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転生勇者(副業)の異世界旅行記《トラヴェローグ》  作者: 青咲凛
第2章 ナザレの夢魔 前編

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47. ツンデレ?


 私がジュンと同じパーティと依頼を受けるのを嫌がったのは、単純に顔を合わせづらいというただその一点に尽きた。


 彼女は彼女でコツコツと地道にランクを上げようとしているのに対して、今回私は飛び級でDランクへの昇格が決まりかけた。


 それも冒険者ギルドに登録して、わずか約1週間のうちに。


 1週間……。

 思った以上に。まだこっちの世界に来て日が浅かったんだなぁ、と我が家の猫足バスに身を沈めながら考える。


 これはつまり、マーリンと出会ったのだってたった1週間程度しか経っていないということにもなる。


 出会ったその日から同棲しているのだからもはや今更ではあるのだが、なんていうか今の私って対外的に見てもちょっと破廉恥なのではないだろうか?


(いや、マーリンはまだ中学生だから!

 私は保護者だから!)


 とはいえ──。


 湯気で白くなる浴室の、タイル張りされた天井を見上げる。

 天井から吊るされた、ちょっとおしゃれな照明が湯気にぼやけて、まるで今の私の頭の中を映しているみたいだった。


「私、身長がちょっと伸びてたんだよなぁ……」


 私ももう既に24歳。

 成人して間もないし、既に成長期は終えているものだと思っていた。


 しかし今日になって例の迷彩柄の戦闘服を身に着けた時、少しだけパンツの丈が短くなっていたことに気づいたのである。


 昔から童顔で、まるで大人には見えないと言われ続けてきていたから気づかなかったけど……ひょっとして、私こっちの世界に来てから若返っているのではないだろうか?


(いや、肉体的に若くなったからと言って、それと身長が伸びたことにどう関連性があるんだっていう話ではあるんだけど──)


 ため息を吐く。


 元から体毛も薄い方ではあるから、身長以外で判断できないことがもどかしい。


「まぁ、これ以上は考えたって仕方ないか」


 もしかすると別の要因もあるかもしれないし──と、とりあえず結論を保留して浴槽から出る。


 衝立にかけてあったバスタオルで体をぬぐい、髪や肌の保湿を済ませてストレージから引っ張り出した下着を身に着けようとした時だった。


 がちゃ、と浴室の扉が開いて、着替えとタオルを持参したマーリンが姿を現したのである。


「「あ……」」


 不意に入ってきたマーリン。

 互いの体が、まるで朝になったように硬直する。


 さまよう視線。

 その蒼い瞳に映るものを、その一瞬の時間で互いに把握する。


 まるで、彼の体温がこちらに伝播するみたいだった。


「わ、悪い。

 入ってるとは思わなかったんだ、その……えっと……ごちそうさま──じゃない、間違えたごめん!」


 バン! と音を立てて扉を閉めるマーリン。

 どたばたと浴室から遠ざかっていく足音だけが、やけに耳に響いた。


 ***


「私が本日護衛してもらうパック商会の営業、デイスでぃす。

 昨日はよく寝れましたでぃす? なんだか、やけにお疲れの様でぃすが……」


 小柄な鼠獣人のデイスが、私とマーリンの様子を見やりながら不安そうに首を傾げた。


「「いえ、ぜんぜん問題ありません」」

「そうでぃすか。

 まぁ、ちゃんと働いてくれれば文句はないでぃすけんど」


 やつれたように見えるのは、言わずもがな昨日のマーリンのせいだ。

 あの浴室での遭遇事件があってから、いろいろ考えてしまって眠れなかったのである。


 彼の様子を見るに、きっと同じなのだろう。


(マーリン、朝からなんかちょっと臭うんだけど……昨日はあの後ちゃんとお風呂入ったのかな?)


