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転生勇者(副業)の異世界旅行記《トラヴェローグ》  作者: 青咲凛
第3章 ナザレの夢魔 後編

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65. 東の事情?


 人の顔を見分けられない私にとって、写真だけを頼って容疑者を探すのは無理があった。

 だから本当はもともと、マーリンを頼って人探しをしようと思っていたのだが、残念ながら現在、件の少年は2年ぶりに再会した魔法の先生とキャッキャウフフ……もとい、私が提案した作戦の遂行のために例の魔道具を作ってくれている。


 人探しくらい頑張って自分でできるようにしなくては。


 というわけでアイスを食べて涼んだ私は、一路、観光ついでに眼鏡が売っていそうな港湾地区へと足を延ばした。


 というのも、ゲシュペンスト戦以降まだ一度も試していなかったスキルが今回の人探しに役に立つと考えたからである。


 今回利用するのは、ずばり〈結界〉というスキルだ。


 〈結界〉は領域を指定してそこに新しい術式──覚えている魔法やスキルの効果──を付与し、指定領域内にその効果を継続して発動することができるスキル。


 要するに空間付与系の魔法スキルだ。


 指定する領域には指標となる柱とか枠とかが必要な上、このスキル単体では全く何の効果も得られない故に単体の消費魔力量自体は〈金属操作〉よりも微量。


 ここにスマホの機能の1つである鑑定を付け加えたものを眼鏡の縁を領域の枠として設定することで、常時鑑定が発動した状態を維持することができるという算段だ。


 一種の魔道具の完成だな、うん。


 結界の内容──対象は何かとか、どれに対して発動するかという識別とか、あとは消費する魔力を魔石からにするか私からにするかとか、結構細かく設定できるみたいだし、多分今後もそれなりにお世話になることだろう。


「ここまで来ると、潮の香りが他より若干強いなぁ……。

 売り物のせいもあって若干生臭いというかなんというか……」


 黒いスキニーのジーンズに半袖の柄シャツを海風にはためかせながら街を歩く。


 ナザレは港湾都市ということもあって、こと港湾地区においては舶来品も多く、始まりの街やトゥバハンでは見かけなかったような様々なものが軒に並べられていた。

 例えば軒先の一等地を占めるのは、はるか遠方の国から運ばれたという見たこともない果物の乾物が詰め込まれた樽。

 砂糖が金貨で取引されるような市場のせいだろうか、甘口ワインのその濃厚な甘い匂いだけで子供たちが群がっているのも見受けられた。


 甘口ワイン……そういえばお酒ってあんまり呑んだことないな。

 新卒の時にリモート歓迎会で送られてきたビールくらいで……たしかそれもまずくて飲めなかった記憶がある。

 お酒の記憶と言えばそれくらいか。


 あ、未成年の頃におばあ様がテキーラの原液? を口に突っ込んできたことはあったっけ。

 めっちゃ口の中が痛かった記憶しかないけど……。


「おっと、そこからはお前さんの手の届く代物じゃないぞ」


 店主が、店の中で物色する子供の襟首を引き掴んで外に放り投げる。


 その先に見えるのは、鮮やかな青が焼き付けられた異国製のガラス杯。

 ランプの光を浴びて妖しく輝いていて、なんとも高級そうに見える演出がされていた。

 つけられている値段は何と大銀貨8枚。


(ぼったくり過ぎる……。

 いや、輸送コストと職人の手間を考えると、輸入品だと高くて当然にはなるか?

 ハンドメイドだしな……。

 いや、でも大型の家具と同じ値段はちょっと高すぎるか……?)


 さらに歩みを進めれば法外な値段でシナモンが売られていたり──1掴みで銀貨12枚──怪しげな店では怪しげなお香と共に黒くなったミイラの指が干されていたりするのが目に映った。


 何のミイラだよ……っていうかそれ売っていいものなのか……?


 見物しながらツッコミを入れつつ、お目当ての品物がないか探し回る。


 それにしても、熱い。

 熱いし眩しい。


 おかげでここに来るまでの間に〈熱中症耐性〉がレベル2になったし、ついでに〈日光耐性〉が付いてしまった。

 このスキルのおかげで幾分か暑さは軽減されたが、なおも肌を焼く熱は変わりないようだ。

 〈自動回復〉があるから日焼けとかはしないんだけど。


 そんなことを考えながら黒い野球帽の下からガラス細工店を中心に物色していた時だった。

 私は、ようやく眼鏡を売っているエリアを発見することに成功した。


「おお、いいなこれ……」


 吊り棚に無数に掛けられていたのは、銀製の丸縁サングラス。

 眼鏡がいいかなと思っていたが、今思えば眼鏡って医療器具だし、度が入っていたら別に視力が悪いわけではない私にとっては逆効果でもあった。

 対してサングラスならこの暑い日差しの中でも充分に見渡せるし、何よりお洒落だ。


(結構いろんなバリエーションがあるな……)


