137話
ライムの街から、歩いて3時間程の町にソマリとポメラが目的地として決めたダンジョンは存在していた。
そこそこに賑わう町はライムとは違う雰囲気があり、町には小さいながらに冒険者ギルドの支部も存在している。
早朝から歩かされたが、別の町ってのも……いや、3時間程度じゃ何も変わらないな。
ただ、1つ言えるのは町に並ぶ食材が肉ばかりで、野菜が少ないことと、売り子の姉ちゃん達がかなり際どい服で客に声を掛けてる事実だ。
商売相手が冒険者ばかりだからなのか、ナンパをする相手も軽くあしらう様は、強い女性を連想させるな。
「ホタル! キョロキョロしてたらダメだぞ!」
「そうだぞ! 今日はオイラ達とダンジョンなんだぞ!」
珍しいと思いながら、町中を見ていたら、ソマリとポメラの2人からグイグイと手を引かれる。
こいつら、ダンジョン好きすぎるだろ、もう少し露店や食材を見たかったが、帰りにするしかねぇか。
「わかったから、そんなに引っ張るなっての、そんなに急がなくてもダンジョンは逃げねぇだろうが?」
俺の言葉にソマリとポメラが手を引っ張りながら、こちらに振り向く。
「ツルツルのホタルは自分の頭が眩しくて、目が悪いんだぞ!」
「そうだぞ! あんな女がいる店で買い物する気なら、オイラ達がモモに言いつけるぞ!」
「「フン!」」
俺が何したってんだよ……モモの入れ知恵か知らねぇが、店のスタイルまで気にしてたら、買い出しもできなくなるだろうが……
そんな俺の気持ちなんか、お構いなしに、2人は淡々と歩き、次第に店の数が減っていき、並んでる店のすべてが冒険者向けのアイテム店になっていく。
「いらっしゃい。ソマリとポメラじゃないか、よかったら、薬草を買ってきな。4本買ってくれたら、1本オマケするよ」
顔見知りなのか、露店のおっさんが2人に声を掛けてきたが、2人は苦々しい顔でジト目になる。
「お前の店の薬草は苦いから嫌だぞ!」
「そうだぞ! 効果は凄いけど、苦すぎてベロがヒリヒリのビリビリになるんだぞ!」
「だはは。ウチの薬草は効能が売りだからな。冒険者が苦味を嫌がるなって! まぁ、また買いにきな。生きて帰ってこいよ〜!」
露店のおっさんが豪快に笑いながら、俺達に手を振ってくれた。
「賑やかなおっさんだったな」
「ホタルは騙されたらダメだぞ!」
「そうだぞ! あいつの店には薬草って言いながら、効果のないやつも混じってるんだぞ!」
話を聞いてみれば、薬草の値段は一律らしい。ただ、それに対して薬草そのものが問題らしい。
効能が高いものから、低いものまでピンキリらしい。
「ボクが初めて買った時は、苦くて最悪な味だったんだぞ!」
「そうだぞ! オイラ達はそのせいでお弁当の美味さが半減したんだからな!」
話を聞いて、頭を抱えそうになった。
「お前ら弁当の味がって、ひでぇ風評被害だろうが……」
実際に薬草を食べたわけじゃないが、多分、俺が聞いた説明は間違いなく思い込みだろう。
どちらにしても、帰りに何個か薬草を買ってみるしかないな。
俺はとりあえず、露店のおっさんを悪く言わないように2人に伝え、歩いていく。
露店から30分程度で目的のダンジョンに到着したので、とりあえず中に入ることにする。
一階層に入ると新人冒険者達がスライムやゴブリンなんかを数人のパーティーで倒していた。
「へへ! 雑魚スライムがぁぁ!」
「本当に雑魚狩りは楽だよな! そろそろ、二階、いや三階層まで一気に降りようぜ!」
若い男女5人組のパーティーがスライム達を嘲笑いながら、俺達の先を進んでいった。
倒されたスライム達が黒い靄になって霧散する。
