18話
馬を休ませる為の休憩を取るという名目で始まったスライム料理大会……正直、青色の鍋ってなんだよ……
俺の視線の先で数人一組でスライム鍋に野菜や魔物の肉を煮込む兵士連中。
「いやぁ、久しぶりだな。スライムなんて普段食べないからな」
「だな。お、この野草も入れると美味そうだな」
兵士連中の楽しそうな会話を聞いてもヤバそうな雰囲気しかないんだが、マジに大丈夫なのか?
「先輩、モモにあれだけ言ったんッスから、食べるんッスよね! みんなが作った自信作でどれが一番か決めてあげるんッスよねぇぇぇ!」
モモが腹から声を出した瞬間、アルムさんを含む兵士連中が何故か俺に視線を向けてきた。
いやいや、なんだよ……そのマジな視線!
「聞いたか、一番を決めるってよ……つまり、一番になれば、酒が貰えるかもしれないぞ!」
「なら、オレの作ったスライム汁が一番だな! あのキラキラしたボトルの酒はオレが貰うぞ!」
「馬鹿言うなよ! オレらのスライムスペシャルが一番だっての!」
いやいや、“スライム汁”とか“スライムスペシャル”とか言われても、結局スライムじゃねぇか!
「ホ、ホタル殿、私が作ったスライムスープも食べてくれるだろうか? 我々は皆、新人の頃に嫌という程作ってきたから、食べれることは保証するぞ!」
そんな保証はノーセンキューなんだが……はぁ。
「安心するッスよ、先輩。モモが骨は拾ってあげるッスから、お腹いっぱい食べていいッスよ」
ただ、このままだと、ただ酒を渡さないといけなくなるな? しかも、ショーケースの酒を狙ってやがるしな……しゃあねぇな。
「アルムさん。少し店を出すから離れるぞ」
「え、ホタル殿! まさか、既に一番のスライム料理を見極めて、勝利の美酒を取りに行くのか!」
なんでそうなるんだよ。流石にその考え方はダメだろう。
「違う。せっかくスライムなんて食材を手にしたんだ。俺が参加しても問題ないよな?」
俺は小さな器に入れたスライムを手に、少し離れた位置で【店舗収納】をオフにする。
カフェレストラン『Gold Rush キンザン』が一瞬で目の前に現れるたびに思うが、店の中にいた場合、どうなるんだ?
「いや、考えるのはやめよう……煎餅みたいな自分を想像したら、なんか虚しいからな」
すぐに店に入り厨房に立つ。
フライパンを手に取り、静かに俺は持ち込んだ食材を見つめる。
「男は度胸、女は愛嬌ってか……よしっ!」
リーチインから、タケノコ、椎茸、ヤングコーン、白菜といった野菜を複数選んで取り出していく。
今回はすべての野菜を一口サイズにしていき、火が通りづらい野菜には切れ込みを入れる。
白菜はそぎ切り、人参は短冊切りと、食材に合わせてカットしていく。
すべての野菜をカットして、次にウルフ肉をウォークインから取り出して一口サイズにカットする。
正直、ウルフ肉が豚肉と同じ味だった事実に驚愕したんだよなぁ。野生のウルフが豚肉って肉屋泣かせだよなぁ……
それから、ブラックタイガーを取り出す。
「エビを使うのはルール違反な気がするが、やっぱり必要だよな?」
フライパンに油を熱して、ブラックタイガーとウルフ肉を入れて、色が変わるまで炒めていく。
ジュゥゥと、炒めるたびにフライパンから香りが上がっていき、俺はタイミングを見計らって、白菜の白い部分と人参を加えて更に炒める。
白い煙に食材の香り、すべてが素朴ながら絡み合っていき、最後にタケノコ、キノコ、ヤングコーンを入れて追加の油を回し掛けていく。
そうしたら、合わせ調味料を加える。
「やっぱり味付けって言ったら、砂糖、鶏ガラ小さじ1。醤油、酒、そして忘れちゃならないオイスターソース、こいつらを大さじ1と水だな」
やっぱり、こういう料理は気楽でいいな。
そこに、うずら缶を開けて、好みの量でうずらの卵を入れる。
このうずらの卵があるか無 いかで、食べる時の贅沢感が違うからな。
「あとはひと煮立ちさせて……スライム……はぁ、なんか普通に片栗粉を使ってしまいたくなるな……」
俺の本能は片栗粉に太鼓判を押しまくってるが、今回は“誰のスライム料理が一番なのか”って話だからな、やるか!
片栗粉の代わりにスライムを流し込み、煮立たせる。
合わせ調味料がオーシャンブルーのスライムと混ざり、なんとも言えないファンタジー感ゼロな色合いになっていく。
「色が青汁じゃねぇか! オーシャンブルーのスライムさんよぅ……まじか」
俺は恐る恐る、小皿にそれを装うと、スプーンで口に運ぶ。
その瞬間、俺は驚かされた。
色は完全な青汁なのに、しっかりと中華丼の餡になってるだと!
レトルトパックの米を取り出して温めてから、器に移して、俺は具だくさんの餡を掛けていく。
「これは味見だ。いただきます!」
俺がスプーンを口に運ぼうとした瞬間、店の扉が勢いよく開かれる。
「ホタル殿! 待ちくたびれて皆できたぞ!」
「ホタルのダンナ! オレらが一番ですぜ!」
「先輩! モモを置いていつまで待たせる気ッスか! 引きこもりは、毛根だけがお約束ッスよ!」
俺は食べようとしていたスプーンを止め、溜め息を吐く。
「ったく、もう少し待ってろって? それに誰のスライム料理が一番かを決めるなら、俺も参加だ!」
全員から「えぇぇ!」と声が聞こえたが知らん!
「それと審査だが、俺が参加するのに審査は無理だからな? 料理をしてないやつに頼むとしようじゃないか!」
視線に気づいたモモがそっと身を引いたがしっかりと捕まえる。
モモが「一人で審査はおかしいッスよ! 先輩!」と言ってきたので、馭者さん達にも参加してもらい、審査の結果は俺のダントツ勝ちだった。
ただ、モモと馭者さんから「アルムさんの料理が……無理」と全会一致で最下位だった事実に逆に興味が湧いた事実は黙っておくことに決めた。
とにかく、今日は、ショーケースから酒が無くならなかった事実だけで良しとしよう。
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