140話
二階層の入口に続く洞穴を塞いでいた家の残骸をすべて【店舗収納】で回収すると、『グリーンロック』の面々から無駄に驚かれた。
そうして、二階層の階段を登ると、出口付近で、数人が揉めているような声が聞こえてくる。
「早くどけよ! 二階層に向かうんだからよ!」
「邪魔してるとぶっ飛ばすぞ!」
「うるせぇ! 俺達の仲間が今、二階層で仕事中だからよ、新人は黙って待ってな!」
階段を背にしたガラの悪い男達が、軽装備の冒険者達を止めていた。
なので、背中から蹴りを入れてやる。
「痛てぇ! おい! 蹴りやがったな!」
蹴られた男が俺の方に視線を向けたので、しっかりと足を振り上げてから振り下ろす。踏まれた男には顔面ダイブからの床にキスをさせてやる。
「邪魔だ! 誰だテメェら?」
その後は、何故か武器を向けられたが『グリーンロック』の面々が男達を拘束してくれた。
「騒がせたな、コイツら、二階層で冒険者狩りをしてたらしくてな……悪いが、外まで連れ出すのを手伝ってくれねぇかな?」
レイダの顔見知りだったのか、足止めされていた冒険者達がチンピラ達を連れ出すのを手伝ってくれた。
一階層に上がるとダンジョン内にいた冒険者達が代わる代わるに何があったのかを質問してきて、話を聞く度に、手伝うと言い出してくれた。
俺が思ってた冒険者って奴らは、ただの荒くれ者ってイメージだったが、考えを改めないとかもな……チンピラはチンピラ、冒険者は冒険者ってことだな。
そうして、ダンジョンの外に出ることができた。
それからすぐに、レイダが、ダンジョンに入ろうとしていた複数の冒険者に向けて大声を出した。
「試練のダンジョンを生業にしてる冒険者どもぉぉぉぉ! 足を止めて聞いてくれぇぇぇぇ!
試練のダンジョンだけじゃねぇ、冒険者には、絶対に踏み越えちゃならねぇルールがあるだろう!
なのによぅ! ダンジョンで冒険者狩りを実行した奴らがいやがる! 許せねぇよなぁ!」
レイダの言葉に、ダンジョン周辺の冒険者達から、鋭い視線がチンピラ達に向けられる。
「レイダぁぁぁ! 本当に冒険者狩りなんだな!」
1人の冒険者がそう質問をすると、レイダはしっかりと頷く。
「なら、手足を切って魔物の餌にしちまえ!」
「吊るし首で見せしめだ!」
「早く、やっちまおうぜ!」
物騒な言葉が次々に飛び交い、ソマリとポメラが眠っていて良かったと思った。
怒りを露わにした冒険者達にレイダが返事をするように声をあげる。
「ダメだ! 俺達は冒険者だ! 勝手に始末して終わらせたら、馬鹿共の仲間入りだろうが!
冒険者のルールは冒険者で決める、だからこそ、コイツらをライムのダイルギルドマスターに突き出してやろうと思う! ダイルより残酷なやつが他にいるか? いないよなぁ!」
「そうだ! ダイルに渡せ!」
「ダァァァイィィィルゥゥゥ!」
「ダァァァイィィィルゥゥゥ!」
「「ダァァァイィィィルゥゥゥ!」」
冒険者達からのダイルコールが空気を震わせる。
「落ち着いて聞いてくれ! ただ、数が多い! つまり、コイツらを1人でも逃がしたら、冒険者の恥になるのはわかるよな! 冒険者として生きるこの場の全員が話を聞いてから、逃がしたなんて、笑い話にもならねぇ!
