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106話

 大量の魔物が発生してるかを調査するはずのクエストだったが、現在進行形で俺とミルガニアさんは調査対象と戦闘の真っ最中だ。


「ホタルさん! ビッグボア止めたよ!」


「よしゃ! 行くぜ、ウリ坊! ウラァ!」


 ミルガニアさんが大盾で魔物の進行を防ぎ、即座に俺が拳で黙らせる。完璧な連携ができてるな。


「しかし、種類は兎も角、数が減らねぇな……」

「そうだね。普通なら、仲間がやられたら逃げるはずの魔物まで次々に来るからびっくりだね」


 既に20匹は魔物を倒してるはずだが、未だに魔物達は現れ続けている。しかも、倒した魔物の中には見た目に違和感のあるやつまで混じっていて、何がなんだか、わかりゃしねぇ。


「ホタルさん……1つ提案なんだけど」

「どうしたんだ?」


 魔物を盾で弾き飛ばしながら、ミルガニアさんが背中越しに喋りかけてきた。


「このままじゃ、ジリ貧だと思うんだよね。だから、どちらかが、ギルドに救援依頼を出すべきだと思うんだ。意味はわかるよね……」


 重たそうな口調で静かにそう口にしたミルガニアさん。

 言いたいことは分かるから、じゃあねぇし、なんならもっと早い段階で言われても違和感のない状況だ。


「言いたいことはわかった」


「なら、アタイが全力でこの場──」と口にしたと同時に俺は魔物達に向けて、全力で雄叫びをあげる。


「俺が相手だってんだぁぁぁぁぁぁッ!」

「なにしてんのさ!」


 戦闘中に振り向くミルガニアさんに俺はしっかりと笑みを浮かべてやる。


「女が進むための道くらい、俺が死守してやるからよ! 全力でこの場から走れ! 元々、俺のクエストだからな!」


「ホタルさん馬鹿なの! この状況で盾職がいなかったら、全部の攻撃を生身で受けることになるんだよ!」


「だから、女のミルガニアさんを置き去りにできねぇだろうが! 理由だの、状況だのって理屈は、後で考えりゃいい話だ! いいから、今は走れ!」


 ミルガニアさんは、大盾をその場に突き刺すと、ライムの街に向けて駆け出していく。


「ホタルさん! その盾は貸します! 絶対にホタルさんの手で返してください……すみません」


 俺はミルガニアさんの声に歯を剥き出しにして笑う。


「さて、今から俺が相手だ! 食材に成りたい奴から掛かって来やがれ!」


 ──ミルガニア視点──


 ハアハア……ありえないよ! なんで獣人のアタイを逃がすんだよ……ヒューマンなら、普通は……いや、ミラ達もアタイをいつも庇ってくれるか……


 でもさ、でもさ……普通のヒューマンはそんなことしないんだよ!


 アタシは走った。途中で邪魔に感じた肩当てなんかを乱暴に剥ぎ取り、その場に投げ捨てる。

 少しでも早く、ただ、誰かに助けを求めるためだけに走った。


 普段なら軽くあしらう魔物達相手に情けないって笑われるかもしれない。それでも撤退を判断しないとダメだって本能が告げたからだった。


 ……ホタルさんを逃がして、死なない程度に時間を稼ぐつもりだったのに……なんで、あの人は馬鹿だよ。あんな馬鹿な人を死なせたくない。


 アタイの行く手にも魔物達は姿を現す。本来なら盾を使って発動させるスキル【シールドアタック】を発動させる。


 手足に直接駆け抜ける痛み、それでも止まれない。


 森を無理矢理抜けて、すぐに門番に状況を伝えた。


「誰でもいい! 森に向かって欲しいんだ! 大量の魔物がいて、ホタルさんが!」


 アタイの説明に門番が慌てて話を聞いてくれた。


 それでも、すぐに動けるようには見えなかった。

 アタイは門番に再度頭を下げてから、すぐにパーティーメンバーで借りている宿屋に向かった。


 バギッドとナンシーが先に宿屋に戻ってるはずだから、2人にも頭を下げたら、きっと……一緒にホタルさんを助けに向かってくれる。


 宿屋に飛び込むように入ると、女将さんがアタイを見るなり、絶望的な言葉を告げた。


「あら、ミルガニアじゃないか? あんたの仲間なら、少し前に出掛けてったよ」


 膝から崩れ落ちそうになった。

 いつも頼りにしてきた……必要な時に力を貸してくれて……なのになんで、今この場にいてくれないんだよ!