 メジャーな黒っぽいものから茶色っぽいもの。

 他にも濃い緑や青のサングラスまで様々だ。


 中でも私が気に入ったのは、濃い蒼のサングラス。

 マーリンの瞳と同じ色である。


「値段は……わ、これだけなんか異様に高いな……」


 他のサングラスが大銀貨1枚とか2枚に比べて、このサングラスだけ大銀貨10枚。

 道中で見かけた杯でさえ大銀貨8枚だったのに、それを上回るとは。


「なんでサングラスごときがこんな値段なんだ……?」

「サングラスごときだって?

 聞き捨てならんこと言うなぁ嬢ちゃん」


 カウンターに腰を下ろしていた麦わら帽子の商人が、鼻を鳴らしながら口を開いた。


「そもそもガラス自体が高いんだ。

 濁ったやつならまだしも、ここまで透き通った色ガラスともなるとそう作れる職人は多くない」

「そうなんですね……」


 手作りともなると、きっといろいろ大変なのかもしれない。

 前世で、理科の実験でガラス球を作ったことはあったけど、あれだって既に完成してるガラス棒を溶かして作ったものだったしな……。


「それに噂じゃ、ここ最近東の方では魔物の活動が活発になってきてるって噂だ。

 やっぱり、アッシェンラの急な文化発展が原因なのかね……」

「アッシェンラ?

 魔物の活動と何の関係が──」


 ──などと、そんな話をしていた時だった。

 背後の通りから、何やら騒がしい声が聞こえてきたのは。


「よっしゃ、捕まえたがよ!」

「畜生! 何なんだお前、何なんだお前!?」


 振り返ってみると、そこには麦わら帽子にぼろぼろのマントを羽織った背の高い青年が、フードを被った痩せたおじさんを踏みつけて捕縛している姿が目に映った。


「またあいつか……」

「有名なんですか、あのスリ?」


 麦わら帽が捕まえた男から、おそらく彼がひったくったのであろう鞄を回収して元の持ち主に返している姿を見ながら尋ねる。


「いや、そっちじゃなくてあの麦わら帽子のアッシェンラ人よ。

 ここらへんで金持ち相手のスリが多いと聞いたのか知らんが、捕まえるたびに高額な報酬を請求するちょっと厄介な奴でな。

 嬢ちゃんも気を付けろよ?」

「何やってんだよ偽坂本龍馬……」


 店主が警告する最中、持ち主にお金を請求して困らせているのを見ながら眉を顰める──と、相手の方もこちらの存在に気が付いたのか、満面の笑みを浮かべて手を振りながら近寄ってきた。


「まさか知り合いか?」

「いえ、一度助けられたことがあって、一瞬だけ」

「金は要求されなかったのか?」

「その時はスられたわけじゃなかったので」

「なるほど」


 短い会話のうちに、店主の体が徐々に私から距離を置こうと遠ざかっていくのを感じる。


 こいつ、そんなに嫌われてるのか。

 まあ、聞いた話が確かなら厄介だと思われるのは分からなくはないが。


 私は彼が来る前にささっと会計を済ませると、その場で手早く〈結界〉をサングラスに付与した。


 うん、彼の本名までよく見える。


「おんしゃ昨日の!

 今日は昨日の白いがはおらんがか?」

「ええ、今日は1人ですよ坂田(さかた)龍之介(りゅうのすけ)さん。

 それと、サカモト・リョーマってあれやっぱり偽名だったんですね?」

「な、なんで儂の名前を!?」


 ついでに魔族かどうかもチェックしておく──どうやら異世界人で確定みたいだ。


「調べたので」

「儂、まだこっち来て本名名乗っとらんのやけどな……」

「方言崩れてますけど」


 唐突な関西弁に、思わずツッコミを入れる。


「名前バレたんやったらもうしゃあなしやろ。

 フリすんのも疲れてきたところやし、心機一転、また別人のフリするわ。

 次からは才谷って名乗ろっかな……」


 頭の後ろを掻きながら、そんなことをぶつぶつと呟く坂田。

 その手首には、見覚えのあるスマートウォッチの姿。


(リューが勇者はみんな何かしらの神器を持ってるって言ってたけど、こいつのはあれが神器か)


 林檎を齧ったロゴマークでお馴染みな某企業のウェアラブルデバイス。

 サングラス越しに覗いてみると、神器であることとその能力の詳細がちらりと見えた──が、全部読む前に腕を降ろされてしまった。


「なあ、嬢ちゃんはどう思う?」

「普通にダサいと思います。もっと一般的な名前にしたらどうですか?」

「ダサいってなんやねん、恰好ええやろ!

