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転生勇者(副業)の異世界旅行記《トラヴェローグ》  作者: 青咲凛
第2章 ナザレの夢魔 前編

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58. 飛行魔法?


 どこまでも広がる丘陵地帯──その上空を、もの凄い速度で飛翔する人影が2つ──否、正確には1人と1箱──。


「うわわわわわわわわわわ!?」

「口開けてると舌噛むぞ!」


 〈障壁〉で作った箱の中から聞こえてくる悲鳴にそう返しながら、私は眼下を流れていく景色を見下ろした。


 まるで、緑色の海の上を泳ぐ鳥になった気分だ。

 向かい風が強すぎて、ゴーグルなしでは目を開けていられない。


(それにしても、この方法は正解だったな。

 走るより断然速いし、体力もあまり使わない。それにMPの消費も気にするほどでもないのがいい)


 どうしてこうなったのか。

 答えは単純だ。

 ダンジョンからトゥバハンまでは歩いても半日はかかる。

 それを帰りもやるのは流石にしんどいし、やったとしても到着は真夜中。

 門は確実に閉まっていて、街に入ることなんてできないだろう。


 そこでどうにかして馬車より早く街に着く方法はないかと考えた結果──飛ぶことにしたのだ。


 バイクでも車でも買えばいいじゃないか、と思うかもしれないがこれが実は結構高い。

 車は少なくとも大金貨2、3枚は必要だし、バイクは大銀貨10枚くらいで買えはするものの、多分道中で人に会ったら面倒なことになるのは必至だ。


 そこでどうにか目立たずに移動する方法はないかと考えて──そして半分以上のロマンというエッセンスを加えた結果──靴の裏に鉄板を貼り付けて飛ぶという選択をしたのである。


 消費魔力だってそんなに大きくない。

 余っていたポイントを使ってレベル5になった〈金属操作〉は、進化して〈金属操作II〉になった。

 おかげで消費MPは1分当たり1点まで効率が上がり、現在のMP総量が120なので都合約2時間は使い続けられるようになったのである。


 まあ、実際はマーリンを運ぶのに〈障壁〉も使っているし、地上から見えないように〈認識阻害〉も使っているから連続稼働は1時間弱程度にはなるんだが──それでも眼下を駆けて行った馬車の動きと比べると体感5倍以上は速い。

 おそらく、トゥバハンまでなら1時間くらい飛べば到着するだろう。


 これなら、始まりの街まで飛んでもいいかもしれないな。


 ──なんて思っていた時期が私にもありました。


「おえぇぇぇぇぇぇ……」


 数分ほど飛んだあたりだった。

 体にかかる衝撃というか慣性というか、そういうものに体がついてこれなかったのだろう。

 〈障壁〉の中で盛大に吐いてしまったのである。


「なんていうか……その、ごめん……」

「ほんとだよ全く……うぷ……」


 木陰から悪態をつくマーリンに、私はしゅんとした。


「内臓が全部出るかと思った……」


 どうやら、一般人にはこの速度での移動は耐え切れないものらしい。

 体感的に電車の倍くらいはスピード出てた気がするし、そう考えてみるとそこに感性制御もクッションも何もなしで運ばれればこうなっても仕方ないのかもしれない。


「次はもっとうまくやるから!

 そうだ、形状を考えよう! 新幹線だって鳥のくちばしの形をまねてたし、障壁もその方向でやれば少しはましに──」

「──乗らねぇよ!?!?!?!?」


 仕方ないので、今回は自転車に乗って帰ることにした。


 まぁ、もう1回始まりの街でマーリンに三輪車乗らせてるし、バイクとか車よりはまだ目立ちにくいでしょ。


 そう思って準備すると、マーリンはなんだか疑わし気な目を向けて


「これで空飛ぼうとか言ったりしないよな?」

「……だめ?」

「はいはい、かわい子ぶってもダメなものはダメですよご主人様。

 まったくこの人は常識ってもんが欠片もないんだから……」

「それは言い過ぎじゃない!?」


 くっ、某宇宙人みたいにちょびっと浮かせて新しく進化した〈金属操作II〉でほんの少し加速しようと思ってたのに!


