表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者(副業)の異世界旅行記《トラヴェローグ》  作者: 青咲凛
第2章 ナザレの夢魔 前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/73

54. デート?


 金策として初めに私が考えたのは、金の輸入だった。

 基本的にショップの売り物はこっちの世界のものよりも安い。だがそれは、元の世界基準になっているからであって、物が豊富にある向こうの世界と比べれば、ほとんどがハンドワークで作られるこちらの世界より安いのは道理である。

 だから例外的に、向こうで値上がりし続けているものはこっちの世界より比較的高い。

 金はその代表例だ。

 金は年々高騰しているから、中世レベルのこの時代の金なら、ショップでは高く売れる──と思ったのである。


 しかし、結果的に言うならそれは浅はかな考えだった。


 そもそもの話として、こっちの世界で金を買うほどの余裕がないのである。

 その差額で儲けようと思ってもまず仕入れの時点で予算を大きく上回るのだ。


 スパイスの類を売るというのは、最初から却下されていた。

 というのも、香辛料については独占販売されているケースが多く、無駄な争いを生みかねないと踏んだからである。


 ならば何を売るのか。


「これほど綺麗なピンク色の岩塩は初めてですな。

 これを一体どこで?」

「旅の途中で分けてもらったんですよ」

「ふむ、仕入れ元は明かしませんか。

 しかし……いや、見事な色だ。普通岩塩と言ったらグレーか茶褐色の物が多いですからな。

 これなら、10gあたり銀1.5枚でお取引できるでしょう」


 商人ギルドの応接室。

 担当者は麻の袋に入ったピンク色のヒマラヤ岩塩を見て唸り声を上げていた。


(いきなり真っ白な生成塩は流石に怪しまれるからな。

 岩塩にしておいて正解だった)


 だが、実は私が仕掛けたのはそれだけではない。


 私は得意げに鼻を鳴らすと、『一粒、試食なさってください』と促した。


「ではお言葉に甘えて……む、これはこれは。

 出回っている塩とは、微妙に味が異なりますな。なんというか、ほんのり甘みがあるような」

「買い取った者の話によると、ピンク色をしている理由が、地中の鉄分が微量溶け込んでいるせいらしくて、そのおかげでただ塩辛いのではなくほんのりした甘みを持っている、ということらしいですよ」


 ちなみに出まかせだ。

 ほんのり甘いと言っても誤差の範疇に過ぎないのが本来のピンクソルトだが、私はこれに仕掛けをしてほんの少し砂糖を混ぜ込んでいるのである。


 某、狼と商人が旅するアニメでやっていた作戦だ。

 あの時は狼の毛皮に林檎の香りを付着させて高値で売っていたが、今回はそれを応用してみたのである。


「ふむ、この味わいは面白いですな。

 では10gあたり銀2枚でいかがでしょう?」

「……」


 普通、こういうものはキロ単位、あるいはトン単位で計算をする。

 10gで銀2ということは、その100倍にすればいいわけだからキロ当たり銀200。

 銀貨は24枚で大銀貨になるから200÷24で大銀貨約8枚分。


 大銀貨は1枚当たり数万円くらいの規模間だし、かなりいい値段なのではないだろうか?


 マーリンの方に視線を向けると、彼も賛同している様子なのでこの値段で売ることにしよう。


「では、その値段で2kgお売りいたしましょう」

「そ、そんなに!?」

「ものがこれだけとは言ってませんよ」

「……ほかにも在庫があると?」

「自分たち用に、あと3kgは。

 偶然手に入ったものですからね、正直あまり手放したくはないんです」


 商人の目つきが変わった。

 どうやら食いついたみたいだ。


「銀貨2.2枚……いや2.5枚だ。

 それであるだけ売ってくれないだろうか!」


 お。吊り上がった。

 だがここで頷いてはだめだ。

 商人というのはこざかしいもので、いきなり全力で買おうとはしないはず。

 全力に見えて、まだこれでも安い方だと考えているのは、その口元を見ればわかる。


(頭の中が隠しきれていないな。

 私たちは〈幻惑〉で余裕な態度に見える大商人に錯覚させているから、こっちが商売初心者だとは相手はつゆとも思ってないだろうが)


 私は肩をすくめて見せると、『私もこの塩を気に入ってるんです』と口を開いた。


「自分たちで使う分がなくなっては困りますし……」

「ならば銀2.7で!」

「……」

「ぐぬぬ、ならば3でどうだ!

 これ以上は無理だぞ!?」

「それならいいでしょう」


 この作戦、砂糖を混ぜる以外はマーリンが考案してくれたものなのだが、どうやらなかなかうまくいったみたいだ。


 まだ中学生くらいなのに、なかなか商才があるのではないだろうか?


