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転生勇者(♀)の異世界旅行記《トラヴェローグ》  作者: 青咲凛
第2章 ナザレの夢魔

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41. 大蛇?


 私が突っ込むのを待っていたかのように、大蛇もこちらへと牙をむいて突っ込んできた。


(このまま受けたら死ぬ──!)


 〈障壁〉を纏わせた刀で身を護りながら受け流しつつ、この硬い鎧に覆われた大蛇にどうダメージを与えるか考える。


(障壁が持たない──!?)


 ひび割れる薄紫色のそれを見て、その長大な体の突進を受け流し続けるのは無理と判断。

 相手の力を利用して回転するようにその場から離脱し、最初の狙い通り目を狙いに行く──


 ──影。


「ッ!?」


 突如頭上を覆ったそれに反応して、すぐさま回避行動をとるが間に合わない。

 衝撃で巻き上げられた石畳に背中を砕かれ、近くの柱に正面からぶつかる。


「ぐッ!」


 骨が折れる感触。

 口の中に何か硬いものが転がって、吐き出すとそれは奥歯だった。


「シャァァァアアア!!!!」


 体勢を立て直す暇を与えるつもりはないらしい。

 スウバーンは再度牙をむいてこちらへ突進するのを、私は折れた脚を無理やり〈障壁〉で囲んで補強しながら走って回避する。


 大蛇が柱に突っ込んだ。

 衝撃音。

 砂煙が舞い、瓦礫が頭上から落ちてくるのを回避した先に、奴の胴体がまるで壁の様に立ちはだかった。


「まぶッ!?」


 胴体がうねり、鞭のように私の体を弾き飛ばした。


 柱を1本突き破り、大広間の壁に巨大なクレーターをつける。


「ぶはっ!?」


 喉に血液が詰まって息ができない。

 自分の血で溺れそうになるかに思えたが、息が吸えないにもかかわらず不思議と苦しくないことに気づく。


(そうか〈水中呼吸〉!)


 だがそれがわかったところでどうしようもない。


 回復も済まないままに、続けざまに蛇の突進が来る。


「ッ!」


 〈障壁〉で無理やり体を押し出して突進を回避する──が、スウバーンはそれを追いかけるように突進を繰り返した。


 回避、回避、回避、回避──。


 しかし最後に待ち受けるのはやはり奴の壁のような胴体で、私は今度こそはまともに受けまいと上空に逃げた──その横から、尻尾。


「ぐぅッ!!」


 一か八か、〈鎧徹し〉に加えて様々な攻撃強化系のスキルを総動員させて迎え撃つ。

 が、抵抗虚しく柱の天井付近の付け根に背中がぶち当たる。


 一瞬のブラックアウト──からの、覚醒。


 気づけば、私の視界にはこちらへと落下する石柱しか映っていなかった。


「ッ!?」


 逃げるには間に合わない距離。

 この石柱なら、多分あの蛇よりは柔らかい──はず。


 願いを込めて放たれた一太刀は、幸いにも両断することができた。


「……ペッ」


 口の中に溜まっていた、血液やら折れた歯やらを吐き出す。

 骨や内臓は──まだ修復に時間がかかりそうだが、手足は〈障壁〉で補助すればまだ何とかなる。


 ──にしても。


(体がでかすぎて、〈気配察知〉がほとんど意味を成してねぇな、こりゃ……)


 砂煙に紛れて、奇襲に良さそうなポイントへ移動しながら考える。


 砂煙の上で奴の首は右往左往しているのを見るに、おそらく通常の蛇と違って熱で居場所を捉えているわけではなさそうだ。

 目に頼ってるなら、魔力でこっちを捉えているわけでもない。

 気配もきっと、私の体が小さすぎるせいか見逃されている気がする。


 奇襲を考えるなら、そこが狙い目か。


 私は崩れた石柱の影に身を潜めながら、浅く息を吐いた。


 肺はまだ潰れかけているのか、呼吸のたびに胸の奥でこぷこぷと嫌な音がする。

 でも、止まっている暇はない。


 私はストレージから手斧を1本引っ張り出すと、砂煙の中を、あえて奴から目立つように移動させた。

 スウバーンの目が手斧の影を追う。


 太い尻尾が持ち上がり、手斧に叩きつけに来るのを見計らって迎撃する。

 狙うのは、一瞬見えた、1枚だけ逆さに生えた腹部の鱗、その隙間──!


