101話
取り調べ室に缶詰状態にされた俺だったが、意外にも俺はすぐに解放されることになった。
今回はあくまでも話をするために出向いたので、イケメン眼鏡が退室した後に別の担当が来てくれたからだ。
チンピラがカイトに絡んでいた事実を伝え、俺が止めに入った事実も伝えると騎士側は口をポカンと開いてフリーズしていた。
「偽物とはいえ、10人の武装した相手を素手で押さえつけて、縛り上げたんですか……」
メモを取りながら、何度も確認されたが事実だから仕方ないよな。
「騎士団の格好をしてても、チンピラはチンピラだろうが?」
そう告げた途端に、俺を担当してくれた騎士は苦笑いを浮かべた。
その表情に俺が首を傾げると、言いにくそうに騎士は口を開いた。
「捕まった奴らなんですが、正式な騎士団ではなく、見習い騎士や騎士団で問題がありクビにされた者達でした。つまり、普通に騎士と変わらないって話です」
聞いてて、ドン引きした。まさかの関係者……身内かよ。
そうして、数時間が過ぎていき、俺は星空の下、騎士団を後にした。
「酷い目にあったな……まさかの夜中かよ」
昼飯どころか、夜飯まで……帰るの足が重いな。ったくよぅ。
俺はそんなことを考えながら、煙草に火をつける。
当然ながら、静まり返った街は灯りが消え、飲み屋街や、キレイな姉ちゃん達がいるような店のみが煌々と光り輝いていた。
街外れのスラム街を進んでいくと、不意に灯りが見えた。
俺の目に映る輝きが自分の店だと気づくとなんだか、ホッとする気持ちになる。
情けない話だな。ただ、ガキの頃は分からなかったが、灯りがある家ってのに、大人が温もりを感じるって意味が理解できたかもな。
「こんな時間まで起きてるのは、エスあたりか? 俺なんかのために夜更かしさせたら、罰が当たりそうだな」
ゆっくりと吸い寄せられるように、俺は店の扉に手を伸ばして中に入る。
客席には、テーブルに突っ伏したままタオルケットを掛けられて眠るドレイクとパラの姿があり、ソファー席では、ソマリとポメラが仲良く寝息を立てていた。
反対側のテーブルにもカイト達、少年組が眠っており、その姿だけで、俺を待っていたんだと理解できた。
そんな寝顔を見ていると、ドレイクが小さく呟いた。
「マスター……はやく……」
寝顔を見れば、寝言だと分かるが、俺も小さく返事を返す。
「悪いことしちまったなぁ。許してくれよ……」
そう呟いた俺の視線に、何故か満面の笑みを浮かべるモモとエスの姿が飛び込んできた。
俺に向かって、口に指を立てながら、片手で手招きするモモ。
ゆっくりと近づくと、不意に背後からエスの声がする。
「主様……話ある。騒ぐと皆が起きる。沈黙」
何考えてんだ! 驚いて声が出そうになった。必死に声を飲み込んだ俺は2人に従うことにした。
いや、むしろ、騎士団で長居する理由を作った俺には、従うという選択肢しかない。
宿屋側まで歩かされた後、薄暗い部屋の中に通される。
月明かりに照らされた部屋に入り、座らされるとモモは、小さなランプを点ける。
雰囲気だけでいえば、リアル版取り調べ室と言えなくもないが、質問してくる相手がモモとエスだと考えた途端に胃がキリキリする。
「先輩……違うッスね。もう先輩は被疑者エックスッス! さぁ、全部話して楽になりやがれッス!」
ベゴン!
モモの叩きつけた拳でテーブルが凹む。
【身体強化】しやがった! やべぇ……
「待て、モモ、落ち着け! 何が知りたいってんだ!」
「まだシラを切る気ッスか……往生際の悪い先輩……被疑者エックスッスね! なら、どれだけの罪を犯したかを教えてあげるッス!」
モモが数枚の手書きであろう絵を取り出すとスライドのように見せてくる。
「まず、被疑者エックスは、騎士団に向かうことになったッス! 間違いないッスね!」
俺は頷く。そうすると、騎士団に向かう坊さんの絵が出される。
親切に矢印で『被疑者エックス』と書いてあり、俺は突っ込みたくなったが我慢した。
「騎士団に向かう際に、被疑者エックスは、あるメッセージをモモ達に残したッス……騎士団に行く際に、誤解がないようにと、わざわざ口にして、待ってろッスよ! 考えてほしいッス、騎士団……つまり、アルムさんがいるんッス!」
さっぱり言いたいことが分からねぇ、むしろ、なんでアルムさんが出てくるんだよ!
「被疑者エックス! アルムさんと逢い引きした事実をモモはお見通しッス! よって、被疑者エックスには、尋問官による尋問をさせてもらうッス!」
「い、異議ありだ! 無茶苦茶だろうが!」
「却下ッス! 尋問官、カモーン! 被疑者エックスの口をしっかりと割りまくるッス!」
モモの声を合図に部屋の扉が開く。
扉から入ってきたのはエスであり、黒いマスクに黒い手袋を装着して、黒い布がかけられた台車を押しながら部屋の中に入ってくる。
「エス……そんな格好で何してんだよ」
「主様……エスはエスじゃない。尋問官」
隠す気ゼロかよ……はぁ、何を考えてるかマジにわかんねぇ。
「被疑者エックス! 尋問官は容赦しないッス。たっぷり震えるがいいッスよ! レッツ、ダンシング!」
モモとエスがグルグルと、その場で回転しながら、台車に掛けられていた黒い布に手をかける。
何が出てくるのかと思って見ていると、正面から、エスが俺に駆け寄り、ロープで俺をぐるぐる巻きにする。
「主様、目隠しする……視界ゼロ」
次の瞬間、俺の視界は完全に暗闇に包まれた。
実際は力任せに縄をちぎればいいだけの話だが、それをすると、話が拗れるからなぁ……
ただ、俺の耳に不穏な音が次々に響いていく。
ウィィィィイイインッ!
ガガガガガッ!
「お、おい! さすがになんの音か不安しかねぇぞ!」
「静粛に! うるさいッスよ! 尋問官、被疑者エックスに、スキル封じのスクロールを使うッス!」
「主様……ダンジョン産のスクロール。一時的、スキル封印」
「ま、【身体強化】ッ!」
力が、縄がちぎれねぇ! エスのやつ……コッコとか魔物以外にアイテムも作れたのかよ!
必死に縄をちぎろうとしたが、ビクともしない……やべぇ、マジにやべぇ!
「さぁ……被疑者エックス! 口を開けるッス! 開けないと、モモが力づくでこじ開けるッスよ?」
「モモ! 頼む、誤解だ! 絶対にお前ら何か、誤解してるって!」
俺の必死な抗議も虚しくスルーされ、俺は口を開くはめになった。
俺の口に広がったのは、冷たさと甘さだった。
「な、なんだ!」
「分からないんッスか? これは……そう、かき氷ッス! しっかりと味わうッス!」
なんだよ……焦って損したな。さすがに、考えすぎだったみたいだな。
「さぁ、尋問官。どんどんと、口にかき氷をツッコんでやるッス! 被疑者エックス、たっぷりと反省するッス……そして、モモ達の怒りを思い知るッスゥゥゥ!」
その後、必死に誤解を解いた……
因みに、誤解が解けるまで8杯のかき氷を食わせられ続けた。
食べさせられる度に、酷い頭の痛みに襲われ、それに最後まで耐えた自分を褒めてやりたい。
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