 ***


 始まりの街には翌日の昼過ぎについた。

 あの後トゥバハンで一晩過ごして、朝食を済ませてからすぐに街を出たのである。


「Eランク昇格おめでとうございます」


 受付嬢に報告すると、新しくなったギルドカードが送られた。


 ダンジョンを攻略したのはマーリンなのだから、この手柄はマーリンに譲りたかったが仕方ない。

 奴隷は冒険者ギルドに登録できないのだから。


「ありがとうございます」

「それにしても、こんなに早くランクアップされる方は初めてですよ。

 気になって記録を調べてみたのですが、当ギルドでは最速記録です」


 言って、笑みを浮かべる受付嬢。


「平均的にはどれくらいかかる者なんですか?」

「そうですね、大体半年から1年ってところでしょうか。

 皆さん最初は自分の顔を覚えてもらうところから始めますので」


 なるほど、と頷く。


 指名依頼を受けるのが一番手っ取り早くランクを上げる方法らしいし、そこを考えるとまずは広く顔を知られるように動く必要があるのだろう。

 街の人たちから信頼を勝ち取るのは、本来そんなに簡単なことではないのだ。


 私の場合は危険すぎるダンジョンの発見報告と戦闘力にかなり恵まれたせいだろうから、かなり例外中の例外なのだろうな。


 猫の件で騎士団には顔が売れているし、勇者関係でおそらく神殿からの後押しもありそうだけど。


「あ、そういえば、昨日神殿の方がユーリさんを探しておられましたよ。

 個人的なお願いがあるからと、帰ってきたら神殿に向かうように言伝を貰っています」


 そんなことを考えていた時だった。

 不意に、彼女の口からそんな言葉が聞こえて私はマーリンと視線を交わした。


 間違いない、勇者依頼だ。


「ちなみにお願いの内容って聞いてますか?」

「いえ、伝言を頼まれてすぐ去られましたのでそこまでは……」


 苦笑いを浮かべる受付嬢。

 勇者関連の仕事だろうし、多分一般人には知られちゃまずいのだろうな……とはいえ。


「その内容、物次第ではこっちで掛け合って指名依頼としてギルドを通して受けることにするってことは可能ですか?」

「ええ、できますよ。

 ギルドとしても神殿に借りを作れるのは好ましいですから」

「ありがとう、じゃあもしかしたらまた誰か来るかもしれないから、その時は対応よろしくお願いします」

「承りました」


 軽く膝を曲げる彼女に私は笑みを浮かべると、小さくお礼を言ってギルドを後にした。


 ***


 一度家に帰って旅の汚れを落とした私たちは、それなりに綺麗な格好に着替えてから神殿へと足を運んだ。

 冒険者としての姿で神殿に直行するのは個人的にはばかられたし、何よりあそこには腹黒ドS──だと勝手に私が思っている──美青年神官アンジェロがいるのだ。

 汗臭いまま会うのはちょっと恥ずかしい。


「気にしすぎだと思うぞ」


 応接室で担当者を待っている間、私の背後に控えていたマーリンが不意に呟いた。


「神官は日ごろから負傷した冒険者や兵士を看てるんだから、ちょっとやそっとの臭いじゃ気にしないって」

「だとしても、今は怪我人じゃないんだし、少しは気にしたほうがいいと思うんだよ」

「ご主人様がそういうなら……」


 何か言いたげに口籠るマーリン。

 なんだろう? もしかして嫉妬してるのか?


(いや、流石にそれはないか)


