105話
ダイルの企みにより、脅しまがいの強制労働をすることになった。
説明されたクエスト内容は森の調査ってなっちゃあいるが……広い森で普段から暮らしてる魔物なんて知らねぇってのにどう見分けたらいいんだよ……
ギルドから出たばかりの俺は、やる気の出ない足を前に進めてライムの街から外に向かうため歩き出す。
昨日会った門番がその日も勤務していて、俺の気も知らないでニコニコとした明るい笑みで挨拶をしてきた。
「連日街の外に行かれるなんて珍しいですね。急な素材集めですか?」
「違ぇよ、冒険者ギルドからのパワハラ案件だ」
「パワハラ? よく分かりませんが、大変なんですね」
笑顔をぎこちない笑みに変えた門番に俺も苦笑する。
そういやぁ、騎士団がクエストを降りたんだったな。偽物の騎士団に武器の盗難とか騒いでたからなぁ。
「なぁ、今の騎士団はバタバタしてるみたいだが、解決しそうなのか?」
質問された門番が慌てて俺に近寄ると小さな声で返事をしてきた。
「バタバタって、ホタル殿……何のことでしょうか?」
「大声で言っていいなら、言うがいいのか?」
「ダメです、それより……何に対しての質問かだけ教えてください」
「騎士団で偽物騒ぎと武器の盗難でごたついてるんだろうが? そのせいで俺が森の魔物調査をすることになったんだよ!」
まぁ、原因はモモが三馬鹿パーティー『ダーククロウ』を戦闘不能にしたからなんだが……今は教える必要ないな。
「そ、そうだったんですね……なんかすみません……騎士団の1人として、謝罪します……」
「あ、いや、別に……まあ、そんな感じだから、森に向かう感じだ」
門番に悪いことしちまったな……責任感の強いやつに話す話じゃなかったな。
軽く反省しながら、俺は森に向かう為に門の外へと踏み出した時だった。
「あれ〜ホタルさんだ! 久しぶりだね」
突然、予想外の方向から呼ばれた名前に俺が振り向くと、ミラさんが手を振りながら走って来ていた。
「ミラさん?」
そんな気の抜けた返事を返すと、ミラさんは後ろを振り向き、突然大声を出す。
「みんな早くぅぅぅ! スリンガーさん。バギッドさん! みんなも、ホタルさんがいるよぅぅぅ!」
叫ばれた方向をみると『黒龍の息吹』のメンバーがいた。
重戦士らしい鎧姿のスリンガーさんを先頭に、斥候職のバギッド、盾持ちの獣人ミルガニアさん、最後に疲れきった表情の魔法職のナンシーさんと続いている。
「ミラさん達も勢揃いだな……俺は今から森の魔物調査に向かう感じだ。まぁ、ダイルの野郎に強制されたんだがな」
「あはは。ホタルさんってそう言うのよくありそうだよな。雰囲気的にさ、たださぁ、1ついいかな? なんで1人なのさ、モモちゃんとかドレイク君は?」
ミラさんが周囲をキョロキョロと確認する。当然、いないんだがな。
「いや、色々あって、俺1人のクエストなんだよ。だから、急いで終わらせようと思ってな」
そう告げるとミラさんがパーティーメンバーに向かって、確認するように声を出す。
「ホタルさん、今からクエストだって! 手伝ってあげようよーーー!」
ミラさんの言葉にバギッドとナンシーさんから、即答で「ダメだ!」「ムリー!」と返される。
「なんでさぁ! ホタルさんが可哀想だよ!」
「ミラ! お前がギルドの報告を急ぐって言い出して、休みなく一日歩かせたんだろうが! 好き勝手言ってると泣かせんぞ!」
バギッドの怒りの籠った言葉。それにナンシーさんが続く。
「そうだし! 水浴びもできてないし、ベタベタなんだから! こんな状態で更に手伝いとか、意地悪とかじゃなく、ウチは本当にムリだからね!」
