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第13話 幕間

ミルフィーは、『亀裂に落ちた俺を救出した』とだけラビリリス達に告げ、

「では」と言い残して去っていった。

去り際、ルゥの「またね」という声も聞こえた。

隠れ家に向かってくれたのだろう。


「毒竜と氷竜を貴方が……!?凄いわね……!」


状況を報告するとラビリリスが驚く。


「じゃあウチら陣営が2点ってコトっすか?

やりぃ~!じゃあ次勝てば勝ち確じゃないっすか!?」

「海賊陣営の成績はどちらに加算されたんですか?」

「シルキーってヤツが倒しちゃったから、パァっす。同点ってどうなるんすかね?」

「待って、リリ。これは、我々陣営の功績じゃないわ。

これはヒトツが単独で出した成果よ。横取りなんて恥ずかしい真似できない。

リリ風にいえば私たちは負け確ね」


一団の空気が、目に見えて沈む。


「この点数はエントリアに捧げるつもりですよ。

仮に俺個人に願いを問われる形になっても皆で決めた願いを言うつもりです」


沈黙。


「ええーーー!?いいんすかーーーぁ!?もがぁ」

「ちょ、ちょっと待ちなさい。ヒトツ。いくらなんでも謙虚すぎるわ。

そんな考え方してたら、アナタ身を滅ぼすわよ。」


行きすぎた提案に疑いの眼差しが俺に突き刺さる。

だが、ここで折れるわけにはいかない。

――最後まで、演じきる。


「構いません。これは――運命です。

奴隷として捕まったことも。今俺が皆さんに巡り合えたことも」

「……本気なの?」


ラビリリスが、探るように俺の瞳を覗き込んできた。

その真っ直ぐな視線に、「愛国者」の仮面を深く被り直して応える。


「ええ。そのために俺はここにいます」


セシリーのため、お前たちには役に立ってもらう。


彼女の瞳に決意の光が宿る。

タグを握りしめるその拳が、俺の「嘘」を真実だと信じ込んで震えていた。


「ありがとう……。

国に帰ったら、きっとアナタにタグを渡して見せる。

世界共通規格だか何だか知らないけれど――

こんなもの、ただの身分証じゃない。

貴方が私たちに逢えたことを運命だというなら、貴方に最高の未来を見せてあげる!」


***


俺達は宿屋に戻り、各自が休息につく。

麻袋が震えている……?


これは確か、伝心石だったか……


「しゃっっっっっっちょおぉぉぉおおーーーーーーーーーー♡♡♡♡♡

やーーーーーーーーーーっと出♡♡♡♡♡♡♡」


ブツ―……。

なるほど、石を割ると、あの甲高い耳障りな声が聞こえなくなるのか。


「ちょっとーーーーーーーーーーーー!!!!

なんで切んのおおおおおーーーーーー!!」


やかましい……。

麻袋に、「いつでもリンリンとおしゃべりできるよーに♡♡♡」と大量に詰め込まれた、狂気すら感じる量の伝心石。


「なんだ……」

「あれ?♡リンリンと寝落ち通話の時間じゃん?♡

なに怒ってんの?♡リンリンが怒っちゃおっかな♡」

「要件を言え」

「は~、相変わらずセッカチさんなんだから……。

でも、そこがちゅき♡」

「切るぞ」

「あー!まってまって。頼まれてたダンジョンの改修おわったよん♡」

「そうか、助かる」

「んもう♡社長のためだもん♡そっちの首尾はどーよ☆」

「二匹手に入った。……欲を言えば、あと一匹」

「すごいじゃーーーん!こりゃ一気に島の最強ダンジョンになっちゃうカモヨ~☆」


リンリンの声が嬉しそうに弾んでいる。


「そういえば、”東の滝”の『ヒゲ爺の友達』って名乗るゴブリンが、

ダンジョンにきてたヨ☆」

「”東の滝”……、本当か!?」

「えっ、うん」


思わず声が上ずった。


「今度来たら、必ず留まるように言っておいてくれ。最優先事項だ」


過去、ヒゲ爺が唯一の頼る先といっていた者だろう。

魔力を確保出来たら、以前のようにゴブリンをダンジョンに……。

あの頃になるべく近い状態で、セシリーを迎えたい。


「”例のモノ”はいつ頃になりそうだ?」

「ふふふ、そろそろカラスが届けてくれると思うよん☆」


***


「お父様ーーーー!」


キーン……と耳鳴り。

今日の伝心石はやたらと騒がしい。

ヴェネノの声だ。


「叫ばなくても聞こえるよ、ヴェネノ」

「あっ、そうなんデスね~。えへへ」

「クリスちゃんが、ここに来てくれたんデスよ~!」

「猫を被るのをやめたらどうだ。ヴェネノ。品がないな」

「なんですって」

「その口調の方が似合っているよ、”毒姫”」

「かっちーん。その呼び方やめてっていってるでしょーが!」


伝心石の向こうから、ぎゃいぎゃいと騒がしい声が響く。


「ヒトツ、聞こえていますか」


ミルフィーの声。


「明日は火竜の試練へ行くのですね。

今日、奴隷勢力も向かったようですが、無事返り討ちされたそうです」

「それは良かった。ミルフィー、頼みごとがあるんだが……」

「なんでしょう?」

「アグネアの母竜に逢えるか?」

「ええ、案内はできますが……」

「よし、今日の修行は早めに切り上げ、そちらの案内を頼みたい」

「え、ええ。構いませんが……」


***


今日はやる事が多い。

明日の試練の大詰めに向けてやれる事は全て終わらせる……。

あと必要はパーツは……。

里を歩くと、ドワーフ達が酒宴を開いている。


「ダボさん」

「んお?」

「ずいぶん楽しそうですね」

「おお、そりゃな!よくわかんねえ仕事になったけど、ようやく終わりそうなンダ!おめえも飲むけ?」

「せっかくのお誘いですが、ちょっとこの後、すこし用事がありまして……」

「ありゃ、オメェとまだ酒を酌み交わしてなかったからヨ、残念だナァ」


俺は話を切り出す。


「一つお聞きしたいのですが、貴方方は魔石の採掘を火山で行ってますよね」

「おお。その辺に生えてるやつは品質が微妙だからナ、火山のじゃネェと」

「あの灼熱の環境の中、よく長時間働いてられますね」

「そりゃ……コレのおかげヨ!」


ダボが自慢げに腰から手袋を取り出す。


「これは……?」

「ドワーフ工匠特性の『遮熱グローブ』よ!これならマグマだって怖かねえぜ!」

「ほう……マグマも?」

「ああ!デグがこないだ足滑らせて、マグマに落ちたんだがヨ、このグローブと同じ素材でできたスーツを着てたから助かったんだゼ!」

「本当かなぁ」

「おお?オメ、疑ってんのか?」

「マグマに触れても大丈夫ってのは、流石に信じがたいですね……」

「ナラ使ってみろぃ!俺らぁ、今日で魔石は必要分掘り終わってんだ!」


ダボが赤ら顔でこちらにグローブを渡す。


「そこまで言うなら、明日の火竜の試練で使ってみますよ。グローブの先でちょんちょんってね」

「だーぁいじょうぶだっての!」

「ははは。またまた~」


***


俺はミルフィーの隠れ家に辿り着く。


「来ましたか」


いつも通り、空からミルフィーが降り立つ。


「何やら大荷物ですね。今日は」

「仕込み用のな……修行の前に、クリスフィアスに逢いたいんだが」

「構いませんよ、待っています」

「作戦を話したい。ミルフィーもついてきてくれ」


さあ、明日は火竜の試練だ。

必ず”刻印”してみせる。

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