 私だって自分がそんな人間じゃないことくらい把握している。

 恋人いない歴=年齢の、これまでモテとは縁遠い人生だったのだ。

 異世界に来たからってラノベみたいに早々にモテ始める物でもないし、特にそんな努力なんてしていない私がマーリンに嫉妬されているだなんておこがましいにもほどがある。


 まったく、現実を見やがれって話だよね。


 そんな風に出された森林檎(メラ)茶に口をつけて待っていると、不意に扉をノックする音が聞こえてきた。


「失礼するよ」


 入ってきたのは、40台半ばの筋肉質のおじさんだった。

 後ろから何人か女性の神官が付いてきてはいたが、その中にも彼の姿はおろか、男性神官の姿は見えない。

 どうやらアンジェロはいないみたいだ。


 少し期待していただけあって一瞬がっかりする。

 だがそれを態度に出すわけにはいかない。

 私は意識を切り替えると、ソファから立って彼を出迎えた。


「どうも、座ったままでいいよ。

 こっちは君に依頼する側なのだからね」


 顔の輪郭を覆うように生えた立派な髭。

 オールバックの赤毛には白髪が混じり、鋭い眼光の蒼い瞳は、片方が眼帯によって隠れていた。


「リューの方から事前に話はあったと思うが、改めて挨拶をさせてもらおう。

 私は、神殿が管轄する勇者部隊の指揮官を務めているジャックだ。

 君がもしうちに加わるのなら、直属の上司になる」


 言って、正面のソファに腰を下ろして足を組む。


「まずは話を聞きましょう。

 傘下に入るかどうかは、そのあとでもいいですよね?」

「慎重だねぇ。

 嫌いじゃないよ、そういうの」


 二ッと笑みを浮かべて、お付きの女性神官が運んできた森林檎(メラ)茶に口をつけた。




現在の悠里のステータス


 +++


■ステータス■

 名前:鑑 悠里 Lv.12

 性別:女

 種族:異世界人 Lv.1

 職業:ノービス Lv.1

 称号:〈異世界人〉Lv.1

    〈臆病者〉Lv.2

    〈何にも束縛されない〉Lv.2

    〈無謀な挑戦者〉Lv.2

    〈導師見習い〉Lv.1

    〈追跡者〉Lv.1

    〈暗がりに潜む者〉Lv.1

    〈呪術医見習い〉Lv.1

    〈樵見習い〉Lv.1


 HP:120/120

 MP:120/120

 SP:190/190


 筋力:64

 活力:13

 速度:13

 知能:13

 感覚:19


 残りステータスポイント:0


■スキル■

◇武術系◇

 〈剣術〉Lv.5

  └〈偃月殺法〉Lv.1

   〈聖柄の太刀〉Lv.1

   〈居合抜き〉Lv.3

   〈鎧徹し〉Lv.1

   〈五月雨斬り〉Lv.1

 〈体術〉Lv.1

  └〈空気投げ〉Lv.1

   〈投擲〉Lv.1

   〈卍蹴り〉Lv.1

   〈蝦蹴り〉Lv.1


◇魔術系◇

 〈呪詛マスタリ〉Lv.1

 〈魔法〉Lv.1

  └〈術式理解I〉Lv.1

 〈結界〉Lv.1

  └〈反転結界〉Lv.1


◇身体操作系◇

 〈身体操作マスタリ〉Lv.1


◇防御・回復系◇

 〈自動回復〉Lv.5

 〈食い縛り〉Lv.1


◇耐性系◇

 〈驚愕耐性〉Lv.1

 〈痛覚耐性〉Lv.2

 〈負傷耐性〉Lv.4

 〈転倒耐性〉Lv.1

 〈気絶耐性〉Lv.2

 〈トラウマ耐性〉Lv.1

 〈脱水症耐性〉Lv.1

 〈熱中症耐性〉Lv.1

 〈精神攻撃耐性〉Lv.1

 〈拘束耐性〉Lv.1

 〈呪詛耐性〉Lv.4

 〈隷属無効〉Lv.1

 〈恐怖耐性〉Lv.3

 〈不意打ち耐性〉Lv.1

 〈閃光耐性〉Lv.2

 〈麻痺耐性〉Lv.1

 〈粉塵耐性〉Lv.1

 〈冷気耐性〉Lv.1

 〈病魔耐性〉Lv.1

 〈瘴気耐性〉Lv.1


◇隠遁系◇

 〈忍足〉Lv.2

 〈気配隠蔽〉Lv.2


◇感知系◇

 〈洞察〉Lv.2

  └〈名推理〉Lv.1

 〈気配察知〉Lv.5

  └〈霊感〉Lv.1

   〈先の先〉Lv.1

 〈魔力感知〉Lv.1

 〈遠見〉Lv.1

 〈暗視〉Lv.1


◇生活系◇

 〈交渉〉Lv.2

 〈高速思考〉Lv.4

  └〈並列思考〉Lv.3


◇ギフト系◇

 〈水神の加護〉Lv.1

  └〈水中呼吸〉Lv.1

   〈水上歩行〉Lv.1

   〈水袋勁〉Lv.1


 〈木神の加護〉Lv.1

  └〈成長促進〉Lv.1

   〈効力増強〉Lv.1

   〈笑桜勁〉Lv.1


 〈火神の加護〉Lv.1

  └〈二段跳び〉Lv.1

   〈燃焼無効〉Lv.1

   〈火鳥勁〉Lv.1


 〈土神の加護〉Lv.1

  └〈障壁〉Lv.3

   〈土圧無効〉Lv.1

   〈捻央勁〉Lv.1


 〈金神の加護〉Lv.1

  └〈金属操作II〉Lv.1

   〈即死耐性〉Lv.1

   〈拡金勁〉Lv.1


 〈五行神の加護〉Lv.1

  └〈気功法〉Lv.1

    └〈遠当て〉Lv.1

     〈沈墜勁〉Lv.1

     〈纏絲勁〉Lv.1

     〈十字勁〉Lv.1


 残りスキルポイント:0


 +++




読んでいただきありがとうございました!


次回の更新は明日の朝6時です!


是非読みに来てください!


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