「バギッド、ナンシー……なんでいないのさ」


「あ、ミルガニア! 待ちなって、行っちまったねぇ」


 アタイは宿屋から走り出していた。


 冒険者ギルドに行けば誰かが……ミラとスリンガーも報告に向かってから時間が経ってる……きっといない……


「戻らなきゃ……ホタルさん1人じゃ……」


「組長がどうかしたのかよ、デカい姉ちゃん?」


 突然、話しかけてきたのは変な屋台で食べ物? を売っていた少年だった。


「なぁ、姉ちゃん? ホタルさんって、組長だよな。何かあったのかよ?」


「え、あ、今、ホタルさんが1人で森に出た大量の魔物を食い止めてて、だから、助けを呼びに……ホタルさんがだから、1人なんだ」


「よくわかんねぇよ! 待ってくれよ。モモ姐さんに連絡するから!」

「え、どうやって……」

「このゴーレム『焼きそば焼ける君』はモモ姐さんのゴーレムで、緊急連絡用のボタンがあるんだよ。まぁ見てなって」


 アタイは信じられなかった。変な屋台の少年が言ってる言葉も嘘に聞こえた。それでも、事実なら縋りたい……


《カイト、いきなりどうしたッス! まさか、強盗にでも襲われたんッスか!》


 ゴーレムから、聞きづらい声が聞こえたが、間違いなくモモの声だとアタイにもわかった。

 すぐに声の方に駆け寄り、アタイは叫んだ。


「モモ、アタイ、『黒龍の息吹』のミルガニア! ホタルさんが森で大量の魔物と戦ってて、助けて!」


《街の入口に向かうッス……あと、話は後で聞くッスから、落ち着くッスよ。カイトは1度、商業ギルドに行って、だれでもいいッスからギルド証の追跡ができるかを確認して欲しいッス》


「分かったよ。モモ姐さん。らしいから、オレは行くぜ! デカい姉ちゃんも入口に急いでな!」


 アタイにそう告げた少年は、屋台だと思ってたゴーレムと商業ギルド側に消えていった。


「アタイも行かないと……」


 街の入口に到着すると、モモ以外に見慣れない女の子が1人、モモの横に立っていた。


「やっときたッスね。エス、あれがさっき言った先輩の危機を知らせて泣いてた人ッスよ!」

「獣人さん。エス、よろしく」


 よく分からないけど、ホタルさんの仲間だって理解はできた。

 それとアタイを更に泣かせたのは、門の前にいた『黒龍の息吹』のメンバーの姿だった。


「ミルガニアさん。ごめんね。みんなでやっぱり行こうって話して、移動してたから入れ違いになったみたいだね」


 ミラが、両手を合わせて頭を下げてきた。


「ふん、スリンガーをつけてやれば、済んだ話だろうが? オレは仕方なくだ! ホタルがどうなろうと知らねぇからよ」


「バギッドってば、素直じゃないよねぇ、一緒に宿屋戻ってから、すぐに装備を整えてたクセにさぁ〜ウチは、まぁ、身体をお湯で拭けたから仕方なくだけどねぇ」


 バギッド……ナンシー……


「話はこのくらいにしましょう。ホタルさんが危険なら、我々が急がねばなりませんからね。ミラさん、バギッドさん、ナンシーさん、ミルガニアさん、モモさん達も行きましょう」


 スリンガーさんの声にアタイは頷くと、森に向けて案内をするため、1歩を踏み出した。


 ホタルさん、みんなを連れてくから、お願い死なないで……お願いだから……

お読みいただきありがとうございます!

もし少しでも『蛍とモモの掛け合いが面白いな』『続きが気になる』と思ってくださったら、ページ下部の【☆】や【ブックマーク】で応援していただけると、ハゲみになります……!(毛根的な意味で)

☆ギャグが笑えなくても、クーリングオフは勘弁してください。

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