 まぁ、尋ねたところで今更だ。

 私の方は〈自動回復〉のおかげで体調自体は全く問題がない。

 気疲れの方も、きっとしばらくすれば回復するだろう。


 怪訝そうな顔を見せるデイスに愛想笑いを浮かべて、他のパーティを待つこと数分後。

 西門から、見覚えのある集団が姿を現した。


 メイドの一団に囲まれた、金髪の美少女──間違えるはずもなく、ジュンのパーティ、アラストールだ。


「デイスさん、おはようございます。

 もう1枠パーティが来るって聞いていたのだけど、ユーリのことだったのね」

「おや、アラストールさんはお2人をご存じでぃすたか。

 それはそれは、お話が速いでぃす」


 綺麗なカーツィーで挨拶するジュンに、デイスがぺこりと頭を下げる。


「おはよう、ジュン。

 昨日、急遽決まったんだよ」

「そう。お互い頑張りましょ」


 にこり、と笑みを浮かべて肩を叩くジュン。


 まるで以前の高飛車な態度とは全く異なる行動に、私は思わず同一人物なのかと目を疑う。

 ──と、そんな私の様子を察してか、1人のメイドがこちらへと近づいてきた。


「ご無沙汰しておりますわ、ユーリ殿。

 先日の件、改めてお礼申し上げたく思います」

「えーっと……」


 スカートの端をつまんで、軽く膝を折るメイドに、私は少し困惑した様子でマーリンへと視線をよこした。


「ジュンのメイド、エリーゼだ。

 ほら、地下水道の時に依頼をくれた──」

「──あぁ、あの時の!」


 一瞬、彼女のこめかみに青筋が浮かぶのが見えた気がしたが、多分気のせいだろう。


「あの後の決闘から、お嬢様は少し変わられましたわ。

 少しだけ大人になられたと言いますか……」


 エリーゼはどこか感慨深げに、少し目を細めた。


「以前のお嬢様は、他者を評価する時、まず『自分より上か下か』で見ておられましたの。

 もちろん、実力主義と言えば聞こえは良いのですが……」

「……まぁ、なんとなくわかるかも」


 あの時のジュンを思い返して、私は苦笑する。


 正直、あの時の彼女はかなり鼻についた。

 いや、今思えば年齢相応の未熟さだったのかもしれないけど。


「ですが、最近は違いますのよ」


 エリーゼは嬉しそうに続けた。


「護衛の者にも、商人にも、宿の給仕にも、以前よりずっと丁寧に接するようになられました。

 それに、前までは失敗した者を見ると『だから言ったでしょう』と仰ることが多かったのですが……」


 そこで一度言葉を切る。


「今ではまず、『怪我はありませんの?』と聞かれるようになりましたわ」


「……へぇ」


 思わず、感心したような声が漏れる。


 彼女はもっとこう、プライドの塊みたいなものかと思ってたけど……挫折は人を変えるってほんとなんだなぁ……。


「あと、以前は実力の低い冒険者を見て、あからさまにつまらなさそうなお顔をされていたのですが、最近は──」

「──エリーゼっ!!」


 ぴしゃり、とよく通る声が飛んできた。

 振り返れば、少し離れた場所でデイスと行程の確認をしていたはずのジュンが、耳まで赤くしてこちらを睨んでいる。


「な、何を余計なことを話しているのかしら!?」

「おや、聞こえておりましたか」

「聞こえてるわよ!

 というか、なんで昔の話ばかりするんですの!?」

「昔?

 つい最近の話しかしておりませんが」

「そういう言い訳は聞きたくないわ!」


 フン、と鼻を鳴らすジュンに、思わず笑いがこみあげてくる。


「何よ、ユーリ?

 言いたいことがあるならはっきり言ったらどうなのかしら?」

「いや、ちょっとギャップがすごくて」

「ぎゃっぷ……?」


 まるで不可解なことを言われたとでも言いたげな顔で、きょとんとするジュン。


「あー……かわいくなったってことだよ」

「か、かわいくって貴女ねぇ……」


 盛大なため息が、彼女の口から洩れる。


「……と、とにかく。

 以前はその、少し配慮に欠けていた部分があったのは認めますけれど、今は違うわ。

 それだけよ。

 べ、べつにその、かわいくなったとか、そんなことのために変わったわけではないんだから、ね!」


 ぷい、と耳を赤くしながら顔を背けるジュン。

 そんな彼女の様子に、思わず失笑する──と、ジュンは顔を真っ赤にして『うがー!』などと騒ぎ立てながらこちらへ追いかけてきたのだった。


「わ、笑うなんてひどいわ!」

「だって、こんなの笑わない方が失礼っていうかさ!」

「うるさいわね!

 人の成長を笑うなんて言語道断よ!?」

「たしかにそれは悪かった!

