150話
騎士団の暴走から数日、はっきり言って、騎士団の評価は最悪のままだ。
ただ、ゴードンのやつだけに責任を求める声は少なかった。
理由としては、騎士団の副官が思った以上にやらかしている奴だったからだ。
ゴードンのやつは通行料の値上げを命じていたが、金額に更に上乗せをして、ピンハネをしたり、騎士団の武器番を自身の部下にして、武器まで横流しをしていた。
戦闘で指揮をしていた理由も、武器の使用に関して、帳じりを合わせるように部下達に指示を出していたらしい。早い話がゴードンより野心家野郎だった。
その事実は、マダムピンキーとダイルによって、ライムの街に広められた。
その後のゴードンの謝罪は立派なものだったが、謝罪1つで許される世界なら、犯罪者パーティーになっちまう。
だからこそ、ゴードンの謝罪にはマダムピンキーとダイルにも頼んで、同伴してもらった。
ライムの街にある2大ギルドのマスターが左右にいる事実は住民の怒りを僅かに散らしてくれるだろう。
そんな謝罪は街の中央広場で行われている。
ただ、なんで2人のギルドマスターが立っているこんな場所に俺まで同席させられてんだ。
ライムの街が賑わう中で、マタギとして仕事を終わらせたばかりのサンセルのオッサン達が大人数で戻ってきた。
「なんの騒ぎなのかね!」
騎士団の支部長になったばかりのゴードンが広場に設置された舞台の上に立たされ、左右にマダムピンキーとダイルという異常な状況にサンセルのオッサンがその場にいるすべての人に聞こえるように声を上げる。
ゴードンの謝罪に対して、怒りを顕わにしていた住民達も、サンセルのオッサン達を見て黙り出す。
そんなサンセルのオッサンは、舞台にいる俺達、いや、明らかに俺へと視線を向けてきた。
状況が分からないだろうに、サンセルのオッサンは悩まずに舞台へと飛んでくる。
「いきなり舞台にお邪魔する無礼を詫びるのだよ。ただ、騎士団の支部長が膝を着いている姿に違和感を感じてしまったのだよ。度重なる無礼になるが許してくれると助かるのだよ」
そんな言葉を聞いて、マダムピンキーが微笑む。
「あらあら、相変わらずの熱々じゃないの? まったく、サンセルちゃんたら……ただ、今は仕方ないのよねぇ」
「かぁ……てめぇって奴は、騎士団抜けたなら腹抱えて笑いながら見てろよなぁ! サンセルよぅ!」
「笑いながらなどと……ダイル、流石に笑えない冗談なのだよ」
サンセルのオッサンとダイルが睨み合う中、予想外に口を挟んだのはゴードンだった。
「サンセル……いや、サンセル前支部長……情けない姿を晒すことを謝罪しよう」
「ゴードン新支部長……すまないが、何故この様な形になっているのかね?」
ダイルを無視して、騎士団の前支部長と現支部長が会話を始める。
舞台の周りに集まった住民もその光景を見守っていた。
ゴードンは隠すことなく、騎士団が行った事実と、ゴードン自身が行った行動を語った。
住民達が見ている目の前で語られたゴードンの言葉に見入っていた。
しかし、ゴードンの叫びは、住民の怒りを別のものに変えていた。
ある程度、空気が落ち着いたところで、無言になった広場で俺は仕方ないと声を出す。
「ふぅ……この場にいる奴らから、声が聞こえる奴ら全員に報告だぁぁぁ!」
【身体強化】を喉に集中させ、全身で声を張り上げる。
住民達は突然の声に驚いた様に目を見開いた。
「よく聞いてくれ! ライムの街に馬鹿みたいに仲が悪い三大勢力があるのは、みんな知ってるよな! そんな馬鹿みたいな三大勢力が纏まって祭りをやる事が決まった! 蟠りも、嫌悪も全部纏めて、騒いで酒で洗い流す! そんな祭りになる予定だぁぁ!」
唖然とした表情で俺に注目する住民達に俺は最後の確認をする。
「反対のやつは、今すぐに言いやがれ! 賛成なら、祭りで稼げるやつは稼ぎまくれ! ライムでド派手に騒ぎまくる祭りだぁぁぁぁッ!」
勢いで声に出したが、唖然とされたままだった。
当然、何を言ってんだコイツ? って、目線に流石の俺もハートブレイクしそうになる。
そんな俺の姿を見て、ダイルが笑い出す。
「だははは! ホタルぅ、お前、マジに最高かよ! 見ろよ、見てる連中の顔をよぅ! ただ、参加しないのは自由だ……ただ、祭りを邪魔するなら……冒険者ギルドと敵ってやつだわなぁ?」
それに対して、マダムピンキーが苦言を呈した。
「なんで、そんなに物騒なのよぅ? ただ、テルテルボーイの話には、1つ誤解があるわぁ……三大勢力が仲が悪いだなんてぇ、失礼しちゃうわぁ! でも、祭りは大賛成よ! みんなにも手伝って貰いたいから参加して貰えたら嬉しいわぁ」
ゴードンも立ち上がる。
「迷惑を掛けたこと、深く謝罪する。この場の全員に誓おう! 祭りは騎士団から基本的な資金を出すことになった。再スタートの手助けをライムに住む皆に助けてほしい。頼む」
各々が口にした後に、サンセルのオッサンが口を開いた。
「元騎士団の支部長として、我々『マタギ衆』も祭りに参加させてもらおう。祭り中には、騒ぎも多くなるだろうからねぇ」
その日、ライムの街は分かりやすいくらいに活気づいている。
祭りの準備として、商業ギルドからは各街に正式な参加要請が送られていた。
今のライムは騎士団が通行料を大きく上げていた為、敬遠され始めていたが、陸の商業都市であり、大きな市場が存在している事実と騎士団が通行料を大幅に下げた事実が伝えられることになった。
それにより、祭りまでまだまだ日にちがあるにも関わらず、珍しい品物が大通りや露店に所狭しと並んでいるのがわかる。
朝市にも賑わいと食品の鮮度が戻り、俺は見慣れない食材について、話を聞いていた。
「あら、ホタルさん。いらっしゃい! ほら新鮮なブラットオレンジなんかどう! 真っ赤な果汁たっぷりなのよ」
「お、ホタルの兄ちゃんじゃねぇか! ガラガラボーンの背骨があるんだが、スープにどうだ!」
最近は品薄状態で、シラケた面が並んでたが、本当にいい感じに復活したな。
改めて、安堵しながら買い物を続けてる。
ただ、祭りの準備には、俺も無関係じゃないので、買い出し後は忙しくなる。
俺は祭りを行う企画者側での参加になるので、無駄に色々とやる事ばっかりなのが、本当に面倒クセェ……
言い出しっぺだが、こんなことを考えたらダメなんだろうが、マジにガラでもねぇんだよな。
買い出しを終えた俺はすぐに店に戻る。
店に戻ってから買った食材をしまい、テーブルに腰掛けると、ドレイクとパラが飛びついてきた。
「マスター! おかえり」
「組長! 見てみて、お花!」
「2人とも本当に元気だな。花か、綺麗なのを採ってきたな!」
笑顔を浮かべながら、2人の頭を撫でてから、俺はテーブルに1枚の紙を広げる。
「マスター? なにそれ」
「組長がお絵描きするの?」
「違うぞ。俺ができる範囲で出せる屋台を考えるんだよ。さて、なんにするかな……」
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