21話
チンピラ達を連れての移動は1日で終わり、食事なんかは文句を言わずに完食している。
正直、捕まってる立場で“おかわり”を要求された時は驚いた。
長いようで短い道中だったが、無事に首都『ライム』に辿り着けた。
だが、アルムさん達との時間も終わるってことで、賑やかな時間は悪くなかったな。
例えるなら、若い頃に迷惑を掛けたコンビニ前で屯してた頃みたいな気持ちになったしな。
「先輩! 見るッスよ。デカい壁があるッスよ! 大阪城もスッポリサイズッス……」
「モモ、例えが分かりづれぇよ……確かにデカいな……ってか、大阪城より、通天閣だろ、あの高さは?」
「先輩は大阪城を馬鹿にするんッスか! 日本一なんッスよ!」
「いや、どっちも例えが関西限定すぎるだろ……」
俺達の目指す首都『ライム』……とにかくデカい。
日本人なら東京ドーム何個分とかで例えるんだろうが……東京ドームってサイズが分かんねぇ……
「ホタル殿? どうしたんだ、まだ半日は掛かる距離なんだぞ?」
「え! アルムさん。まだ着いてないのか!」
「当たり前じゃないか? 首都『ライム』は陸の貿易拠点だ。だからこその防壁であり、商人なら“ライムの防壁が見えたなら、荷を確かめよ”と教わるくらいには、到着まで時間が掛かるからな」
俺の到着したって感覚が間違ってたらしいな……
その場で一度、休憩を挟み、その後の半日は馬車を走らせ続け、俺達は念願の首都『ライム』へと辿り着けた。
「辿り着けたはいいんだが……アルムさん、この列を並ぶのか?」
俺の視線は真っ直ぐに続く馬車の列に向けられていた。
だいぶ先に巨大な門が存在し、すべての馬車がそこを目指して並んでいるらしい。
「これ、あれッスよね? パーキングエリアのトイレでよく見るやつッスよ」
「モモ、熱でもあるのか? なんか、今日は分かりづらいぞ?」
「失礼ッスよ! せっかくモモがジャパニーズジョークで先輩を和ませてあげてるのに、気づかないなんて、先輩は日本の心を忘れたんッスか!」
指をバシッと俺に向けられてもなぁ。
正直、最初に決めた1年以内に日本へ戻れるかってのが一番の問題なんだよな。
「なぁ、モモ。仮に1年以内に日本に戻れたら、どうするんだ?」
「え? 決まってるじゃないッスか! まずはその間に溜まった税金を税務署の奴らに払うッス。チッ!」
盛大なリップ音だな……ただ、他人事じゃないな……戻った途端に、固定資産税だの、健康保険料だのがきたら……あぁ、これ破産だわ。
「なんか、日本に戻るのが憂鬱になってきたなぁ……」
「先輩って変に真面目ッスよね……」
そんな会話と同じように馬車の列も前へと進んでいく。
数時間が流れ、その間、馬車には売り子達が果実や干し肉にパンといった食べ物から、木を彫って作ったブレスレットや石を削って整えたアクセサリーなどを売りにきた。
売り子がガキってのは、現代日本に生きていた俺からしたら、あまり馴染みがないが、世界で見れば当たり前だと、昔に言われたことがあったっけなあ。
当時の俺は「日本から出ねぇ! 何故なら、日本生まれの日本人だからな!」などと、俺が唯一教師と認めた社会教師に対して言ったんだったな……
「そんな俺は海外どころか、異世界デビューなんだよなぁ、先生すまん。日本から離れないはずが嘘をついちまったな……」
空を見上げながら、俺はそう呟いた。
「って、先輩ッ! 何、モモのママを勝手にお星様にしてるんッスか! しっかり先輩の店まであの日も車で送ってもらったッスから!」
俺に全力の猫パンチを繰り出すモモ。
このモモが俺の恩師で社会教師の夏波こと、カナミンの娘なんだよな……はぁ、なんでこんなに懐かれたんだかなぁ?
そんなやり取りを見ていた奴隷のガキ……いや、ガキって言い方もあれなんだが、未だに名前も発語もありゃしねぇ……喋れないって訳でもなさそうだから、本当に困っちまったな。
「なあ? お前は家族とかはいるのか?」
俺は奴隷君に話し掛けるが首を横に振るばかりで、やはり声は返されない。
そうして、時刻は夕暮れに差し掛かる。昼に着いたはずの『ライム』だったが、中に入れないまま扉がゆっくりと閉ざされていく。
「おい、アルムさん! 門が閉まっちまうぞ?」
「落ち着くんだホタル殿。時間が来れば門は閉められるのは当然だろう? こればかりは例外なしだからな。すまないが我慢してくれ、騒ぎはマズいからな」
アルムさんが説明をしてくれていると俺達の馬車から見て2つ先の馬車から武器を手にした男達が門に向かって歩いていくのが見えた。
風貌からも冒険者って連中なんだろうが、アルムさんが何故か、額に手を当てて困った表情を浮かべ出す。
「どうしたんだ? アルムさん」
「いや……あの行為のせいで問題に巻き込まれたと思ってな……本当に……」
それから数分もしない間に門側から叫び声と戦闘音が響き出し、あっという間に収まる。
先頭側からは、ざわめきと困惑の声が度々聞こえてくるが、アルムさんはただ「何があっても絶対に我慢してくれ、ホタル殿」と懇願するばかりだった。
俺はとりあえず、頷いてその場に座る。
そうして、すぐに俺達の馬車に向けて数人の武装した兵士達がやってくる。
その内の1人が俺を睨みつけると徐ろに指を伸ばして降りてこいと指を動かす。
アルムさんが声を出そうとすると男は大声で「早く降りろッッ!」と威圧的な態度を見せてきた。
イラッとしたが、アルムさんとの約束もあり、我慢して、返事を返す。
「はいはい。降りるから待ってくれ」
俺が馬車から降りると同時に鎧男から腹に向けて拳が放たれる。
俺の腹部に拳が当たると鎧男はニヤッと笑みを浮かべたのがしっかりと確認できた。
だから、俺もニヤリと笑い返してやる。
「正当防衛だ……一発だろうがなんだろうが、100倍返しだかんなッ! 鎧野郎がぁぁぁッッ!」
鎧男の首部分に手を伸ばし掴むと力任せに引っ張り、鎧を着ている腹部に向けて握った拳を叩き込む。
俺も痛ェが、相手はもっと痛ェよなぁッ!
当然、俺の拳からは血が流れるが、鎧男の腹部もしっかりとベコベコにしていく。
最初こそ、笑っていた鎧男の仲間達も繰り返される俺からの攻撃に慌て出していき、止めに入ってくる。
「やめろ、キサマ!」
「何を! 早くそのハゲを捕まえろ! ガストンを助けるんだ!」
「俺はハゲじゃねぇ! ベリーショートだ。あとなぁ……漢の喧嘩に横槍、突っ込んでんじゃねぇぞ! 馬鹿野郎ッッ!」
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