63. 図書館?
容疑者について調べるにあたって、私は服部から得た容疑者の情報について整理することにした。
容疑者は3人。
1人は男性。
アッシェンラ人風の身なりをした青年で、今朝も会った通りなぜか坂本龍馬のふりをしている。
戦闘能力については見た感じかなり高く、部隊の諜報員が集めた資料にもかなりの手練れと書かれていた。
諜報員による身辺調査では、ナザレ以前の足取りが掴めていない。
「一番古い目撃例が2年前か……」
司祭からの聞き取り調書などによれば、この時は祭事に使われる香炉が盗まれたと思って神殿騎士たちに追いかけさせたが、ことごとく返り討ちにされてしまったらしい。
しかし後で調べてみると香炉の数には変わりがなくて、おそらく盗もうとしたがバレて諦めたのだろうと結論が書かれていた。
「何やってんだよ偽サカモト・リョーマ……」
残りの2人は女性。
うち、1人は考古学者で、こっちは偽坂本龍馬と違って身の回りがかなりしっかり調べられている。
彼女の名前はマリン。
隣国、バルト共和国の考古学ギルドに所属している人物で、現在はナザレ湾の海底神殿について研究しているらしい。
考古学者になって日は浅く、また神話に関する考古学的調査において神話に描かれるスタンピードは実在した、というかなりマイナーな──それこそ考古学会で多くの考古学者に非難されている研究論文の執筆記録があるらしい。
おそらくは考古学研究においてはかなりマイナーだろうそんな論文を、ここの諜報員はよく見つけてこれたものだとため息を吐く。
多くの学者が批判──ではなく非難している論文だ。
そう簡単に手に入るものではないだろうが……いや、逆に非難されていたからこそ見つけやすくもあるのか?
「それで、問題の香炉の論文は……」
ページをめくり、彼女の容疑のきっかけになった論文の概要を調べてみる。
「悪夢を見せる香炉は政戦の道具として利用されたものの1つである可能性……か」
発掘当時は破損していたため、修理のためにヘイストン通りの鍛冶屋に持っていき修繕。
レプリカも作らせた……。
これだけ見ると普通の考古学者みたいだが、触媒となった悪夢を見せる香炉の経緯を考えると怪しくも見える。
私はファイルをめくり、次の人物の情報を確認する。
「この人が、マーリンの……」
長い銀髪の、長身の女性。
手に大量の本を抱えた姿が写真に撮られている。
彼女の名前はエラ。
神殿付属図書館の司書をしている魔法使い。
調査によれば司祭と浮気をしていて、その時の贈り物に同じ香炉が送られている……と。
「やっぱり、資料だけではわからんな。
実際に見てみないと……」
背もたれに体を預け、うぅん、と唸り声を上げる。
「明日はマーリンと一緒に図書館に行くか。
個人的な知識だけじゃ足りないって言ってたし」
それに、こうすれば同時にエラが魔族かどうかも確かめられる。
まさに一石二鳥だ。
私は席を立つと、マーリンの部屋へ情報を共有しに行くことにした。
***
翌日。
神殿付属図書館は、ナザレの西側、一際標高が高くなっている岩山の上に立つ神殿──の、北側の麓から歩いて10分ほどの位置にあった。
巨大な、白亜の石造り建造物。
そういったジャンルで言えば、南側の空に見える神殿にも風貌は似ている。
巨大な白い柱に囲まれ、広い庇の下には多くの観光客でにぎわう。
巨人用かと思うほど大きな長方形の門には樫の大扉が設けられ、その両脇には警備員だろう制服を着た兵士が槍を持って控えているのだ。
もっとも、門が大きすぎる故に簡易的な衝立で出入り口を半分に割って、一方通行にしているようではあるが。
「圧巻だねぇ」
少し遠い場所から入り口を眺めながら、私は感嘆の息を吐いた。
「本来は一般の立ち入りを規制しているんだが、イベントごとがあるとこうやって観光客から入館料を取って内部を解放しているんだ。
まぁ、全部開放してるわけじゃなくて、立ち入れるのは1階限定なんだがな」
〈幻惑〉によって黒く染められた髪の下で、蒼い目を細めながら呟く。
「お日さんが眩しいなら帽子貸すけど?」
「いやいい。
それより喉が渇いた」
「はい、水筒」
「ありがとう」
ついでに自分の分もストレージからペットボトルを出して喉を潤す。
眠り猫で淹れてもらった、冷たいミルクと森林檎茶を混ぜたオリジナルロイヤルミルクティ。
森林檎のさわやかな甘みが溶けた濃厚なミルクの味わいが最高においしい。
(帰ったら作り方教えてもらおう)
隣で喉を鳴らすマーリンを見上げて、水筒を回収する。
(あ、喉仏)
特に意味はないけど、なんていうか喉仏っていいよね……。
華奢な体でもこれがあるだけで男の子なんだなぁ、って感じがしてすごくその──
「どうかしたのか?」
おっと、これ以上はまずいか。
私は誤魔化すように笑みを返した。
「いや、首が見えてるの新鮮だなと思っただけだよ」
「それは……新鮮なのか?」
「新鮮だよ、なかなか見れないし」
水分補給を済ませて館内に足を踏み入れる。
幸い、〈幻惑〉がうまく機能してくれたおかげで館内へはすんなり入ることができた。
外の石造りの雰囲気から打って変わって、大理石のフロアと円柱によって支えられた空間には、木製の調度品で彩られていた。
大きなカウンター。
陽光が直接入らないように設計された広い開架室。
中2階の廊下や階段はすべてに既つやを引き出された木製で、天井からはガラスと鉄の細工が吊られているのが見えた。
「さすがに冷房は効いてなかったか……」
観光客の体温で熱のこもる室内を歩きながら小声で愚痴をこぼす。
「当たり前だろ、あんなのうちか眠り猫にしかないに決まってる」
「そうなの?