 こうして、私は即金で金貨約3枚を手に入れたのだった。


『スキル〈交渉〉のレベルが2に上がりました』


 ***


「いやぁ、思ったよりも売れたね!」

「ご主人様の演技が素晴らしかったおかげですよ」

「〈幻惑〉のおかげだよ。

 あれがなかったらここまでうまくいかなかった」


 言いながら、私は隣を歩くマーリンを軽く見上げた。


「それで、これからどこに行く?」


 今日のお出かけはマーリンの新しい魔法を模索するためのアイデア探しが主目的だ。

 とはいえ、彼の中ではまだ新しい魔法についての構想は立っていない。

 まずはそれを刺激するところから始めようと思うのだが……正直、どこを周ればいいのか、私には想像もつかなかった。


「そうだな……。

 とりあえず、商店街をブラブラ周ることにしようか。何か掘り出し物が見つかるかもしれない」

「オーケー、じゃあそうしよう」


 私は彼の言葉に首肯すると、マップを開いて何かよさげなものが売ってそうな商店街を検索した。


 食品売り場……は、多分見ても意味がないだろう。

 見るなら、いろんなジャンルのものがごったになってるところがいい。

 とすると、道具屋とか並んでるところがいいかも。


 それから私たちは、様々な専門店が並ぶ道具屋街へと足を運んだ。


 文房具を売っている店。

 薬草を売っている店。

 鉱石を売っている店。

 顔料を売っている店。

 装飾品を売っている店。

 帽子を売っている店。

 服を売っている店。

 革細工を売っている店。

 家具や置物を売っている店──。


 様々な店が軒を並べ、そのすべてが現代日本からやってきた私の目にはどれもこれもお洒落に映って仕方がなかったが、マーリンはどれもお気に召した様子は見せなかった。


「なかなか見つからないもんだね」

「そうだな……」


 歩き疲れた様子のマーリンをねぎらって、近くの噴水広場のベンチに腰を下ろす。

 少し遠くの方で、小さな屋台が子供相手何にかを売っている以外は、さっきの道具屋街と比べて閑散としていた。


 私も彼を手伝うように、いろいろな案を出したりしてはいた。

 例えば文房具屋では彼の肩に描かれていたシジルを参考にして『紙にシジルを描いてストックしておく』という案を出したし、薬草店では『植物の種を触媒に植物魔法とかどう?』とかも聞いてみたりした。

 しかし彼曰く、シジルのストックに関してはいい案だと思うみたいだが、シジルというのはどうも書けばすぐに触媒として利用できるものでもないらしかった。


 曰く、触媒として使うには聖別という工程が必要らしい。

 それをこれから魔法の触媒として使いますよ、といういわば宣誓のようなもので、この宣誓に際して自分の魔力的な体質と合致しなければ、うまく魔法として機能してくれないらしいのである。


 この辺が、彼の場合はどうにも気難しいみたいで苦戦していたのだ。


「こうなると、もう新しい触媒を試すってよりも、今できる能力をどう運用するかに切り替えた方がいいかもしれないな」


 ぽつり、と呟くマーリン。

 その顔は、少し悔しそうで──しかし心なしか、半分安堵しているようにも見えた。


「今できる能力の運用かぁ」


 一緒になってうんうんと考えるが思いつかない。

 マーリンの魔法は土とか地面とかを変形させるタイプの魔法だ。

 あとは光を発する魔法。


 土や地面の変形というのは、実際はかなり応用が利くものである。

 壁を作ったり、礫弾を射出したりはもう既にやっていることだが、聞くところによると穴を掘ったり、魔力の消費は多いがゴーレム的なものを作って操作することも一応できなくはないらしい。


 だが、それでは今回のダンジョン攻略では彼はまだお荷物のままだ。


 ドンギョは土や地面の中を泳ぎ回る。

 だからマーリンの礫弾は食らいもしないし、むしろすり抜けるまである。

 防御だってできるものではない。

 壁を作ったところですり抜けてくるのだから効果がないのだ。


 それを解決するには、もっと何か、別の手段が必要になってくるのである。


(何か、ひねりが欲しいところだよな……)


