114話
危険で騒がしい1日が終わり、店に戻った俺達、当然ながら、扉を開けるなり泣き腫らした顔のドレイクとパラが飛び出してきた。
「マスタ〜!」
「組長〜!」
泣きまくる2人の背後からは、一晩中起きていたのか、眠そうな目をギンギンに開いた獣人コンビの姿があった。
ソマリとポメラは俺を見るなり大声で怒り出した。
「ボケボケホタルのテカテカ頭! ボク達はすごく心配したんだからな!」
「そ、そうだぞ! オイラもみんな泣いちゃうくらい、心配したんだからなぁ! ベコベコホタルのツルツル頭ぁぁ!」
泣きながら、俺に突撃してきた2人により、ポカポカと好き勝手に叩かれる。
そんな2人をモモとエスが引き剥がし、俺は改めて一息つく。
店のフロア側、長椅子に腰掛けると、モモが珈琲を入れてくれた。
「とりあえず、お疲れ様ッス。先輩のために特別なブレンドを入れてきてあげたッスよ」
濃い目のブラックコーヒーに口をつける。
強いカフェインを摂取したはずが、珈琲のリラックス効果なのか、凄まじい眠気に襲われた。
「あ、先輩! エス、先輩が死んじゃうッス、早く来るッスゥゥゥゥゥ!」
朝日と間違うような夕陽に照らされた俺は寝足りないと感じながら、大きく伸びをする。
「ん……寝ちまったのか……はぁ、昨日はヤバかったからな……」
ベッドの上で目覚めた俺は、ベッドの左右を見て困惑した。
左側には、ソマリとポメラが寝ており、右側にはドレイクとパラが寝息を立てている。
状況は分からないが、ベッドまで皆で運んでくれたんだな。
起きたばかりの俺の足にしがみついて眠る顔を見て、改めて心配してくれたんだと感じちまうな。
俺は自然と寝息を立てるチビ達の頭を順番に撫でていた。
ゆっくりとした時間だった。昨日の森での出来事を思い出しながら、寝息を立てるチビ達に会えた事実に感謝しかねぇんだよな。
コン、コン、と扉が静かに叩かれた。
「主様、起きて。夕食」
エスは必要最低限の言葉だけを伝えてくる。
「今行く、ただ、少し待ってくれ。みんなを起こしてから降りるから」
「主様、皆も冷める前に降りて」
淡々と扉越しに語るとエスが扉から離れて行くのがわかった。
ベッドから移動しようとした時、左右で寝ていたチビ達が目を擦りながら起き出した。
「マスター、おはよう」
「組長〜」
俺の手にしがみつくドレイクとパラに照れくさい気持ちで微笑み返す。
「おはよう、ってか、“おそよう”だな」
「へへ、ならマスター。おそよう」
「組長、おそよう!」
俺の真似をする2人が、可愛い過ぎる……世の中の父親が「娘は嫁にやらん! お父さんと結婚するんだろう〜」などと発言する理由がわかる気がするなぁ。
そんなことを考える俺は反対側から、ポカポカと軽く身体を叩くソマリとポメラ側に視線を向ける。
寝癖と言うべきだろうか? 頭の毛が無造作ヘアになっている2人の獣人に俺は優しく手を伸ばして、順に頭の毛を直していく。
「うぅ、ホタル、いきなり、ボクの頭を撫でるのは反則なんだぞ!」
「ずるいぞ! お留守番してたんだからな! ホタルはオイラのことも撫でないと不公平なんだぞ!」
口は悪いが、やっぱり子供だな。
ガジガジのワシャワシャで、しっかりと頭を撫でてから、頭の毛をいつもの雰囲気に直してやる。
最後はチビ達4人の頭を撫でてから、全員で下の階へと向かう。
ソマリとポメラから、昨日の話を軽く聞くことができた。
モモとエスが俺の救援に向かうことになり、皆を守るようにと2人は言われたらしい。
ただ、モモとエスがいなくなると当然、モモの魔力でインフラが動いている店は真っ暗になり、火も使えなければ、水も出なくなったらしい。
だが、そこは冒険者稼業のソマリとポメラであり、火は外で焚き火をして、肉を焼いて全員で食べたようだ。
カイト達もその場に合流して、食事も無事に済ませた事実をドヤ顔で語られた。
「頑張ったんだな。悪かったな」
「ツルツルのホタルが危ないって聞いたからな! ボク達が入れば店の守りは完璧だぞ!」
「そうだぞ! テカテカのホタルは、気にしたらダメだとオイラも思うぞ!」
そんな2人の言葉にドレイクとパラが反応する。
「マスター! ドレイクもお留守番したよ。えらい?」
「組長、パラも少ししか泣かなかったの。えらい?」
「みたいだな。4人とも、すごく立派でびっくりしちまったよ。ありがとうな」
ただ下の階に降りるだけの僅かな時間で俺はチビ達の成長を感じずにはいられなかった。
フロアに降りると、既に料理が運ばれており、カイト達、少年組も席に座っていた。
「あ、組長、身体は大丈夫かよ?」
「組長、心配したんだぜ」
「組長、おかえりなさい。ホッとしました」
カイトから順にグライとセスも心配の言葉をかけてくれたので俺はしっかりと頭を下げる。
「心配かけて悪かった! 見ての通り、五体満足で戻れた」
そんな会話が終わると、モモとエスが席に座った。
「先輩、早く“いただきます”を言うッスよ。みんな腹ぺこなんッスからね」
モモに急かされ、俺は両手を合わせる。
全員が俺に続き、両手を合わせていく。
「いただきます!」
「「いただきます!」」
俺はこの大きな街で小さな居場所を手に入れたと素直に感じた。
大切な家族……って言うと照れくさいが、こいつらが許してくれるなら家族だと思いたい。
死にかけたからなのか、頭が変に感情的でダメだな、ただ、マジにこいつらと居たいって思う俺は、気持ちが寂しいんだろうな。
しっかり食べて、シャキッとしねぇとな!
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