129話
サンセルのオッサンと話をしてから、二週間程の時間が過ぎた。
その間、サンセルのオッサン達は冒険者ギルドで荒稼ぎしていたらしい。
本来の冒険者ギルドで断れるようなペット探しから、ドブさらいといった低級冒険者も断るような依頼まで下から順にこなしていった。
その結果、たったの2週間で冒険者ランクをパーティー単位ではなく、1つの集団としてC級まで上げていた。
「サンセルのオッサン、派手にやってるみたいだな? 朝市でも、かなり話題になってたぜ」
「普通に仕事をこなしているだけの話なのだよ。立場は違っても王国の民を思い、騎士団という組織で生きてきたのだからね」
「オムライスのデミソースを髭につけて言われてもなぁ、ははは」
「む、これは失礼したのだよ。ただ、このまま冒険者ギルドの世話になるのは、あまり宜しくない状況なのだよ」
サンセルのオッサンが口を拭い、真面目な顔で、取り出した煙草に火をつける。
「ふぅ……今の騎士団の在り方があまり芳しくないのは、大男君も知っているだろう?」
そう、今現在、ライムの街では、新たな問題として、ライム支部の騎士団が問題になっている。
理由として挙げられるのは、1つが騎士団への依頼料の値上げだった。サンセルのオッサンが支部長をしてた頃は近隣の街や村からの依頼も冒険者ギルドよりも安価で無理のない範囲の金額だった。
当然、冒険者パーティーなどと比べれば高くはなるが、個体数で考えた際には安く済む。その為、大掛かりな魔物討伐は騎士団に持ち込まれていた。
しかし、今回、ゴードンが新しい支部長になり、討伐依頼の金額を基本料金として、更に個体数で上乗せする形に変えた。当然、そうなれば依頼数は激減することになる。
そして、もう1つの理由はたった二週間の間に、魔物討伐で死者を出してしまった事実だった。
これはあくまでも噂だが、本来の討伐部隊に必要な人員を大きく減らして、無理な討伐依頼を進めた結果だと言われてる。
「大男君……我々は騎士団を離れたが、このライムの街と周辺に暮らす者が危険なままに生活を送ることをよくは思っていないのだよ……」
かなり悩んでんな……あんまり悩むとサンセルのオッサンが早死にしちまいそうだな。
「なら、オッサンがオッサンらしく生きれるやり方で勝負したらいいんじゃねぇか? 俺の故郷にはマタギってのがいてな、狩りを専門にする奴らなんだがな」
俺はとりあえず、思いついたことをサンセルのオッサンに話してみることにした。
マタギってのも、俺は狩りのエキスパートだって知識しかないし、ハンターなんて言い方をするとこっちの世界で誤解される可能性があるからな。
「マタギ……初めて聞く名前だね? ただ、話を聞けば、魔物討伐を生業にしているのだね」
「まぁ、ここら辺じゃ聞かない名前だろうし、むしろ、冒険者ギルドと喧嘩にならないか心配だが、護衛とかの仕事を受けずに魔物討伐専門なら、ダイルも文句言わねぇだろうからな」
「そうかもしれないね……むしろ、魔物討伐専門の傭兵という形もいいだろうねぇ」
サンセルのオッサンは煙草の火を消すと支払いを済ませて帰っていった。
それから数日後、何故か商業ギルドのベリーさんが俺の店にやってきた。
「ホタルさん! 至急、大切な話が、とりあえず話を聞いてください!」
滅茶苦茶慌ててんな、ベリーさんにしたら珍しい感じだが……俺、何かやらかしたか?
「よく分からねぇが、モモを同席させてくれるか? 俺だけだと判断に困る場合があるからな」
モモを呼ぶと、すぐにベリーさんから本題が語られる。
「すごく言いづらいんですが……冷静に聞いてください。これからこの先のスラムに新しい組織が拠点を作ることになるかもしれません。ですが、決して怪しい組織ではないと商業ギルドも保証しますので」
ベリーさんから説明された内容は、俺らの住んでいる位置から少し先のスラム街を拠点に新しい組織が引っ越してくるらしい。
早い話が、今のスラム街にまともに土地を所有をしているのは俺達だけらしい。
世に言う反対意見が無いかの確認らしいな。
「俺は構わないが? 本当に問題ない奴らなのか?」
「それは間違いありません! むしろ、商業ギルドのギルドマスター、クラクラム様もホタルさんの許可があればすぐに書類を許可すると言われてます」
そこまでベリーさんが説明をするとモモが両手を組んでベリーさんに鋭い視線を向ける。
「話が上手すぎるッス……モモは上手い話には裏があるって知ってるんッスよ。さぁ、ベリーさん! 全部話しまくって楽になるッス!」
とりあえず、モモの頭をグイッと抑えて、話を続ける。
「悪りい、ただ、モモの言葉にも一理ある。相手が信頼できるのは信じるとして、どんな奴らなんだ? なにも分からないまま、はい、そうですかっていう風にはならないからな」
そう告げるとベリーさんは少し困ったような表情を浮かべたが、俺に視線を合わせてくる。
「分かりました。新しい組織の名前は『マタギ』と言いまして、創設者に対しては名前は出せませんが、ホタルさんも知る人物であるとだけ、って、なんで笑ってるんですか?」
「いや、悪い。ははは、まさか……そうきたのかよ。サンセルのオッサンなんだろ? その創設者ってよ」
「え、あ、えぇっと、あ、はい、そうなります。本来は守秘義務があるのですが、今、否定をすると後々、説明義務の虚偽に当たるので、認めさせていただきます」
やっぱりか、『マタギ』なんて、いきなり言われて、驚いたが、相変わらず判断が早いな。
まぁ、そういうことなら、俺が否定する理由なんかねぇしな。
「俺らは構わない。むしろ、サンセルのオッサン達なら大歓迎だからな。いつから来るんだ?」
ホッとした表情を浮かべたベリーさんから、その後の話を聞いていく。
「先ず、スラムに残された建造物の撤去から作業が開始になりますね。それから新しい建物を作らねばなりません。スラムに残された建造物では、まともに使えないですからね」
「そうなのか? なぁ、悪いんだが、サンセルのオッサンに土地を売る前なんだよな?」
「はい、まだそうなりますが?」
「悪りい、マダムピンキーと話したいから、ギルド証で、通信を繋いで貰えないか?」
不思議そうな表情のベリーが通信を繋いでくれた。
『あら、テルテルボーイ? どうしたのかしら、ベリーちゃんからの説明に何か問題でもあったのかしらぁ?』
「いや、いきなりで悪りいんだが、サンセルのオッサンに売るはずの土地なんだが、その上にある邪魔な建物を俺に貰えないか?」
『あら……なんなのその話……う〜ん、アタシの目の前にサンセルちゃんがいるわ……はい』
『大男君? 話は聞いたのだがね、撤去する建物を残したいという意味なのかね?』
「誤解すんなって、説明が難しいが俺を信じてもらえないか? 損はさせねぇからさ」
その後の話し合いで、撤去する建物は俺の物になった。なので、久しぶりの【店舗収納】で綺麗に更地にした。
ついでに、エスのダンジョンで以前に収納していた建物の中でしっかりとしたデカい建物を取り出した。
この屋敷みたいなやつなら、祝いの品として問題ないだろうからな!
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