表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/26

第7話 鬼ごっこ

この海賊王ガルフ欲しいものは全て手に入れてきた。

ツキもいい、仲間は多く死んだが、今俺は生きてる。

そして、なんだ?祖竜からなんでも願いを叶えてもらえる儀式にまで参加しちまってる。


俺様って奴はつくづく……運がいい!!


眼前に広がるのは砂竜の卵らしい。


この卵。売りさばくのも面白そうだが……。

『巫女』ってやつ、滅茶苦茶強そうだ。

下手に手を出せばただじゃ済まねえ。


「親父ィ。こっからどうするんでサァ」

「そーーさなぁ。ナァ姉ちゃん。『卵の望み』なんだって?」

「『広大な大地や海を自由に泳ぎ回る事』を望んでいます」

「おぉー!いぃーねぇ!いぃーねぇ!俺様の夢と同じじゃねえかヨォ!」


じゃあ話は早え。


「どんなやり方でも、願いを叶えりゃいいんだよナァ!」

「?……ええ」

「『略奪(プレデター)』だ」


この俺様の固有技能(ユニークスキル)

欲しいと思った物を奪い取る。

御馳走でも、女でも、武器でも、夢でも!!


腹の奥に赤黒い渦が巻く。

同時に、卵から光の粒が浮かび上がった。


あれがこのトカゲ畜生の夢か!!


「喰え!!」


渦に呑み込まれる光の粒。


「うー……ゲェープ」

「な……に……?」


巫女が愕然とした顔をしてやがる。


「ギャハハハハ!あとは卵をその辺転がしてやりゃ、()()()()()()は叶うだろうぜ!!」

「さっすが親方!」


海賊が卵を転がし始める。


チョロイぜこの儀式とやら。俺様の能力がブっ刺さりじゃねえかよ。


巫女は弔いの儀式を淡々と進め始めた。

低く響く祈祷の声が、場の空気を塗り替えていった。


***


火山を少し下る。

中腹に広がる樹海へと、巫女に案内された。


巨大な鳥の巣のような網状に織り込まれた枝や蔦。

その中央に先ほどのように巨大な卵がそびえる。


奴隷たちが数名すでに到着し、敵意を持った眼差しでこちらを睨みつける。

その先頭にはゼノがおり、一際殺意むき出しでこちらを見るのはガームだ。


「あちらが飛竜の卵です。彼女の望みは

『思いっきり鬼ごっこをしたい』です」

「は?」


突拍子もないセリフに面食らう。


「全員で鬼ごっこを行います。

30分間、最後まで捕まらなかった者が勝者。

――彼女を楽しませてください。」

「でもよぉ、卵じゃねえか」

「問題ありません、私が飛竜を”降ろし”ます」


巫女がガクンと項垂れる。


「…………ふわぁ。

……わ!わ!わ!めっちゃ人いるじゃん!!」


先程までの冷静だった巫女の口調とはまるで異なる元気いっぱいな女の子の声。


「じゃあ、いっくよぉ~。捕まった人もちゃーんと鬼になって協力してね!

全員捕まえたらウチの勝ちだから!協力してくれないと殺しちゃうよー!」


目にも止まらぬ速さで巫女が大木まで走り、後ろを向く。


「100秒数えたらはじめるからねーー!!」

「おい。捕まらねえためにも、()()()()()()にも何してもいいのか?」


ガームがニヤつきながら尋ねると、巫女に口調が元に戻る。


「ええ、構いませんよ」

「ふぅん、そうかよ」


ガームは巫女の後ろに立つ。

巫女が数を数え始める。


「99……98……」


騎士団は散り、俺もできる限り遠く離れる。

ドワーフたちもワタワタと散らばる。


「49……48……」


ガームのあの動きはなんだ…?

まさか飛竜に正面から戦いを挑む気か?


「3……2……1……0!!」

「よぉ、俺はここにいるぜ」

「まずいっ、皆固まれ!!」


――こいつの狙いは……!

