103話
エスの作ってくれた昼食を食べた後、俺とドレイク、パラの3人で冒険者ギルドへと向かう。
エスは家の事があるからと留守番を選び、セスに関しては午後から羊の魔物、メーの世話があるからと断られちまった。
まさか、羊の魔物に負ける日がくるなんてな。人生何があるか分からないなんて言うが、さすがに予想外だったな。
結果、俺、ドレイク、パラの3人で出掛けることになった。
今は大通りを外れ、大回りする形で冒険者ギルドを目指している真っ最中だ。
「マスター? 道、違うよ」
「いいんだ。せっかくだから、ゆっくり散歩がてら行こうと思ってな。2人は俺と歩くのイヤか?」
「やじゃない!」
「嫌じゃないよ!」
俺と手を繋いだ状態でニコニコと笑うドレイクと恥ずかしそうに手を掴むパラ、これじゃ……傍から見たら、休日の家族サービスする親父にしか見えねぇな。
ただ、そうなると、改めて大通りを避けたのは正解だったな。
多少手間だが、冒険者ギルドのある大通りは、まだまだ、お子ちゃまなチビ達2人には目の毒でしかねぇからな。
飲み屋だけならいいが、俺個人は兎も角、仕事だとしても衣服をほぼ着てない状態の半裸の女性をチビ達に見せるのは、教育上……マジに良くねぇもんな。
いつもと違う道からの遠回り、不思議と知ってるようで知らない店や初めて見る服屋など、意外な発見も多数あり、俺自身も楽しめたので遠回りは大正解だった。
ゆっくりと冒険者ギルドに到着すると、初めての冒険者ギルドに興奮したパラが勢いよく中に走っていく。
ただ、そんなパラが、泣きそうな顔ですぐに飛び出してきたかと思えば、俺の足にしがみついてきた。
「ううぅぅ、パラ! ここ嫌い……組長、帰ろうよ!」
この一瞬で何があったってんだよ?
パラの頭を撫でながら、冒険者ギルドを見る。
「パラ、何があったんだ?」
「うぅぅ……パラが入ったの、そしたら……中にいた人が睨んだの! パラ、何もしてないのに……怖い顔されたの!」
なんとなく、話が見えてきたので、俺は2人を後ろ側に移動させる。
「ドレイク、パラを守ってくれ。頼めるか?」
「マスター、ドレイクはパラを守る!」
ドレイクの言葉に俺は後ろを振り向いて、2人の頭を撫でてから正面に向き直り、指を軽く鳴らしながら冒険者ギルドへ入る。
ギルドの中に入ると、ガラの悪い連中がバカ笑いしながら、酒を呷っていた。
「あはは、さっきのチビ見たかよ。軽く睨んだら逃げ出しちまったぜ」
「ははは、うぅ、とか言ってたもんなぁ!」
パラが泣き出しそうになりながら、俺のズボンをグッと掴んだのがわかった。
とりあえず、冒険者ギルドなら、冒険者らしく話をつけないとだよな?
俺はバカ笑いしてる男の1人を睨みつけると、背後から片手を伸ばし肩を掴むと反対の手を椅子の下に伸ばし、全力で持ち上げる。
「うわぁ、な、何しやがる! は、離せ!」
「なんだテメェ! 何してやがる!」
グダグダ、ピーチクパーチクうるせぇな……ただ、元々すぐにぶん投げるつもりだったから、問題ねぇ!
俺の考えを理解したのか、カウンターから、クラリスさんが受付嬢を押し退けて走ってくるのが見えた。
「ホタルさん! やめてください!」
そんなクラリスさんの声に俺はニヤッと笑うと【身体強化】を発動させる。
「とりあえず、吹き飛べやぁ!」
ドレイクとパラを巻き込まないように踏ん張った状態で椅子ごと男を外にぶん投げる。
「や、やめ! ぎゃああああ」
豪快に扉が悲鳴を上げ、男が座っていた椅子が地面にぶつかり粉砕する。
その様子を見ていた男の仲間達が呆然と固まっている中、側まで走ってきたクラリスさんに向けて喋りかける。
「悪りいんだが、ドレイクとパラを頼む」
「ホタルさん! 冒険者ギルドでの戦闘行為は!」
「クラリスさん、2人を頼んだ! あと説教は後で聞くからよぅ……悪かったな、椅子を扉に投げちまって、少し片付けてくる」
そうして、外に向かう。既に外で男は気絶していたが、ピクピクと動いてるのを見て、ホッとした。
まだ生きてるな。危うく事件になるところだったな、危ねぇ。
「おい、早く起きろって?」
そんな言葉を男に向けて喋り掛けた瞬間、背後から男の仲間達が飛び出してきた。
「テメェ! このクソハゲが! オレたちが王都のギルドから来たって知らねぇらしいな!」
「C級冒険者パーティーに喧嘩を売るバカがよ! 毛死病は頭の中も空っぽってか! ギルドの外に出たなら、容赦しねぇからな!」
三流の小悪党かよ……ただ、C級ってたしか、ミラさんの『黒龍の息吹』と同じだっけか……試験の時はどちらかって言うと傍観側だったからな。
「そうか、C級ってんなら、全力で相手してもらおうじゃねぇか!」
とりあえず、冒険者ギルドの外なら問題ないよな!
「よしゃ、掛かって来やがれ!」
俺が一歩前に踏み出した時、凄まじい痛みが脇腹から全身を駆け巡る。
「ツルピカのハゲハゲホタルッ! ボク達の弁当がなかったから大変だったんだぞぅぅぅ!」
「テルテカのピカピカホタルッ! エスのご飯が辛すぎて食べれなかったんだぞぉぉぉぉ!」
脇腹に全力で拳を叩き込んできたのは、ソマリとポメラだった。エスのブリトーを食べたらしいな。
「いきなり、殴るのはやめろっての! モモの真似か知らねぇけど、マジに死人が出るだろうが!」
そんな俺の言葉にソマリとポメラの2人が何故か左右に移動する。嫌な予感しかねぇ!
慌ててその場から移動した瞬間、一陣の風が俺の真横を駆け抜け、後ろで騒いでいた冒険者たちを吹き飛ばした。
「避けたらダメじゃないッスか……本当に死人が出るか、先輩で試してあげるッスから、じっとしててくださいッス」
濁った目で微笑むモモの姿があり、俺の代わりに犠牲になった冒険者たちが地べたに転がっているのが見えた。
「モモ……落ち着けって……」
「落ち着いてるッスよ。ふふ、さぁ、誰みたいになるとダメかゆっくりと拳で語り合うッスよ。先輩……」
その後、騒ぎを止めにきた冒険者ギルドマスターのダイルが盛大に吹き飛ばされることになり、多大な犠牲が出たが、モモの怒りが収まった。
眉間に皺を寄せたクラリスさんに謝罪とクサレ鳥の素材を賠償金として渡すことで許してもらうことになる。
因みにモモ、ソマリ、ポメラの3人は暴れるだけ暴れてから、「モモ達は小腹が空いたから、おやつタイムッス」と言うとドレイクとパラを連れて屋台のある通りへと消えていった。
多分、エスから話を聞いてきたんだろうが……とんだ人災だったな……
クサレ鳥の素材は、セスの言った通り高値だった。ただ、結局プラスにならなかったなぁ。
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