151話
ライムで祭りをすることになったまでは、良かった。
むしろ、祭りに関しては俺の狙い通りだと思う。
真面目に今ある問題は、俺がこちらの世界の祭りを知らないってことだ。
マダムピンキーに質問したが、不思議そうな顔をされてから「テルテルボーイのやりたいようになるしかないじゃない?」って、普通に返されちまった。
「うーん、俺がやりたい祭りって言ってもなぁ……」
そんなガラにもなく悩む俺にドレイクとパラが喋りかけてくる。
「マスター、お祭りって、焼きそばも売れるの?」
「組長! パラはポテトがあると嬉しいの!」
「はは、そうだよな! 俺が楽しむ祭りじゃなくて、みんなが楽しめる祭りにしないとな! 2人とも、他に屋台であったら嬉しいって思うやつがあったら教えてくれないか」
「うーん、とね? ドレイクはアボガド!」
アボカドだな……ただ、アボカドは祭りだと難しいか? タコスなら、何とかなるか?
「パラは、唐揚げがいいの〜!」
2人が食べたい物を教えてくれる度にメモを取る。
「モモは祭りなら、かき氷が必要だと思うッス!」
モモも加わると、次第にメモの数が増えていく。
ソマリとポメラも肉串を入れろと大騒ぎだったので、数種類の味を書き記していく。
そうして、大量のメモを一纏めにして、俺は笑みを浮かべた。
「よし! こんだけ色んな出店のアイディアが出たら、あとは話し合いで決めるだけだ。皆ありがとうな!」
それから、商業ギルドに向かい、マダムピンキーに屋台について話していくことになる。
商業ギルドは、多くの商人で賑わっていて、話に来ただけだが、中に入るだけで並ぶ羽目になっちまった。
やっと扉から商業ギルドの中に入ると、すぐにベリーさんが俺に気づいて声を掛けてきた。
「ホタル様。こちらへどうぞ。列に並ばれていた事に気付かず大変失礼致しました」
何故か、いつも以上の低姿勢に俺は呆気にとられてしまった。
「……」
「どうされましたか? ホタル様、何か問題でもありましたか?」
「あ、いや……なんか、いつもより丁寧だから、驚いただけなんだが……」
「それは当然です。此度の祭りはライムの街が主体であり、商業ギルド、冒険者ギルド、騎士団、マタギ衆と三大勢力から、四大勢力になった事実をライムに住む者達に知らしめる意味も含めておりますので」
なんか、やべぇ話がデカくなってやがる……俺はただの祭りでバカ騒ぎをして……いや、今更か……
「とにかく、ホタル様。奥の部屋へどうぞ」
案内されたのは商業ギルドの会議室だった。
室内にはマダムピンキーが待ってましたと言わんばかりに座っていた。
「やっと来たわねぇ? 待ちくたびれたわ、テルテルボーイ! さぁ、何か面白い話があるのよねぇ」
そこから、俺はメモをしてきた内容を説明していく。
マダムピンキーからすれば、予想外の内容だったみたいで、目を見開いて驚いていた。
「スンバラシーーー! 何よ、何なの! 何なのよぅ! 揚げ物と焼きそばはわかるのよ。かき氷って何なのよ! お好み焼きって、何を焼くのよぅ〜! あぁ、衝撃的なぁぁぁインパクトゥゥゥゥゥ!」
テンションが上がったマダムピンキーを見て、俺は眉をヒクつかせた。
商業ギルドで屋台の形と必要な設備を伝えてから、次に騎士団に向かう。
大通りを抜け、そのまま向かった騎士団の前には、騎士が数名立っていた。
ただ、俺の顔を見ても敵意みたいなものは感じられなかった。
「これは、ホタル殿! 騎士団へようこそ! 騎士団本部からホタル殿がいらした際には、ゴードン支部長の下へ案内するようにと指示を受けております!」
気合いの入った声で、騎士団の中へ案内される。
支部長室の前で、案内してくれた騎士が足を止め、扉をノックする。
「ゴードン支部長! ホタル殿をお連れ致しました!」
「あぁ、中へ案内してくれ」
返された返事に騎士が扉を開き、室内に入る。
「よく来てくれたな。ホタル殿、色々と忙しいだろうに、騎士団に足を運ばれたということは、開催費の請求ということでよろしいか?」
「いきなり悪いが、話をするなら、座らせてもらうぞ」
長椅子に座り、俺は心配そうな表情を浮かべるゴードンに説明をする。
「騎士団には、祭りで屋台をしてもらうつもりだ。意味はわかるか?」
「まったく分かりません……えっと、ホタル殿、騎士団に屋台の見張りをさせるという意味でしょうか?」
俺が言葉を間違えたと思ったのか、再確認をされる。
「ちげぇって、騎士団に屋台をしてもらうってのは、そのまんまの意味だ。だから、料理ができる、できないは関係ねぇ。祭りまでの間にしっかりと覚えてもらうつもりだからよ!」
そんな言葉にゴードンは驚いたが、すぐに了承してくれた。ただ、俺も予想していなかったのは、騎士団が屋台での調理を学ぶ間、街の守りを“マタギ衆”に委託すると言い出したことだ。
ただ、話はついたので俺は、ゴードンにその後の予定を伝えることにする。
「一旦、戻って食材と必要な物を持ってくる。だからゴードン、アンタは屋台にぶち込む人員の確保を頼む」
「本当に予想の外側から話を進める男だな、正直、騎士団にいれば異端の騎士として、上の立場に上がれただろうに」
「俺がか? ははは、冗談でも勘弁してくれよ。自分で言うのもなんだが、騎士よりも料理人が性に合ってるからな、ガラでもねぇ仕事はノーサンキューってな」
俺は急いで、店に戻る。
手早く必要な素材をマジックバッグに詰め込んでいく。
「先輩、何してるんッスか? まさか……店の品を転売する気ッスか!」
「モモ、俺の店の品物を俺が売った場合は単なる販売だろうが……ったく、それより、暇なのか?」
「暇ッス! ミノケン君1号も作ったッスからゴーレム用の粘土が無くなって、モモは可哀想に暇人ライフをエンジョイするしかないッスよ」
言ってることが無茶苦茶だな……ただ、暇なら丁度いいな。
追加でカセットコンロを二台引っ張り出して、モモとカイト、焼きそば焼ける君とミノケン君1号を連れていくことにする。
焼きそば焼ける君は、鉄板を装備したゴーレムだけあって、即戦力になるし、ミノケン君は力があるので、マジックバッグに入らないサイズの食材の入った木箱も楽に運べるだろう。
そうして、俺、モモ、カイトの3人で騎士団に出発……と思ったら、ドレイクとパラ、ソマリとポメラ、エスの5人から待ったを掛けられた。
結局、騎士団には大人数で戻ることになり、騎士団の厨房と中庭の二箇所で屋台の練習をすることになった。
騎士団で屋台の特訓が開始されたが、騎士団の奴らは本当に料理をしたことがないらしく、酷いもんだった。
カイトが丁寧に焼きそばの焼き方を教えるが、鉄板にくっついて焦げてしまったり、別の奴はソースが少なく、味が残念だったりと失敗の形は様々だった。
「焼きそば……なんて難しいんだ! スライム鍋なら、完璧に作れるのに!」
「お好み焼きってどうやってひっくり返すんですか! こんな小さな道具で無理ですよ〜!」
「見てください! ホタル殿! 黒くて少し香ばしいですが、唐揚げが出来ました!」
ダメだこりゃ……
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