俺の声に意図を察したのはケレッゾとリリ。

騎士団は散り散りの状態。


「え?なになに?あ~鬼やりたいの?しょうがないなあ」


飛竜のタッチと同時にガームは走り出す。

ラビリリスに向かって。


「お前らをぶっ殺してから捕まえても問題ねえよなぁ!!」


振り下ろされる斧。

ラビリリスを引き裂こうとする瞬間、リリが割り込み、

長刀で受け止め、弾き飛ばされる。


「そっちはまかせたヨ~」


飛竜が奴隷たちを追い始める。

彼らはどんどんと”わざとらしく”捕まっていきこちらを追いかけ始める。


「鬼ごっこの始まりだ!!」


***


ガームらしい、上手い手だ。

先に鬼になってしまえば、相手の妨害が可能。


「だがそれは、こちらも同じこと」


奴隷の腹に拳を入れ、武器を落とさせ、空手になった手をわざと触れさせる。

よし、これで俺も鬼だ。


迫るガームの前に立ちはだかる。


「あ?」

「通行止めだ」


槍を突くもガームは飛びよける。


「てんめぇ……」


ガームが叫ぶ。


「おい!!鬼同士でいいのかよ!!」

「だめぇ~」


鱗が飛び、鎧を布のように引き裂く。

飛びのいていなければ腹を引きちぎられていた。


「鬼はちゃんとニンゲンを捕まえて~」

「ちっ」

「慌てんな、姫様をお前の前で嬲り殺してから相手してやる」


ならば、俺が騎士団全員を捕まえてしまえば……。

ラビリリスは拒否するであろうな……。ええい面倒だ。


逆に捕まえれば捕まえるほど奴らの戦力は増える。

どうすればいい。


***


「いや、ケレッゾ。それでいい」

「だが、それでは……」


俺は砂の壁を周囲に作る。


「時間を稼ぐ、リリさんを頼む」

「……任せたぞ」


騎士団を覆う砂の壁。

外から壁を壊さんと響く轟音。

ケレッゾは鬼だ。


鬼同士の殺し合いは禁じられているのであれば、

彼らは放っておいても問題ない。

リリのことも鬼として安全を確保してくれるだろう。


「ヒトツ、これは……」

「俺の土”魔術”です。

俺たちは”捕まらない事”が勝利条件です、なら」


足元に”腐食薬”をまく。

土”魔法”を行使する。急げ、壁は長くはもたない。


土壁に光が差し込む。


同時に俺たちの足元が砂となり―—―


「逃げる場所の指定はなかったよな!」

「キャアアアーーー!」


俺とラビリリスと騎士が2名。自由落下。


***


木にぶつかり、枝が刺さり、地面を転がる。


「大丈夫ですか?!」

「うぅ……」


ラビリリスと騎士はボロボロながらも、草のクッションのおかげで致命的な怪我は避けられた様だ。


始まってからの時間の感覚はつかみづらい。

まだ5分ほどの出来事だろう。


「皆、逃げましょう」

「ダメ」


騎士の一人が血を吹き倒れる。

どこから現れたのか、”ルゥ”と呼ばれていた女が立っていた。


「貴様っ!」


もう一人の騎士が剣をふりかぶるも空を斬る。

先程までいたはずのルゥの姿がない。


「ごめんなさいッ……、走るわよ!」


ラビリリスの声と同時に、駆けだす。

だが背後から声。


「ダメだよ」


俺の前を走るラビリリスの背後に、気が付けばルゥがいる。

その刃は彼女の首を引き裂いた。


「貴様ッ……」


俺の計画を……!と思った束の間、ラビリリスがルゥを剣で斬る。


ルゥは咄嗟に身をひるがえし致命傷は避けた。

だが、胸はばっくりと傷口が開いており血が流れ出ている。


「ん……血出すぎ」


ルゥは飛び、撤退していった。


「ラビリリス様!大丈夫ですか!」

「……ええ。私は。フルド、ごめんなさい。私のせいで。ザディウスは……」

「いえ……それも我々の責務ですので」


フルド、と呼ばれた騎士は顔を伏せる。

ラビリリスは確かに喉を引き裂かれたはず……どうなっている。


「ごめんなさい、ヒトツ。今見たことは忘れてくれる?」

「……もちろんです」


間違いない。彼女の固有技能(ユニークスキル)だろう。


***


森を駆け回っていると、飛竜の声が響く。


「みんな~~!鬼ごっこはおしま~~~い!!」


その声を聞き、俺たちは卵の元に戻る。

そこにはケレッゾと、座り込むリリ。

合流した俺たちをみたケレッゾは状況を察したのか、目を伏せフルドの肩に手を置く。


「いやぁ~遊んだ遊んだ!楽しかったよぉ。

結構ホンキだしたのに、全然捕まえられなくて悔しい~~!」


のんきな飛竜の声。


「いっぱい遊んでもらったし、後悔はないかな。

産まれられないのは残念だけど。竜族の掟だもんね」


ふ、と巫女の雰囲気が変わる。


「飛竜様は満足されたようです。」


安堵の空気が流れる。

では、と言い巫女が卵の前で祈祷を捧げる。


「皆さまも御霊の天界での安寧を願ってください」


頭を下げるよう言われ、皆従うよう促される。

あたりが優しい光に包まれ、天にその光の筋が登り、消えた。


「ありがとうございました。」


深々と巫女が礼をする。


「で、”どっち”の功績になるんだよ」


ガームが不完全燃焼と言わんばかりに口を開く。


「飛竜様は、ゼノ様を選ばれました」

「なっ、なぜです!」


ラビリリスが食い下がる。


「簡単な事です。この場で最も遊んでくれたのが彼だからですよ」


ゼノは満足げにこちらを見る。


「悪いナァ、ガームが迷惑かけたみたいで」

「迷惑……そんな言葉で済むと思っているの」

「おお、怖」


ラビリリスの視線に明確な殺意が宿る。


「殺される前に退散しますわ。

巫女の姉ちゃん、アイツらとは別々に帰らせてぇや」

「承りました……む、砂竜の弔いが完了したようです」


一同に衝撃が走る。


「”ガルフ”、海賊の男が執り行ったようです」

「……どうやって?」

「砂竜は『この世界の海や大地を泳ぎ回りたい』と願いました。彼らはそれを叶えたのでしょう」

「叶えたって……」

「おそらくは巫女の協力か、固有技能(ユニークスキル)か……。いずれにせよ、残りの卵は4つです。皆さま、引き続きよろしくお願いします」


巫女のその言葉と共に奴隷たちを連れ、その場を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