、カツ丼なんだが違和感しかないな……
「先輩……流石にこれって?」
「モモ、今更だ。しゃあねぇだろ? 流石に丼屋じゃねぇから、丼も店に25個しかねぇんだよ」
丼の数が足りない為、サラダボールにミニカツ丼を大量生産って形にした。
カツは通常サイズ、蓋もつけれた。ただ、米が少なく感じないかの方が心配だな。
「すまないが、大男君? この蓋を外せばいいのかね?」
全員が沈黙する中で、支部長が一番最初に質問をしてきたので食べ方を教える。
奴隷君にもスプーンを渡した為、全員の前にも同様にスプーンを並べてある。
海外の観光客から箸が使えないなんて言われるのは、過去の職場で日常茶飯事だったからな。
そうして、支部長が蓋を開き、驚いた表情を浮かべる。
「肉料理かと思ったが、卵料理かね?」
「揚げた肉を卵で閉じた料理だな。まだ熱いかもしれないから気をつけて食べてくれ」
そこまで説明を終わらせたタイミングで、モモにぶっ飛ばされたイケメン眼鏡が慌てた様子で走ってきた。
「何をしているんですか! サンセル支部長、先程も言いましたが勝手な行動は控えてください!」
「わかってるつもりだよ。ほらエレガ副長。君の分だ。とにかく食べてみないかね? 我々も今から食べるところだからね」
「いけません! 毒味もなく、罪人の作ったものを口に運ぶなど!」
「口を慎みなさい! エレガ副長。大男君は確かに騎士団の者と揉めた……だが、話を聞けば、ガストン警備兵長側に問題があった事は事実だ。違うかね?」
「……ですが……」
「何より、大男君の料理を既にあそこにいる2人が食べている。見ていたが、選んで渡した様子もない。私も先に並べられた物から一つ選んだだけだよ?」
そんなやり取りが繰り広げられ、俺は我慢できなくなり、声を出した。
「おい! 冷めちまうし、時間が経つとべちゃべちゃになるから、せめて蓋を開けてからにしてくれ!」
全員が驚く中、モモだけが何故か溜め息と残念な視線を俺に送っていた。
ただ、蓋を開けてから、ブルーベリーの2人は本当に早かった。
味が“うんたらかんたら”。
食感が“どうのこうの”。
斬新で“どうちゃらこうちゃら”。
褒めてるみたいだが……食べながら喋るから、マナーは残念賞だな。
支部長とイケメン眼鏡も無言だが、しっかり食べてるし、他の兵士連中も代わり代わり食べに来たな。
アルムさんもちゃっかり食べてるな……あの人、俺と同じで話を聞かれる側じゃなかったか……自由すぎるだろ騎士団。
「先輩! モモと奴隷君におかわりッス!」
「え? モモ、お前まだ食べるのかよ?」
「当たり前ッスよ。久しぶりの日本の味ッスからね。それにモモも奴隷君もまだまだ育ち盛りッスからね」
色々言いたいが、モモはもう伸びないだろうな……横に伸びたら……いや、やめよう。女性の中には悪い考えをすぐに感じ取る人種がいるからな。
「わかったから待ってくれ、米がないからカツサンドにしてやるからよ」
そこにカツ丼を手にブルーベリーの2人が走ってくる。マジに危ないからやめてくれ。
「今のカツサンドとは! 是非に教えて頂きたい」
「待ちなさい! ブルーさん。まだ商業ギルドが確認前の品ですよ! ましてや、この方の知識は財産です! それを勝手に複製、再現して売ろうとすれば、商業ギルドが黙ってませんよ!」
また、キャンキャンと始めたか……お座りって教えたら大人しくなるのか?
「あんた達、ウルサイッスよ! 先輩は今、モモと奴隷君の為にカツサンドを作ってるんッスから、黙らないとモモの権限で取引なんてさせないッスよ!」
モモの言葉にブルーベリーが俺の顔を見てきたので、力強く頷いてやった。
“お座り”は無理でも、“待て”は覚えたみたいだな。
それからカツサンドを大量に作る。元々、人数分の米を用意する余裕がなかったからな。
むしろ、持ち帰り用に販売予定だったカツサンドのお披露目ができるから一石二鳥だな。
甘辛いソースにカツを潜らせて、カラシとキャベツでしっかり挟めば完成だ。
「いけねぇ、モモ! 奴隷君はカラシ大丈夫なのか」
「分からないッス」
「カラシ抜きを作るから、待っててくれ」
やらかしたな。ガキだとカラシが食べれねぇなんて、よくあるだろうに。うっかりしたな。
「おい、ブルーベリー! そいつがカツサンドだ。味見してみな!」
俺は先に作ったカツサンドをブルーベリーに試食させる。
また、2人して、言い合いをしてるが無視だ!
カラシ抜きのカツサンドをモモと奴隷君に出すと、奴隷君は何故か、困った表情を浮かべて俺を見てくる。
「なんだ? 腹いっぱいだったか?」
奴隷君は、全力で首を横に振る。
「……あ、あの……なんで食べていいかわからない……食べたら、何をすればいい……?」
「なぁ、考えるより食べねぇか? 玉ねぎを沢山剥いて、沢山米を盛って、立派に働いたんだ。腹いっぱい食べてもバチは当たらねぇって、な?」
「は、はい……」
カツサンドを手に取って、頬張る奴隷君を見て、俺は悲しくなった。
年齢で考えたら、奴隷君は10歳くらいにしか見えないよな。
理由があるにしても、ネグレクトすぎんだろうが、世知辛いとかそんなレベルじゃないよな。
「どうだ! 全力で食うってのは悪くないだろうが?」
「うん……あ、はい……」
「先輩……笑顔が下手くそ過ぎるッス。世間では顔面凶器の恐喝スマイルって誤解されるッスよ?」
そこまで、言われて俺はモモの皿からカツサンドを一つ掴み、口を開けて齧り付く。
「あぁ! モモのカツサンドッスよ!」
「いいだろうが? 恐喝スマイルだからな、しっかり食べないとな」
その後またカツサンドを大量に作る事になる。
理由は支部長からの依頼で「他の部下にも食べさせたいのだよ。頼めるかね?」って言われたからだ。
イケメン眼鏡も、文句を言わない様子だったから、まぁ問題無しって感じなんだろうな。
そう言えば、俺……カツ丼食べれてないじゃねぇか……やっちまったなぁ。
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