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14話

 人生初の狼シチュー……いや、ウルフシチューを食べた。

 ただ、不思議と抵抗なく食べれてる自分とモモに驚きを感じた。


 そんな俺の横で腹を満たし、舟を漕ぐモモ。


「しゃあねぇな。おっさん、悪いんだがお開きでいいか? モモが限界らしくてな」


「おう、逆に悪かったな兄さん。アンタのツレが借りてるのは大部屋だが、これだけの技術を見せてもらったんだ。空き部屋を使いな」


「いや、正直に言うが、俺に支払えるような金はないんだ」


「気にすんな。オレの無駄話に付き合わせたせいで、お嬢ちゃんが眠くなったんだろうからな。カアちゃんにはオレが話すからよ。二階の角部屋だ」


 鍵を渡された俺は、主人のおっさんに頭を下げてから、モモを抱えて二階へと上がる。


 部屋の扉を開けて中に入り、俺は深い溜め息を吐いた。


「おっさん……ダブルベッドはダメだろ……ったく」


 モモを寝かせてから、窓の施錠を確認した俺は静かに部屋を出て扉に鍵を掛けた。


 そのまま、一階に戻ると奥さんと主人のおっさんの姿があり、奥さんは呆れた表情を浮かべて片手を額に当てていた。


「まったく、ただでさえ、金払いの悪い客だってのに、なんで空き部屋まで貸すかねぇ?」

「まぁカアちゃん。聞いてくれよ。オレは、まだまだやり甲斐ってやつを見せられたんだよ。だから、今回だけ頼むって」


 そんな客に聞かれたら、ダメな話を大声で話す主人のおっさんは笑っている。


 俺は聞こえない振りをして、外に続く扉を静かに開き、宿屋を後にした。


 ポケットから取り出した煙草に火を灯して、静かに肺へと煙を送り込む。


「ふぅ……どこの世界でも、星ってのは変わらずに光り輝いてんだな」


 真夜中の僅かな静寂を感じながら、煙草の煙を静かに吐き出す。


「ホタル殿ぅぅぅ! 助けてください。このままだと、私はアッラノーマ殿に叱り潰されてしまいますぅぅぅ!」


 なんで、静かな一服ってやつは、いつの時代も邪魔されるんだろうか……正直、その答えだけは本当に謎なんだよな。


「アルムさん……どうしたんだよ? なんで爺さんに叱り潰されるんだ?」


 息を切らせ、泣き出しそうなアルムさんに質問をする。


「ホタル殿が商館から出ていった後、アッラノーマ殿に“詳しい話を聞きたい”と言われ、話したら……」


 突然震え出したアルムさんを見て、とりあえずポケット灰皿に煙草を押し込み火を消す。


「ゆっくり話してくれ、話したらどうしたんだ?」


 話を要約すれば、宿屋で散財した結果を話してから、爺さんに「誰の金か理解してないのか?」と聞かれ、その後のアルムさんの返答が不味かったらしい。


「大丈夫です! 首都『ライム』に帰還すれば、すべてきっちりと支払いができます」


 この一言に爺さんは、怒りが爆発したらしい。


「若いのはいい、若さは愚かさも含めて成長して芽が出るもんだ。だがな……人の金を使い、更に支払う金は後で都合するなどと……馬鹿たれがぁぁぁッ!」


 それから、先程まで説教という名の詰め将棋みたいな言葉責めを食らっていたらしい。


「いや、それって……アルムさんの自業自得じゃないのか? 爺さんに肩入れする気はないが同意見だぞ」


「とにかく、ホタル殿がまだ寝てないなら、商館に呼び戻すように言われて、私は走って来たのだ! さぁ、ホタル殿、一緒に!」


「いや、俺も流石に眠いからな……明日にしてくれ」


「ホタル殿ぅぅぅ! それでは私がまた、叱られてしまうのだぁぁぁ!」


 誰だよ! 爺さんに叱られて怖がるやつを騎士にしたヤツ!


「なら、アルムさん。爺さんは、なんて言ってたんだ?」


「え、アッラノーマ殿は、“ホタル殿が寝ていないなら連れてこい”、“必ずお前が連れて来い、いいな”と言われたが?」


「そういうことだ。さぁ寝るぞ?」


 困惑して騒ぐアルムさんをその場に放置して、俺は宿屋の中に戻った。


 窮屈な大部屋に向かい、窓際の壁にもたれかかり、窓を軽く開いて、煙草に火をつける。


「爺さんも人が悪りぃな……ふぅ……俺が寝てたらって、アルムさんが真面目に叱られてたから、帰す口実にするなんてな。ったく……」


 吸い殻をポケット灰皿に入れて、俺はその場にうずくまり眠りについた。


 朝になり、鳥のさえずりが俺の耳に響くと同時に廊下からはバタバタと足音が近づいてくる。


「先輩! 先輩はケダモノッス! 眠気で意識がないモモを……先輩のハゲネズミィィィ!」


 朝っぱらから元気だが、いい度胸だな。


「朝から誰がケダモノで? 豊臣秀吉とよとみひでよしだぁ?」


 昨晩の流れを説明しながら、しっかりとアイアンフィンガー顔負けの鍛えた指でデコピンを食らわせてやった。


「暴力反対ッス! 訴えるッスよ!」

「お前な、むしろ、冤罪で最高裁からひっくり返されるぞ?」


 そうして、モモの気が済むまでしっかりと、付き合い。落ち着いてから俺とモモはアルムさんと合流する。


「どうしたんッスか? アルムさん、酷いクマッスよ? クマックス直行便じゃないッスか」


「わけのわからない言葉を作るなよ? それより寝なかったのか?」


「いや……ホタル殿が戻ってくるのを夜通し待っていたんだ。不安で寝れなくてな……」


 物悲しげな虚ろな目をするアルムさん。


「先輩! モモだけじゃなく、アルムさんまで! 見境いなしッスか!」


 今回はツッコまずに俺は爺さんの商館に急ぐことにした。


 3人で商館に到着すると、爺さんがパイプを吸いながら、商館の前に立っていた。


「やっと来たか? 若いの。年寄り相手でも、半日は流石に待たせすぎだろう。まったく」


「悪りぃ。寝ちまったんだ」


 爺さんの視線が俺と重なると微かに口元を緩ませた。


「そうか、寝てたなら仕方ないな。アルムの娘っ子が戻らないのも仕方ない話と納得しよう」


 そして、俺達は爺さんと再度、交渉を開始する。


 ただ、気が抜けたのか、アルムさんはへたり込むと、その場で寝てしまった。


 商館の仮眠室で寝かせることになったが、本当にこの人が騎士だってんだから、最初はヤバかった異世界も案外平和なのかもしれないな。

お読みいただきありがとうございます!

もし少しでも『蛍とモモの掛け合いが面白いな』『続きが気になる』と思ってくださったら、ページ下部の【☆】や【ブックマーク】で応援していただけると、ハゲみになります……!(毛根的な意味で)

☆ギャグが笑えなくても、クーリングオフは勘弁してください。

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