まぁ、当然の反応だよな……はは、一瞬期待したんだが、そう上手くはいかないよな。
そう思っていたら、ミルガニアさんが手を上に挙げる。
「なら、アタイが手伝うよ。ホタルさんも1人じゃ大変だろうから、なにより、獣人のアタイはまだまだ体力に余裕があるからね」
俺の側までやってくるミルガニアさん。以前も思ったが、身長が高ぇ、俺より少し低いくらいで、目線で言えば同じ高さになるんだから、180cm近い身長があるとすぐに分かる。
「ん? やっぱり、身長が高い獣人は可愛くないから、嫌だったりするのかな、あはは」
「悪い、つい見入っちまった。むしろ、高身長でプロポーションがいいんだから、嫌なんて贅沢な言葉は出ねぇな。綺麗なんだから、自信持った方が絶対にいいと思うぞ?」
ボン! と聞こえてきそうな勢いでミルガニアさんの頭から湯気が上がった。
「な、なんだ! 大丈夫かよ!」
慌てる俺を見て、ミラさんは笑いだし、スリンガーさんとバギッドは額に手を当て溜め息を吐いた。そして、ナンシーさんだけが“チッ”と舌打ちをする。
「ははは、ごめんな。ミルガニアさんは、男性慣れしてないから、いつも自虐ネタで相手が困るパターンなんだけど、ホタルさん、予想外すぎるよ」
一頻り笑い倒したミラさんが真面目な顔で俺とミルガニアさんに視線を向けてくる。
「そんじゃ、ミルガニアさん。ホタルさんとのクエスト頑張ってね。私もギルドで報告を済ませたら、合流するからさ!」
「ん? ミラさん。それなら自分もミルガニアさんとホタルさんを手伝うが?」
「スリンガーさん……いいから、ギルドに報告するからついて来て……ナンシーさんとバギッドさんは先に宿屋に向かっていいですよ。報告はしとくからさ」
そうして、俺は何故か、『黒龍の息吹』のメンバーであるミルガニアさんと魔物調査クエストを開始することになった。
森に到着するまでの僅かな間に多少の会話をすることでミルガニアさんの性格などを教えてもらったので、調査も上手くやれるだろう。
森に到着する。昨日と違い、複数の視線が一気に向けられている事実に驚かされた。
ただ、それはミルガニアさんのスキルであり、盾使いである彼女はターゲットを強制的に自身に向けることができるらしい。
「ホタルさん。アタイが魔物を引きつけるから、その間に調査を進めていいよ」
「いや、流石にそれは気が引けるんだがな、女に敵を丸投げして、野郎がぬくぬくとしてるなんて、死んでもごめんだ!」
「え、軽く調べて終わりじゃなかったの?」
「それと、これは別の話だ。もう集めてんだろ? なら、とりあえず……全部ぶっ飛ばしてから考えたら問題ないよな?」
「はは……思ってたより、武闘派なんだね。モモとかを止めたり心配する姿が印象的だったから、見た目とか、言葉遣いは悪いけど温和な人かと思ってたよ」
「見た目は、生まれつき、口調は生きてきた環境、ついでに言えば、基本は平和主義者の一般人だ」
「一般人は、魔物を見たら逃げるんだよ。はは、さぁ、来るみたいだよ!」
俺達の会話はそこで途切れた。目の前からは角ウサギの群れとデカいイノシシに、スライムと複数の魔物が徒党を組んだように押し寄せてくる。
とりあえず、悩まずにぶっ飛ばす!
お読みいただきありがとうございます!
もし少しでも『蛍とモモの掛け合いが面白いな』『続きが気になる』と思ってくださったら、ページ下部の【☆】や【ブックマーク】で応援していただけると、ハゲみになります……!(毛根的な意味で)
☆ギャグが笑えなくても、クーリングオフは勘弁してください。




