135話
ウルフだと思ってた奴らが、狼族という獣人だった事実には驚かされた。
ただ、獣人には勘違いされることは珍しくないらしいとソマリとポメラからも聞かされ、更に複雑な気持ちにさせられた。
「ホタル……もう、寝ていいかぁ? ボク達はまだまだ眠いぞ……」
「そうだぞ……良い子は寝る時間だって、ホタルはいつも言ってるんだぞ……ふぁ」
話を聞くために、起こしていたソマリとポメラも限界らしい。
俺は急いでジャイロに報告に向かうか悩んだが、向かう足を止め、柵の外を見つめた。
「はぁ……モモ、俺はソマリとポメラの言葉を信じる。だから、逆に勘違いで骨にされたら、しっかり拾ってくれよ」
「えぇ! なに言い出してんッスか!」
俺は柵に手を掛けると柵の外側に向かって飛び越える。
俺の行動にモモが愕然とするが、狼族と呼ばれた奴らも、驚いたのか距離を取る。
狼族の様子を見てから、俺は柵の内側にいるモモに頼んで、朝食用に余らせたクリームシチューを器に入れてもらうことにした。
「先輩、マジに“鴨が葱を背負って来る”って言葉知ってるッスか、“ハゲがシチュー持ってくる”って感じにしか見えないッスよ」
「じゃかましいわ! 俺はベリーショートだっての! 外で開放的だからなのか、やたらと、頭ネタでいじりやがって、ったく」
クリームシチューを受け取り、幾つかを地面に置いてからその場で胡座を作る。
俺の目の前には複数の器が並べられた状態になり、それを警戒しながらもチラチラと狼族が視線を向けてくる。
「さっきは勘違いした! すまん! こいつは和解ってやつだ! 遠慮せずに食ってくれ!」
俺の言葉が通じているのか、いないのかはソマリとポメラが寝ちまったから、正直分からないが、気持ちが通じれば何とかなると思いたい。
むしろ、こいつらがウルフだったら、討伐後に血抜きをすませてから、朝食のシチューに追加の具材として、炒めてから煮込むつもりだったからな……罪悪感しかねぇ……
俺の言葉が通じたのかは分からないが、最初の1匹、いや? 1人、よく分からないが、まぁ食べ始めてくれたら、一気にクリームシチューを平らげてくれた。
それからは、焚き火を柵の外側に移して、俺と狼族で暖を取りながら朝を迎えることになった。
当然ながら、朝になって、俺達の様子を見に来たジャイロが腰を抜かしてたな。
「ホタルさん……ホタルさんが! ウルフに襲われてる! 他の人達も倒れてる……ホタルさん!」
狼族の毛並みと体温にうたた寝していた事実を伝えて、何とか落ち着いてもらったが、ジャイロには悪いことをしたな。
「って、わけでな。こいつらはウルフじゃなくて、獣人らしいんだ。俺にもあまり見分けはつかないが、ウチの獣人がそう言ってたから間違いないと思う」
「そうだったんですか……てっきり、ホタルさん達がウルフの群れと共倒れしたのかと、焦りましたよ」
ジャイロの誤解を解いてから、狼族達には、牧場側の人間を怖がらせていた事実をしっかりと伝えることにして、一件落着って思ったんだが……そうもいかないらしい。
狼族達をどうするかという話になり、これが一番の問題だった。
本来は人があまり来ない森の深い部分を住処にしている大人しい獣人らしいが、最初に勘違いしたように、狼族はウルフと見分けがつかない。
しかも、こいつらは、無駄に人懐っこいってのが問題で、こいつら目線は“遊ぼ〜”だとしても、人間から見たら、襲って来たようにしか見えないからだ。
牧場を運営するジャイロからしても、ウルフじゃないとわかっても、だからと放置するのは不安らしい。
話をすればする程、纏まらなくなり、最終的に俺達が一時的に保護することになってしまった。
「仕方ねぇよな……不本意だが、このまま放置もできないからな」
