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1-12話、質問攻めと、宿屋主人の怒り

 商館に到着してから、俺は爺さんから色々と質問されることになった。

 最初はワインの作り方についてだが、俺はワインを作らないから分からない。


 次にワインの瓶についてだったが、瓶も作ったことなんてない。


「若いの! お前さん、いったいなんなら教える気になるんじゃ!」


「だぁかぁらぁ! 作ったことない物の作り方を教えろってのは無理なんだよ! 俺にできるのは俺が手に入れられる物を爺さんに下ろすだけなんだよ!」


 正直、古物商許可証を持ってたから取り引きになるが、もし俺が許可証を持ってなかったらどうする気だったんだよ。


「はぁ、とにかくだ。ワシとしては、お前さんと長く信頼関係を築きたいってのが本音なんでな、本来は仕入先とも話してみたかったが『リセットカンパニー』なんて、商会は聞いたことがないからのぅ」


「だろうな、俺もどうやって補充されるのか仕組みがまったくわからねぇからな。スキルってのを通して補充してるみたいだがな」


「ふむ、話を聞いて感じたのは、お前さんは若すぎるのぅ。簡単に自身の強みや切り札を出し過ぎておるぞ?」


「まぁ、俺からしたら……いきなりスキルだなんだって話になってるだけで、強みでも切り札でもないんだがな」


「それでもだ。若いの、お前さんが考えるよりも、ワシら商人は、あざとく歪な精神の持ち主ばかりだ。それだけは忘れずに覚えておいてくれ」


 そう言われた後に、ワインの値段交渉などの話が始まろうとしていたが、そこに扉がノックされる。


「アッラノーマ商会長、失礼致します。商館に少女が尋ねてきまして、“先輩に話がある”と伝えてほしいとのことでして、お伝えにまいりました」


 爺さんはゆっくりと立ち上がると、窓から外を見下ろす。


「早く先輩に会わせるッス! このまま通してくれないなら、大変なことになるッスよ!」


 外から聞こえるモモの声に俺は頭を抱えた。そんなモモの横からは必死に止めるアルムさんの声も聞こえていた。


「賑やかじゃな、お前さんの連れは更に若いのぅ」


「すまない。爺さん、悪いんだがあの2人も同席させてもらえないか?」


「ふむ、ワシは構わんよ。ならば、下の2人をこの部屋に案内させよう」


 すぐに使用人が2人を部屋に案内してくる。


 扉が開いた途端、モモが全力ダッシュからの豪快ダイブをかましてきたので、しっかりと受け止める。


「お前なぁ、レディがどうのこうのはどうしたんだよ……」


「それより先輩! アルムと他の奴らを止めないとヤバいんッスよ!」


「モモ殿! 心外だ! 私はここにいるではないか」


 なんの話だ? こいつら、小学生か……


「待て待て、とりあえず落ち着けって、何があったんだ? モモ、説明してくれ」


 そこからの説明に俺は、本気でアルムさんに疑いの目を向けることになる。


 俺が渡した金貨を手に宿屋に向かったアルムさん達だったが、宿屋で手続きを終えた途端に食堂に向かったそうだ。

 そこまでは普通の流れだが、そこで酒に料理とまさかの宴会を開始したらしい。


 当然、金貨1枚の価値は5万円程度だ。結果、宿屋には泊まれるが、間違いなく支払いが足りなくなっているとモモが怒り心頭で俺の元にやってきたらしい。


「有り得ないッスよ! 先輩への支払いもまだなんッスよ! なのに宴会なんかして、今はイビキをかいて寝てるんッスから」


「まぁ、気持ちは分かるがな……まともな宿屋で寝られるなら、宴会もしたくなるさ」


「そんな事ばっかり言ってるから! 先輩は儲からないんッスよ! 儲けるじゃなくて、もうるになってるんッスよ!」


 なんか、今、モモに喧嘩を売られた気がするな。


「とりあえずだ。俺も飯がまだなんだ。宿屋に戻ったら、この街の飯を食ってみたいしな」


 料理は街によって違うからな。正直、異世界の飯を食べれるなら、しっかり学ばないとな。


 俺がそう言葉にすると、アルムさんが即座に動くと見事なジャンピング土下座をかましてきた。


「申し訳ない! ホタル殿、実は……部下達が宿屋の料理に文句をつけたせいで、宿屋での食事が無理になってしまったんだ!」


 そこまで聞いて、今、俺はアルムさんを前に残念な人に向けられる視線をしっかりとサングラス越しに向けている真最中だ。


「なんで、そうなるんだよ? アルムさん、アンタの部下ならしっかりと止めないとだろうが?」


 しかし、モモが全力で両手をクロスさせる。


「違うッス。アルムさんも宿屋のご飯に文句を言ってたッス。なんなら、一番最初に揉めたのもアルムさんッスからね」


 理由は単純だった。宿屋で出された料理を食べていた際、宴会になり、アルムさんは止めようとしたが、宿屋の主人が次々にオーダーを通していた為、止めに入った結果、口論になっていた。


 主人は「最高の料理と酒を出してんだ! 女はすっこんでろ」と口にして、アルムさんがキレたらしい。


「最高の料理と酒がこの程度か! これなら、我々が食べていた『ビッグエイプの肉』の方がずっと美味かったぞ!」


 そうして、ビッグエイプと自分の料理を比べられた主人がキレてしまい、朝一で宿屋を出る流れまで完成したらしい。


「正直、アルムさん。アンタの発言は最低だ。悪い爺さん、交渉は戻ってからにしてくれ、宿屋の主人にび、入れてくるわ……ったく、しゃぁねぇな」


「モモも行くッス! アルムさんは、おじいちゃんと話しながら、反省して待ってるッス!」


 俺が宿屋に戻ると、主人のおっさんは怒りを隠そうともしなかった。商売人としては、ダメだろうが……飯を作る人間がプライドを持って料理してたんなら当然の反応だな。


「おっさん!」


 俺の声に主人のおっさんがビクッと肩を震わせる。


「な、なんでぇ!」


「俺のツレが失礼した。申し訳ない! 料理人として、心から謝罪させてくれ!」


 頭を下げた俺に主人のおっさんが近づいてくる。

 当然、こちらの世界で揉めたら一、二発殴られる覚悟はできている為、俺は覚悟を決めた。


「おい、今? 料理人って言ったな? お前が奴らの料理番ってことなら、話が早い! 厨房に来い!」


 何故か、俺は宿屋の厨房に立たされてしまったんだが? 狙いがさっぱり分からねぇんだが。


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