冒険者だから、荒っぽいのは理解してるが流石に戦った相手を雑魚呼ばわりはいただけねぇな。
「イライラホタル! 顔が怖いぞ? ボク達もこれから魔物を倒すんだから、怒ってる暇はないんだぞ!」
「キレキレのホタルは、仕方ないやつだぞ。それにあいつらに怒ってるなら、気にするだけ無駄だぞ」
「気にするだけ無駄ってのは、どういうことだ?」
「簡単だぞ。オイラ達は冒険者だから、無理をしたら死ぬことを知ってるんだぞ!」
「そうだぞ! ボク達も昔は無茶したけど、早死にする気はないから、スライムに勝てるからって三階層なんかに、簡単に向かったりしないんだぞ」
色々と気になる言い方だが、冒険者として生きてくって奴らに心配は不要って意味でいいんだよな。
それから、一階層を軽く探索して、身体を慣らしてから、二階層への階段を降りていく。
降りた先には、獣人であろう3人組が槍や剣を手に歩いていた。
「なあ、あれも獣人なのか?」
俺が視線を向けていた3人組に突然、ソマリとポメラがマジックバッグから戦鎚と戦斧を取り出して走り出した。
呆気に取られていると、ソマリが振りかぶった戦鎚が3人組の槍を握っていた獣人に振り下ろされる。
ソマリに続いていたポメラも同様に戦斧を手にすると、剣を握っていた獣人に叩きつける。
「な! 何してんだ!」
俺がそう声に出した瞬間、残りの1人が俺に向けて走り出してきた。
手にはマチェットを握り、声にならない声で牙を剥き出しにしてくる。
「仲間をやられて、ショックなのはわかるが、落ち着いてくれ!」
「ホタル! そいつは魔物だぞ! やられちゃうぞ!」
「危ないぞ! 早く逃げるんだぞ!」
咄嗟に身体を捻り、斬撃を回避した俺の耳に2人の声が響いた。
獣人じゃねぇのかよ! なら、リアル狼男ってことか、紛らわしったらありゃしねぇ!
「魔物なら、魔物だって言わねぇと分からねぇだろうがぁぁッ!」
獣人だと思っていた狼男をフルスイングで壁に叩きつける。
ただ、【身体強化】をしてなかったせいか、俺の拳が多少痛むな。
3体の魔物を倒した後に、俺はソマリとポメラから凄い勢いで怒鳴られた。
「ホタル、ボク達は怒ってるんだぞ! なんで魔物と話し合いなんかしようとしたのさ! 死に急ぎな行為なんだぞ!」
「オイラもカンカンなんだぞ! わけを話さないと許さないぞ!」
「すまねぇ、狼男だったから……てっきり獣人かと思ってだなぁ……」
何故か、すごく睨まれた。むしろ、真っ赤なんだが!
「ボク達、獣人とコボルトを見間違うなんて、ホタルでもダメダメなんだぞ!」
「そうだぞ! 獣人とコボルトはまったく違うんだぞ! 魔物扱いはダメなんだぞ!」
2人が騒いだせいで、更にコボルト達が集まってしまう。
コボルト達を全滅させた頃には、話が有耶無耶になったのでホッとした。
二階層はコボルトがメインらしく、階段を降りてすぐは岩肌が広がっていたが、途中から洞窟の出口のように開けられた穴があり、そこからは草原に変化している。
草原に入った途端にコボルトだけでなく、ウルフ、更にラビット種が複数出てきた。
しっかりとウルフかを最初に確認してから、魔物を討伐していった。
ただ、残念なのはドロップ品ってのが、出るが魔石しか出ないことだ。
ウサギを肉として回収出来ないのは、正直、不満だな。
大量の小さな魔石をソマリがマジックバッグに入れてから、俺が作った弁当を取り出した。
「ホタル。お弁当の時間だぞ! ボクはこの時間が1番幸せなんだぞ!」
「わかるぞ。オイラもお弁当の時間があるから、毎日嬉しいんだぞ!」
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