「何が不本意なんッスか! 狼族の頭を撫でてモフモフしてる先輩を見て、どう解釈したら不本意発言になるか、教えてほしいッスよ……」
いや、俺からしたら、こいつらが飛びついて来てるだけなんだがな……
そうして話が纏まり、その後は牧場にあるジャイロの家で朝食をご馳走になる。
しばらく話をしてから、ジャイロの奥さんであるレミーさんが話し掛けてきた。
「外のあの子達、見た目でウルフと間違えちゃうでしょ、だから、この布をバンダナみたいにしてあげて、アタシ達も勘違いしちゃったからねぇ」
俺は渡されたバンダナを狼族達に結んでいってやる。
1日で色々あったが、誤解が解けて本当に良かったと思うばかりだな。
昼前に俺達は牧場を後にすることにした。
「またね〜ドレイクちゃん! パラちゃ〜ん! ハゲのオジちゃん達も、また来てねぇ〜!」
ジャイロ一家が見送りをしてくれ、娘さんのサラが両手を振ってくれていた。
言いたいことは、あるんだが、まぁ……しゃあねえな。
「先輩の頭は、やっぱりハゲなんッスよ。ベリーショートは卒業じゃないッスか?」
「そうだぞ! ツルツルのホタルは、ツルツルだからいいんだとボクは思うんだぞ!」
「間違いないんだぞ! ピカピカなホタルがフサフサになると、ホタルじゃないから、オイラは今のホタルが好きだぞ」
「マスター、ドレイクも〜!」
「組長、パラも!」
「「キャン、キャン!」」
狼族も含めて、全員から色々と言われながら、俺達は店に戻ることにした。
牧場に来た時と同様に4時間ほど歩いてライムの街に到着した。
到着して早々に俺達は新騎士団の連中に取り囲まれてしまった。
「止まれ! 貴様、魔物をそんなに連れて何を考えている!」
俺の知らない顔の門番だな……出る際には、騎士団に残った顔見知りの門番だったが、時間的にいないらしいな。
「聞いているのか! 貴様、騎士である我々の質問に答えないということは、やはり何かを企んでいるらしいな」
あぁ、めんどくせぇ……なんかデジャブだな。
「なぁ、俺の何処が怪しいってんだ? むしろ、ウチの連中は狼族だ。獣人とウルフの違いも分からねぇで絡んできてんなら、流石に笑えねぇぞ?」
はっきり言わないと分からないタイプなら、しっかり言ってやらないとな。
ただ、何が悪かったのか、仲間を呼んできて、俺だけじゃなく、モモ達にまで槍を向けやがった。
「抵抗すれば、騎士団を敵に回すと思え! 今から貴様らを拘束して、話を聞かせてもらうからな!」
俺の我慢の限界だ。いや、むしろ、モモが限界か……ソマリとポメラも我慢してくれてるが、爆発寸前に見えるな。
1歩踏み出そうとすると、背後から知らない男達の声が聞こえてきた。
「おう! ソマリとポメラじゃねぇか。門の前で何をしてんだよ」
「あぁ、“鬼人のホタル”と“キルクイーンのモモ”までいやがる……」
誰だよ……変な呼び方を広めたやつ!
「おぉ、ホタル! ボク達の知り合いだぞ!」
「そうだぞ! 酒飲み冒険者だぞ!」
よく分からないが、冒険者ギルドの奴ららしい。
そこから、更に複数の冒険者達が、ライムに戻ってきたのか、門の前に集まり出すと騎士団との睨み合いが始まる。
「な、なんだ貴様ら! わ、我々は騎士団だぞ! 門の番人を任された我々に逆らえば、ライムの街には入れなくなるんだぞ!」
「はぁ? おもしれぇ! 冒険者ギルドを敵に回して、騎士様がどうなるか教えてもらおうじゃねぇかぁぁ! やっちまえ!」
「「おおぉぉぉーーーぉぉッ!」」
俺が暴れる前に、騎士団と冒険者が殴り合いを始め出した。
とりあえず、俺達は端から中に入ることにした。ドレイクやパラもいるし、安全第一だよな。
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