 謝るから、謝るから感情に任せて剣を抜こうとしないでくれる!?」

「うがぁぁぁあああ!!」


現在の悠里のステータス


 +++


■ステータス■

 名前:鑑 悠里 Lv.12

 性別:女

 種族:異世界人 Lv.1

 職業:ノービス Lv.1

 称号:〈異世界人〉Lv.1

    〈臆病者〉Lv.2

    〈何にも束縛されない〉Lv.2

    〈無謀な挑戦者〉Lv.2

    〈導師見習い〉Lv.1

    〈追跡者〉Lv.1

    〈暗がりに潜む者〉Lv.1

    〈呪術医見習い〉Lv.1

    〈樵見習い〉Lv.1


 HP:120/120

 MP:120/120

 SP:170/170


 筋力:50

 活力:13

 速度:13

 知能:13

 感覚:19


 残りステータスポイント:0


■スキル■

◇武術系◇

 〈剣術〉Lv.5

  └〈偃月殺法〉Lv.1

   〈聖柄の太刀〉Lv.1

   〈居合抜き〉Lv.3

   〈鎧徹し〉Lv.1

 〈体術〉Lv.1

  └〈空気投げ〉Lv.1

   〈投擲〉Lv.1

   〈卍蹴り〉Lv.1

   〈蝦蹴り〉Lv.1


◇魔術系◇

 〈呪詛マスタリ〉Lv.1

 〈魔法〉Lv.1

  └〈術式理解I〉Lv.1

 〈結界〉Lv.1

  └〈反転結界〉Lv.1


◇身体操作系◇

 〈身体操作マスタリ〉Lv.1


◇防御・回復系◇

 〈自動回復〉Lv.5

 〈食い縛り〉Lv.1


◇耐性系◇

 〈驚愕耐性〉Lv.1

 〈痛覚耐性〉Lv.2

 〈負傷耐性〉Lv.4

 〈転倒耐性〉Lv.1

 〈気絶耐性〉Lv.2

 〈トラウマ耐性〉Lv.1

 〈脱水症耐性〉Lv.1

 〈熱中症耐性〉Lv.1

 〈精神攻撃耐性〉Lv.1

 〈拘束耐性〉Lv.1

 〈呪詛耐性〉Lv.4

 〈隷属無効〉Lv.1

 〈恐怖耐性〉Lv.3

 〈不意打ち耐性〉Lv.1

 〈閃光耐性〉Lv.2

 〈麻痺耐性〉Lv.1

 〈粉塵耐性〉Lv.1

 〈冷気耐性〉Lv.1

 〈病魔耐性〉Lv.1

 〈瘴気耐性〉Lv.1


◇隠遁系◇

 〈忍足〉Lv.2

 〈気配隠蔽〉Lv.2


◇感知系◇

 〈洞察〉Lv.2

  └〈名推理〉Lv.1

 〈気配察知〉Lv.5

  └〈霊感〉Lv.1

   〈先の先〉Lv.1

 〈魔力感知〉Lv.1

 〈遠見〉Lv.1

 〈暗視〉Lv.1


◇生活系◇

 〈交渉〉Lv.1

 〈高速思考〉Lv.3

  └〈並列思考〉Lv.2


◇ギフト系◇

 〈水神の加護〉Lv.1

  └〈水中呼吸〉Lv.1

   〈水上歩行〉Lv.1

   〈水袋勁〉Lv.1


 〈木神の加護〉Lv.1

  └〈成長促進〉Lv.1

   〈効力増強〉Lv.1

   〈笑桜勁〉Lv.1


 〈火神の加護〉Lv.1

  └〈二段跳び〉Lv.1

   〈燃焼無効〉Lv.1

   〈火鳥勁〉Lv.1


 〈土神の加護〉Lv.1

  └〈障壁〉Lv.3

   〈土圧無効〉Lv.1

   〈捻央勁〉Lv.1


 〈金神の加護〉Lv.1

  └〈金属操作〉Lv.4

   〈即死耐性〉Lv.1

   〈拡金勁〉Lv.1


 〈五行神の加護〉Lv.1

  └〈気功法〉Lv.1

    └〈遠当て〉Lv.1

     〈沈墜勁〉Lv.1

     〈纏絲勁〉Lv.1

     〈十字勁〉Lv.1


 残りスキルポイント:1


 +++



読んでいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願いいたします!


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