空調の魔道具とかあるものだと思ってたけど」
首を傾げると、マーリンは難しい顔をして
「あるにはあるけど、安定して長期間、広範囲にというのは魔道具には難しいんだ。
効果の再現性以前に、干渉領域が広すぎるとその分魔力は多くの人の思念を拾うことになる。
すると過干渉を起こして術式が壊れる」
「起点だけ極端に冷やして、風を起こして間接的に拡散するとかはだめなの?」
「できなくはないが、この広さを一気に冷やすには魔力が足りない……いや、区分けして小さいのでエリアごとに……そうか、間接的な反応ならこの問題は……いやしかしそうなると安定率が犠牲になるし……うぅん……」
何やら閃いたみたいだが、すぐに何かの問題にぶつかったらしく唸り声を上げ始める。
これはさぞかし重症に違いない。
とはいえ、暑いことには変わりない。
私はショップから小型の携帯用扇風機を2つ購入すると、片方を彼に渡した。
「はい、これ。
これで少しはましになると思うから」
「小さい扇風機……こんなのもあるんだな」
「うちにあるのは大きい壁掛けだけだからね。
でもこれでも充分な風量は出るよ」
「それは助かる」
言って、電源をつける。
内部のファンが回り、柔らかい風が彼の前髪を押し上げた。
「まあいいや。
じゃあ、さっそくだけどエラさんを呼びに行こうか」
私はにこりと笑みを浮かべると、彼の手を引いてカウンターまで歩いていった。
現在の悠里のステータス
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■ステータス■
名前:鑑 悠里 Lv.12
性別:女
種族:異世界人 Lv.1
職業:ノービス Lv.1
称号:〈異世界人〉Lv.1
〈臆病者〉Lv.2
〈何にも束縛されない〉Lv.2
〈無謀な挑戦者〉Lv.2
〈導師見習い〉Lv.1
〈追跡者〉Lv.1
〈暗がりに潜む者〉Lv.1
〈呪術医見習い〉Lv.1
〈樵見習い〉Lv.1
HP:120/120
MP:300/300
SP:270/270
筋力:102
活力:13
速度:13
知能:31
感覚:19
残りステータスポイント:0
■スキル■
◇武術系◇
〈剣術〉Lv.5
└〈偃月殺法〉Lv.1
〈聖柄の太刀〉Lv.1
〈居合抜き〉Lv.3
〈鎧徹し〉Lv.1
〈五月雨斬り〉Lv.1
〈体術〉Lv.1
└〈空気投げ〉Lv.1
〈投擲〉Lv.1
〈卍蹴り〉Lv.1
〈蝦蹴り〉Lv.1
◇魔術系◇
〈呪詛マスタリ〉Lv.1
〈魔法〉Lv.1
└〈術式理解I〉Lv.1
〈結界〉Lv.1
└〈反転結界〉Lv.1
◇身体操作系◇
〈身体操作マスタリ〉Lv.1
◇防御・回復系◇
〈自動回復〉Lv.5
〈食い縛り〉Lv.1
◇耐性系◇
〈驚愕耐性〉Lv.1
〈痛覚耐性〉Lv.2
〈負傷耐性〉Lv.4
〈転倒耐性〉Lv.1
〈気絶耐性〉Lv.2
〈トラウマ耐性〉Lv.1
〈脱水症耐性〉Lv.1
〈熱中症耐性〉Lv.1
〈精神攻撃耐性〉Lv.1
〈拘束耐性〉Lv.1
〈呪詛耐性〉Lv.4
〈隷属無効〉Lv.1
〈恐怖耐性〉Lv.3
〈不意打ち耐性〉Lv.1
〈閃光耐性〉Lv.2
〈麻痺耐性〉Lv.1
〈粉塵耐性〉Lv.1
〈冷気耐性〉Lv.1
〈病魔耐性〉Lv.1
〈瘴気耐性〉Lv.1
◇隠遁系◇
〈忍足〉Lv.2
〈気配隠蔽〉Lv.2
◇感知系◇
〈洞察〉Lv.2
└〈名推理〉Lv.1
〈気配察知〉Lv.5
└〈霊感〉Lv.1
〈先の先〉Lv.1
〈魔力感知〉Lv.1
〈遠見〉Lv.1
〈暗視〉Lv.1
◇生活系◇
〈交渉〉Lv.2
〈高速思考〉Lv.4
└〈並列思考〉Lv.3
◇ギフト系◇
〈水神の加護〉Lv.1
└〈水中呼吸〉Lv.1
〈水上歩行〉Lv.1
〈水袋勁〉Lv.1
〈木神の加護〉Lv.1
└〈成長促進〉Lv.1
〈効力増強〉Lv.1
〈笑桜勁〉Lv.1
〈火神の加護〉Lv.1
└〈二段跳び〉Lv.1
〈燃焼無効〉Lv.1
〈火鳥勁〉Lv.1
〈土神の加護〉Lv.1
└〈障壁〉Lv.3
〈土圧無効〉Lv.1
〈捻央勁〉Lv.1
〈金神の加護〉Lv.1
└〈金属操作II〉Lv.1
〈即死耐性〉Lv.1
〈拡金勁〉Lv.1
〈五行神の加護〉Lv.1
└〈気功法〉Lv.1
└〈遠当て〉Lv.1
〈沈墜勁〉Lv.1
〈纏絲勁〉Lv.1
〈十字勁〉Lv.1
残りスキルポイント:0
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次回もよろしくお願いいたします!