 今回のダンジョン攻略は、私のためというよりもむしろマーリンのためと私は考えている。

 ギルドの思惑では私への補填だったが、私にとって今回のダンジョン攻略はおそらく簡単すぎるからだ。

 だから、彼に経験を積ませるいい機会として考えているのだが、このままではあまりうまくいきそうがない。


 夕暮れに染まり始めた空を仰ぐと、隊をなして飛ぶ烏の一団が目に入った。

 夏の暑さは夜になってもその余韻を残していたが、背後の噴水のおかげか、ここは比較的涼しくて居心地がいい。


「ま、あまり考えすぎても答えは出ないからさ。

 少しは休憩もかねて、どこかで晩御飯にしよう」

「どこかって、外食にするのか? 珍しいな」

「せっかく別の街に来たっていうのに、その土地の味を楽しまないなんて損だろう?」

「俺は絶対ご主人様の出すものの方が美味いと思うんだが……で、何食べるんだ?」


 何かを言いたげに言葉尻を小さくすぼめていくマーリンだったが気にしない。

 私はベンチから立ちあがると彼の問いに私はニッと笑みを浮かべた。


「屋台巡り」

「……」


 広場の向こう、子供相手に何かを売っている屋台を指さしながら言う私に、マーリンは眉を顰めた。


現在の悠里のステータス


 +++


■ステータス■

 名前:鑑 悠里 Lv.12

 性別:女

 種族:異世界人 Lv.1

 職業:ノービス Lv.1

 称号:〈異世界人〉Lv.1

    〈臆病者〉Lv.2

    〈何にも束縛されない〉Lv.2

    〈無謀な挑戦者〉Lv.2

    〈導師見習い〉Lv.1

    〈追跡者〉Lv.1

    〈暗がりに潜む者〉Lv.1

    〈呪術医見習い〉Lv.1

    〈樵見習い〉Lv.1


 HP:120/120

 MP:120/120

 SP:170/170


 筋力:50

 活力:13

 速度:13

 知能:13

 感覚:19


 残りステータスポイント:0


■スキル■

◇武術系◇

 〈剣術〉Lv.5

  └〈偃月殺法〉Lv.1

   〈聖柄の太刀〉Lv.1

   〈居合抜き〉Lv.3

   〈鎧徹し〉Lv.1

   〈五月雨斬り〉Lv.1

 〈体術〉Lv.1

  └〈空気投げ〉Lv.1

   〈投擲〉Lv.1

   〈卍蹴り〉Lv.1

   〈蝦蹴り〉Lv.1


◇魔術系◇

 〈呪詛マスタリ〉Lv.1

 〈魔法〉Lv.1

  └〈術式理解I〉Lv.1

 〈結界〉Lv.1

  └〈反転結界〉Lv.1


◇身体操作系◇

 〈身体操作マスタリ〉Lv.1


◇防御・回復系◇

 〈自動回復〉Lv.5

 〈食い縛り〉Lv.1


◇耐性系◇

 〈驚愕耐性〉Lv.1

 〈痛覚耐性〉Lv.2

 〈負傷耐性〉Lv.4

 〈転倒耐性〉Lv.1

 〈気絶耐性〉Lv.2

 〈トラウマ耐性〉Lv.1

 〈脱水症耐性〉Lv.1

 〈熱中症耐性〉Lv.1

 〈精神攻撃耐性〉Lv.1

 〈拘束耐性〉Lv.1

 〈呪詛耐性〉Lv.4

 〈隷属無効〉Lv.1

 〈恐怖耐性〉Lv.3

 〈不意打ち耐性〉Lv.1

 〈閃光耐性〉Lv.2

 〈麻痺耐性〉Lv.1

 〈粉塵耐性〉Lv.1

 〈冷気耐性〉Lv.1

 〈病魔耐性〉Lv.1

 〈瘴気耐性〉Lv.1


◇隠遁系◇

 〈忍足〉Lv.2

 〈気配隠蔽〉Lv.2


◇感知系◇

 〈洞察〉Lv.2

  └〈名推理〉Lv.1

 〈気配察知〉Lv.5

  └〈霊感〉Lv.1

   〈先の先〉Lv.1

 〈魔力感知〉Lv.1

 〈遠見〉Lv.1

 〈暗視〉Lv.1


◇生活系◇

 〈交渉〉Lv.2

 〈高速思考〉Lv.4

  └〈並列思考〉Lv.3


◇ギフト系◇

 〈水神の加護〉Lv.1

  └〈水中呼吸〉Lv.1

   〈水上歩行〉Lv.1

   〈水袋勁〉Lv.1


 〈木神の加護〉Lv.1

  └〈成長促進〉Lv.1

   〈効力増強〉Lv.1

   〈笑桜勁〉Lv.1


 〈火神の加護〉Lv.1

  └〈二段跳び〉Lv.1

   〈燃焼無効〉Lv.1

   〈火鳥勁〉Lv.1


 〈土神の加護〉Lv.1

  └〈障壁〉Lv.3

   〈土圧無効〉Lv.1

   〈捻央勁〉Lv.1


 〈金神の加護〉Lv.1

  └〈金属操作〉Lv.4

   〈即死耐性〉Lv.1

   〈拡金勁〉Lv.1


 〈五行神の加護〉Lv.1

  └〈気功法〉Lv.1

    └〈遠当て〉Lv.1

     〈沈墜勁〉Lv.1

     〈纏絲勁〉Lv.1

     〈十字勁〉Lv.1


 残りスキルポイント:1


 +++



読んでいただきありがとうございました!


次回の更新は明日の朝6時です!


是非読みに来てください!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