134話
牧場に到着してから、ウルフが出た地点に俺達は陣取ることにした。
ドレイクとパラの2人はジャイロの娘さんと仲良くなったので、言葉に甘えて2人を泊めてもらうことにした。
それよりも、今は俺達の夕食だな。
ジャイロに許可を貰い、ウルフが目撃された位置で調理を始める。
ジャイロから分けて貰った牛乳を使い、持参した小麦粉と野菜を煮込み、ソマリとポメラから回収した鶏肉から骨を取り、煮込んでいく。
「ホタル……ボク達が持ってきた肉だったんだぞ!」
「そうだぞ、まだまだ、沢山あったのに、全部使うのはズルいぞ!」
何故か、俺が用意した漬け込んでいた肉を勝手に持ち出した2人から散々言われたが、火を通して食べれるギリギリのタイミングだと判断したので、意見はスルーした。
そうして、しっかり煮込んでいけば、キャンプ式クリームシチューの完成だ。
普段なら、ある程度の分量を気にするが、雰囲気に流されて、今回は目分量と味見のみで味を決めている。
つまり、普通よりも濃厚な味付けにしてある。
夜の牧場で新鮮なミルクでクリームシチューなんて贅沢だと思う。
むしろ、魔物討伐の下見じゃなければ、楽しいキャンプタイムなんだがな。
硬めのフランスパンをカットしてきたので、そいつをクリームシチューに浸して食べていく。
夜空に広がる白い煙が味を引き立て、雰囲気も相まって、味に深みを与えてくれているようにすら感じる。
焚き火の周りで、クリームシチューを食べ終わったドレイクとパラが案の定、船を漕ぎ始め、ゆっくりと目を閉じていく。
それから、しばらくして、ジャイロと娘さんが牛車に乗り、俺達のもとにやって来た。
「ホタルさん。お子さんは、うちで寝かせてください。他の方もあれでしたら、部屋はまだありますが?」
「いや、悪い、ドレイクとパラを頼む。俺達はとりあえず、見張りをしとくからよ」
「本当に感謝します。ホタルさん」
牛車の荷台にドレイクとパラが横に寝かされ、娘さんが荷台から俺達に手を振る。
「ハゲのオジちゃんガンバってねぇ!」
「俺はベリーショートだっての……ったく、まぁ頑張るか」
軽く溜め息を吐きながら、俺達は夜の見張りを開始する。
魔物討伐の下見って理由で来たのに、泊まる場所をドレイクとパラに貸してもらったのは本当に助かった。2人はまだまだ幼いし、守りながらの夜通しの見張りは正直厳しいからな。
ドレイクとパラが聞いたら怒るだろうが、実際に寝てるんだから、まぁ許してくれるよな。
「あ、先輩……草むらが動いたッス」
「そうか、いよいよウルフ狩りってやつだな」
「下見って言葉は何処に捨ててきたんッスか? 動物愛護団体が今の先輩を見たら、看板で頭を剃られちゃうッスよ」
「本当に動物が大好きなら、身体1つで抱きしめにいくだろうが、俺は生憎、ウルフに愛がないからな!」
会話を終わらせて、俺はモモに向けていた視線をソマリとポメラに移す。
いや、移した先で、寝息を立ててやがる……マジに何しに来たんだよ……はぁ。
「ったく、寝る子は育つってか? まぁ、しゃあねぇな」
「いいんッスか? って、先輩! 5匹ぐらいいるッスよ……」
俺達を警戒しながら、ウルフが5匹、その後ろにも数匹が様子を見ているのがわかる。
「はぁ、昔、アニャマルプラネットで見た狼の狩りについての番組を思い出すな」
「先輩、そんなの見てたんッスか、本気で似合わないッスよ」
何を想像したのか、俺に向けて、かなりイラッとさせる表情を浮かべてきた。
「いいだろうが! 色々と面白え話もあるんだぞ!」
「それより、その番組でどんな説明をしてたんッスか」
「テレビの情報が本当かを検証する番組だったんだがな」
世間の信じる狼の群れのイメージはインターネットやSNSで「先頭が老いたオオカミ、中央が子ども、最後尾がリーダー」なんて形にされてる。
有名なビジネスなんかのリーダーシップを語る際に使われて結びついた有名な話だが、実はこれがすべてデマだって内容だった。
俺も信じてた側だったが、衝撃的だったな。
「つまり、何なんッスかぁ! 先輩の狼に対する知識をひけらかすだけの番宣の時間はいらないッスよ!」
「怒んなって、早い話が先頭にいるのは、若いウルフで好奇心旺盛なヤンチャウルフ、真ん中は追撃、後方が待ち伏せみたいな感じらしいぞ」
「最初から、そう言えばいいじゃないッスか! とにかく、先頭のウルフに八つ当たりしないと気が済まないッスよ……」
そう口にしたモモが、地面に置いてあった焚き火用の太めの枝を手に取り、力任せにぶん投げる。
勢いよく宙を舞う枝が、ウルフの頭上を大きく通り越していく。
「見事なノーコンだな? 普段より酷いんじゃねぇか」
「うるさいッスよ! イライラしてるんッスから仕方ないッスよ!」
ただ、枝に対して、ウルフ達が一斉に追いかけだし、枝を咥えたウルフがモモ目掛けて駆け出してくる。
「やべぇ! モモ、後ろに下がれ!」
ウルフ達とモモの間に入り、俺は身構えた。
そこに、騒ぎで目を覚ましたポメラが雄叫びをあげる。
「オイラが寝てるときは、静かにしないとダメなんだぞぅぅぅ!」
理不尽すぎる叫び声に、走っていたウルフ達がピタリと止まり、シッポを振りながら頭を下げた。
「ふぁ……もう、狼族は元気すぎてダメなんだぞ……」
ん? なんか、今……
その後、ウルフ達が下を向いたまま、待ての体勢になってしまった。
ソマリとポメラには、悪いが慌てて起こし、話を聞いていく。
「ホタルは酷いぞ! 寝てるのを起こすなんて、ホタルじゃなかったら、間違いなく喧嘩だったぞ!」
「そうだぞ! オイラ達は睡眠がホタルとホタルのご飯の次に大好きなんだからな!」
言いたい放題言われてたが、結果だけ言えば──
俺達がウルフだと思ってた奴らは、狼族っていうウルフとは違い、獣人だと言われた。
「マジかよ……危ねぇ」
「本当ッスよ! 獣人って魔物とは別ッスよね? あのままぶっ飛ばしてたら、やばかったッスよ」
狼族は見た目は、ウルフと変わりない。むしろ、夜に野外で出逢えば、十中八九、冒険者に襲われてしまう。
ただ、人語は喋れず、ウルフと狼族の差は毛の色しかない。初見ではまず見分けがつかない種族だった。
「しかし、ポメラは、よくこいつらが狼族だってわかったな?」
「当然だぞ! あれだけ、“遊んで!”“遊んで!”って騒がしかったら、オイラだって気づくぞ」
その後は、狼族の奴らの言葉をポメラが翻訳してくれた。
どうやら、森に住処があったらしいが、少し前に住処を魔物達に襲われたらしい。
話を聞いててわかったが、森の魔物騒動が原因らしいな……
今は森も落ち着き始めてるみたいだが、荒らされた住処や狩場は戻らないらしく、人が少ない森の出口で餌を探していたらしい。
1つ間違えたら、餌を探してる間に、勘違いした冒険者の餌食になっていたんだろうと思うと複雑な気持ちになるな。
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