コイツらをダイルの前に運んで、冒険者の恐ろしさを刻み込んでやろうやぁ!」
「俺は付いてってやるぜ!」
「オレらもだ!」
「1人も逃がさねぇで突き出すぞ!」
すげぇ数の冒険者達が、声を上げて仲間を呼びに走り出すと、ダンジョンの町が一気に賑わいだしていく。
ダンジョンに入る前に俺達に薬草を勧めてきた露店のおっさんがこちらに走ってくるのが見えた。
「おい、あんた! ソマリとポメラは大丈夫なのか、かなりヤバい話になってるみたいだが……とりあえず、こいつを飲ませてやれ」
小さな小瓶をおっさんが手渡してくると、ポーションだと教えてくれた。
「そんな物があるのか?」
「あぁ、こう見えて腕のいい薬師様だからな。まあ、普段は薬草しか売る気がないが、今はそうも言えないからな……早くあっちに寝かせろ」
言われるままに、レイダの演説に熱を上げる冒険者達から離れた場所に移動する。
おっさんに指示された場所で2人を横にして、ポーションだという小瓶を手に取る。
すぐに飲ませるか、一瞬迷ったが、俺はおっさんの顔を見ながら質問する。
「なぁ、アンタは家族にもこんな風に薬をやるのか?」
「家族か……家族が今もいたらそうしたんだろうがな……生憎と薬師を極めるために旅に出てる間にな……」
「悪りぃ、嫌な話をさせちまったみたいだな……」
このおっさんは、旅に出て、その間に家族に何かあったんだろうな……疑って、人の傷に塩を塗るような真似をしちまうなんて……
「いや、いいんだって! 旅先で軽く飲んで意気投合した相手が、嫁の親戚だったなんて誰も気づかねぇしな。なんなら、離婚で家まで没収されて、笑うしかないからな。ダァハハハ!」
真面目に聞いて損した気分だよ!
「そんな怖い顔しなさんなって、まあ……間違いは簡単にリセットできねぇし、何より、ガキのために今も払うもん払わねぇとだからな」
突っ込みたくねぇけど、どっちの子供なんだよ……異世界でおっさんの昼ドラみてぇな話はマジに勘弁なんだがな。
そんなこんなで、ポーションを飲ませた結果、2人が目を覚まし、俺は安堵した。
「本当に心配したんだぞ。ソマリ、肩は痛くないか? それにポメラ、悪かったな、頑張ってソマリを運んでくれてありがとうな。何よりも生きてて本当に良かった」
上手く言いたいことが纏まらないまま、俺は言いたいことを必死に伝えていくことにした。
「アンちゃんは、見た目と違って気持ちのいい奴らしいな。ほれ、この薬師ル・ル・ル・ザザ様が作った特製のポーションをくれてやる! 気持ちのいいやつは長生きして欲しいからな。ダハハハ!」
ル・ル・ルが苗字でいいんだよな? おっさんの名前だと似合わねぇな。
「えっと、ザザのおっさん、ありがとうな」
「おう、ほれ、レイダのやつが話を切り上げるみたいだからな、行ってきな! 冒険者の命はいつ消えてもおかしくないからな、だからこそ、後悔なく生きるんだぜ! アンちゃん」
ザザのおっさんに礼をして、すごい数に膨らんだ冒険者軍団と共にライムの街へと移動を開始する。
ダンジョンの町から4時間のはずの道中も30人近いチンピラを連れて歩いている為、更に時間が掛かってしまった。
昼過ぎくらいから歩いて、やっとの思いでライムの門に到着した。
普段ならば、かなり待たされる門の前は何故か並んでいる馬車が少なく、あっという間に俺達の順番が回ってきた。
俺達だけならば、行きと同じように小さな扉側から入れば済む話だが、今回は並ぶ結果になった。
俺達の順番になり、門番がギョッとした顔で視線を向けてくる。
「き、貴様は……」
そんな雰囲気重視の門番からのセリフに溜め息を吐きたくなるが、今回はスルーして、ライムに入りたいと伝える。
「ふざけるな! 冒険者の大軍がいきなり来て、中になんか入れられるか!」
当然の反応なのか? 冒険者だって、パーティー単位で考えたら、そんなに騒ぐほどのことじゃないように思うんだがな。
結局、冒険者達がキレて、新騎士団と揉めて強行突破に近い形で通過することができた。
最後に人数だけはしっかりと記入したから問題はないよな?
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