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124話

 俺は日課である朝市に向かう為に支度をしていた。

 すると朝のコッコ小屋での仕事を終わらせたドレイクと寝癖がついたままのパラが飛びついてきた。


「マスター! 今日はドレイクもいく」

「組長! パラを置いてったらダメなんだよ!」


 そんな光景にモモとエスの2人がニヤニヤと笑っている。


「良かったッスねぇ、先輩は顔に似合わず、パパの才能がありまくりみたいッスね」

「主様がパパ……素敵」


 朝からこんな賑やかな感じの空気の中、俺はドレイクとパラを連れて朝市へと向かう。


 いつも通る朝市への道を進んでいると突然、ドレイクとパラが騒ぎ出した。


「組長、水路から人が出てきたよ!」

「マスター、誰かいる」


 水路から人って、不審者じゃねぇだろうな!


「なんだ……どうしたってんだ? って、サンセルのオッサンじゃねぇか……それと僕っ子も……朝から何してんだよ……朝市にきたって感じじゃねぇよな」


 俺は慌てて、ドレイクに頼み、モモとサンセル支部長を運ぶ為にビッグブルを連れてきてもらった。


 サンセル支部長の腹には嫌な切り傷があり深さはそうでもないが少量の出血が止まらずに流れ続けていた。


「オッサン、大丈夫か、先ずは止血するぞ」


 それなりの時間を歩いてたらしいな、傷口が変な開き方してやがる。


「組長、パラがお水もってくる?」

「いや、水路の水だと感染症なんかがあるからダメなんだ……だから、今はそっちの僕っ子を頼む」


 楽しい朝市ツアーが、血みどろ止血ツアーになっちまったな。


「先輩! よく分からないッスけど、って! まさか、朝っぱらから殺っちゃったんッスか……流石に庇えないッスよ……」


「朝からミステリーサスペンスしてないで、早く手を貸してくれ! 俺1人だと傷が広がっちまう可能性があるからな」


 理由を知りたいが、今は時間が惜しい。

 ビッグブルにサンセル支部長を乗せて、全員で治療師ギルドに移動する。


 俺達が早朝の治療師ギルドに近づくと、昨日、騎士団でぶっ飛ばした護衛騎士達が目を血走らせて周囲を睨みつけていた。


「ありゃ、お前の護衛騎士じゃねぇか?」

「……僕を探してるんだよ」


「本来は話を聞いてる時間が惜しいんだがな、どういうことなんだ?」


 俺の質問に、下を向いて口を閉ざす僕っ子。


「はぁ……言えねぇみてぇだな」


「えっと、ごめん……」


 泣き出しそうな表情になんとも言えない罪悪感が突き刺さる。

 ただ、俺の言葉にモモが頭をポンと拳を下ろしてきた。


「なんで先輩はいつもそうなんッスか、少しは気遣いと言葉遣いを学ぶッスよ」


「ち、ちがうんだ。昨日から、サンセル支部長は、護衛達から僕を守ろうとしてくれたんだ……襲ってきた人の中に、護衛の人もいたから……」


 僕っ子がまた泣き虫になってやがる……


「なら、次はお前がサンセル支部長を助ける番だな。モモ、ゴル金貨は持ってるか?」

「いや、無いッスよ。普通に考えて、そんな大金を普段から持ち歩かないッスよ」


「そうか、なら……ツケで治療してもらうしかねぇな。そうなるとあとは、僕っ子? サンセル支部長を助けたいか?」


「助けたい……僕は、サンセル支部長に死んでほしくないんだ……」


 話は決まったな。俺が笑みを浮かべるとモモからも頷きが返された。


「ドレイク、パラ、モモから絶対に離れんなよ。じゃあ、行くぞ、僕っ子!」

「え、えぇ! わぁぁぁ!」


 俺は脇に僕っ子を抱き抱《かか》えて走り出す。ただ単純に敵である護衛騎士の視線を集められれば、それでいい!