 ええか、才谷ってのは坂本龍馬が──」

「ごほん!」


 白熱気味に語りだそうとした時だった。

 私の背後から、わざとらしい咳払いが聞こえて来て、私は肩をすくめた。


「あー、ここだと迷惑になりますし、場所を移しませんか?」



現在の悠里のステータス


 +++


■ステータス■

 名前:鑑 悠里 Lv.12

 性別:女

 種族:異世界人 Lv.1

 職業:ノービス Lv.1

 称号:〈異世界人〉Lv.1

    〈臆病者〉Lv.2

    〈何にも束縛されない〉Lv.2

    〈無謀な挑戦者〉Lv.2

    〈導師見習い〉Lv.1

    〈追跡者〉Lv.1

    〈暗がりに潜む者〉Lv.1

    〈呪術医見習い〉Lv.1

    〈樵見習い〉Lv.1


 HP:120/120

 MP:300/300

 SP:270/270


 筋力:102

 活力:13

 速度:13

 知能:31

 感覚:19


 残りステータスポイント:0


■スキル■

◇武術系◇

 〈剣術〉Lv.5

  └〈偃月殺法〉Lv.1

   〈聖柄の太刀〉Lv.1

   〈居合抜き〉Lv.3

   〈鎧徹し〉Lv.1

   〈五月雨斬り〉Lv.1

 〈体術〉Lv.1

  └〈空気投げ〉Lv.1

   〈投擲〉Lv.1

   〈卍蹴り〉Lv.1

   〈蝦蹴り〉Lv.1


◇魔術系◇

 〈呪詛マスタリ〉Lv.1

 〈魔法〉Lv.1

  └〈術式理解I〉Lv.1

 〈結界〉Lv.1

  └〈反転結界〉Lv.1


◇身体操作系◇

 〈身体操作マスタリ〉Lv.1


◇防御・回復系◇

 〈自動回復〉Lv.5

 〈食い縛り〉Lv.1


◇耐性系◇

 〈驚愕耐性〉Lv.1

 〈痛覚耐性〉Lv.2

 〈負傷耐性〉Lv.4

 〈転倒耐性〉Lv.1

 〈気絶耐性〉Lv.2

 〈トラウマ耐性〉Lv.1

 〈脱水症耐性〉Lv.1

 〈熱中症耐性〉Lv.2

 〈精神攻撃耐性〉Lv.1

 〈拘束耐性〉Lv.1

 〈呪詛耐性〉Lv.4

 〈隷属無効〉Lv.1

 〈恐怖耐性〉Lv.3

 〈不意打ち耐性〉Lv.1

 〈閃光耐性〉Lv.2

 〈麻痺耐性〉Lv.1

 〈粉塵耐性〉Lv.1

 〈冷気耐性〉Lv.1

 〈病魔耐性〉Lv.1

 〈瘴気耐性〉Lv.1

 〈日光耐性〉Lv.1


◇隠遁系◇

 〈忍足〉Lv.2

 〈気配隠蔽〉Lv.2


◇感知系◇

 〈洞察〉Lv.2

  └〈名推理〉Lv.1

 〈気配察知〉Lv.5

  └〈霊感〉Lv.1

   〈先の先〉Lv.1

 〈魔力感知〉Lv.1

 〈遠見〉Lv.1

 〈暗視〉Lv.1


◇生活系◇

 〈交渉〉Lv.2

 〈高速思考〉Lv.4

  └〈並列思考〉Lv.3


◇ギフト系◇

 〈水神の加護〉Lv.1

  └〈水中呼吸〉Lv.1

   〈水上歩行〉Lv.1

   〈水袋勁〉Lv.1


 〈木神の加護〉Lv.1

  └〈成長促進〉Lv.1

   〈効力増強〉Lv.1

   〈笑桜勁〉Lv.1


 〈火神の加護〉Lv.1

  └〈二段跳び〉Lv.1

   〈燃焼無効〉Lv.1

   〈火鳥勁〉Lv.1


 〈土神の加護〉Lv.1

  └〈障壁〉Lv.3

   〈土圧無効〉Lv.1

   〈捻央勁〉Lv.1


 〈金神の加護〉Lv.1

  └〈金属操作II〉Lv.1

   〈即死耐性〉Lv.1

   〈拡金勁〉Lv.1


 〈五行神の加護〉Lv.1

  └〈気功法〉Lv.1

    └〈遠当て〉Lv.1

     〈沈墜勁〉Lv.1

     〈纏絲勁〉Lv.1

     〈十字勁〉Lv.1


 残りスキルポイント:0


 +++



読んでいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願いいたします!


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