 僕っ子が叫び声をあげた瞬間、治療師ギルドの周囲を囲んでいた護衛騎士達が俺と僕っ子に向けて走ってくる。


「待て! いたぞ!」

「早く追えッ!」


 朝っぱらから騒がしい奴らだな? 他人様の街で迷惑な奴らだな。


「おい、舌を噛むなよ! 次は屋根を移動するからな! 【身体強化】!」

「え、屋根って、うわぁぁぁ!」


 足に【身体強化】を集中させて、建物の壁を蹴り上げて一気に屋根まで飛び上がる。


 屋根から下を確認すれば、必死に追ってくる護衛騎士達。


「鎧姿であれだけ走れるんだから、本当に騎士って奴はすげぇ体力だな。あの根性をまともに使えばいい騎士になるだろうによ……」


 下の連中が俺達を見失わないように速度を緩めてやる。

 むしろ、見失われて、治療師ギルドに戻られたらめんどくせぇからな。


「お、おい、どこまで僕を……担いで、行く気なんだよ」

「ん? どこまでって……そうだな、なら! 目的地は広場にするか」


「え、なんで広場?」


 俺を見る不安そうな僕っ子の視線、まぁ、分からねぇか? まだまだガキだからなぁ。


「ガキには分からねぇだろうがな、いいかよく聞け! 街の中心で叫ぶのは、人間のロマンだからだよ!」


「僕でもわかるよ、それ絶対に違うってばぁぁぁ!」


 俺の横で元気に叫ぶ僕っ子に俺は笑った。


 広場に辿り着けば、朝市で買った品を食べる者、朝の散歩を楽しむ者、ただ雑談をしている者など様々な人々がささやかな時間を楽しんでいる。

 そんな憩いの場に俺は屋根を移動してから豪快にジャンプを決めて、着地する。


「よし! 到着だぁ! って、大丈夫か……おい?」

「僕、僕は偉いから……なにも……でてないから……」


 広場の中心に移動すると護衛騎士達も真っ赤な顔で追いついてきた。


「お、来たな!」


 俺は大きく深呼吸をしてから【身体強化】を発動させて、街中を目覚めさせてやるような声を張り上げる。


「朝からぁぁぁ! 悪りいがぁぁぁ! 聞いてくれぇぇぇぇッ! 今日をもってぇぇぇぇッ! サンセル支部長は騎士団を辞めたぞぉぉぉぉぉぉ!」


 空気が震え、周囲が固まり、誰もが耳を押さえている。


 ただ、俺の行動に護衛騎士達は抜刀しようとしてたが、仲間が止めに入ったのがわかった。


 どうやら、人目を気にしたらしいな、派手にやる割には小物だな。


「次はお前の番だぜ、僕っ子。しっかりと視察官として伝えてやれ」


「え、あ、うん! 聞いてください! 騎士団本部は、ライム支部の支部長であるサンセル・ラーガッシュを支部長の任より解任し、新たにライム支部の支部長として、ゴードン・バリバンテを支部長とする! これは王都騎士団本部により正式な命令である!」


 当然だが、広場にいる奴らは困惑している。ただ、街中が騎士団の責任問題や、騎士団への不満などがあるからな、そんな中でのこの騒ぎだ。


 朝市の露店でも既に騒ぎになっているだろうしな。


 俺が思った以上にライムの街は騒がしくなったらしいな。


 僕っ子の頭にしっかりと手を下ろし、ガシガシと撫でてやる。


「僕っ子、お前は仕事をやり遂げたな。あとは俺なりに後始末と責任ってやつはしてやるからよ。しっかりと無い胸を張ってやれ!」


 ライムの街は朝から大騒ぎになった。理由を作ったのは俺達だが、原因を作ったのは相手さんだ。何より売られた喧嘩は100倍返しが当たり前って話だから、しっかりきっちり決めてやるって話だな。

お読みいただきありがとうございます!

もし少しでも『蛍とモモの掛け合いが面白いな』『続きが気になる』と思ってくださったら、ページ下部の【☆】や【ブックマーク】で応援していただけると、ハゲみになります……!(毛根的な意味で)

☆ギャグが笑えなくても、クーリングオフは勘弁してください。

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