「シャァァァアアア!?!?」


 手斧の柄が隙間にクリーンヒットし、大蛇が首を仰け反らせて一瞬固まった。


 あの部分は蛇ならば総排泄口に相当する部分だ。

 だからあの場所が弱点足りうるという予想を普通ならする──が、魔物は生き物じゃない。

 排泄が不要なのに肛門があるのは、もはや罠としか考えられない。


 故に、やはり狙うなら──目!


(今だ!)


 〈忍足〉で足音を消しながら、崩れた石柱を足場に高く飛び上がる。

 もう2本取り出した手斧を宙に浮かせて足場にしつつ、その蛇の死角を一直線に駆け抜け──


 ──ぐりん、と蛇の頭がこちらを向いた。


 目の前一杯に開かれたピンク色の口腔。

 鋭い牙を、おそらく毒だろう緑の唾液が濡らして──


「っぶない!」


 目の前を、ものすごい速度で顎が閉じた。

 舞い散る毒液。

 羽織っていたジャージの化繊が解けて皮膚に張り付きそうになるのを、急いで脱ぎ捨てつつ蛇の目玉に投げつける。


「このっ!」

「シャァァァアアア!?!?!?」


 化繊を溶かしていた毒液の一部が、奴の目を焼いたのだろう。


 痛みで暴れ狂い始めるスウバーン。

 その無茶苦茶な動きに巻き込まれ、私の体は柱へと叩きつけられた。


「ぐはっ!?」


 柱を貫通して、隣の柱に背中がバウンドする。


 奇跡的にダメージを与えられたはいいが、こっちの被害もそれなりに大きかった。


「わっ!?」


 暴れ狂うスウバーンの体が、鞭のようにあたり一面を無造作に破壊しつくす。

 嵐のようにのたうち回る衝撃に、私も無関係でいられるはずもなく、その細くなった尻尾の先端で胴体が真っ二つに寸断され、視界が宙を舞った。


「うぉぉぉぉおおおおおろろろろろろ!?!?!?!?!?」


 経験したことのないような気持ち悪さは、きっと断面から引き抜かれていく小腸によるものだろうか。

 鮮血をまき散らし、うねる胴体に叩きつけられて天井に叩きつけられる。


「ぐぅ!?」


『スキル〈痛覚耐性〉のレベルが2に上がりました』

『スキル〈負傷耐性〉のレベルが3に上がりました』

『スキル〈自動回復〉のレベルが4に上がりました』


 うめき声と共に肺がつぶれる。

 かと思えば、次の瞬間には失っていたと思っていた下半身が、傷口から肉を盛り上げて再生していた。


 ──が、関係ない。


 怒ったスウバーンはこちらに視線をロックオンしている。

 どうやらまだ私を傷つけたりないらしい。


「このっ!」


 〈障壁〉を纏わせ、落下の衝撃も利用して〈鎧徹し〉をその突進に迎え撃つ──が、刃が通らない。

 私の体は簡単に弾き飛ばされ、地面に叩きつけられた。


 ──脚が折れる。

 ──下半身が上半身にめり込み、心臓がつぶれる。

 ──が、即時に修復されていく。


 まるでゴム風船にでもなったみたいだ。


「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!!!」


 回復したならまだ走れる。

 私は鞭のように撓る尻尾を飛び越えると、その胴体に着地し、顔面に向けて裸足で駆けだした。


 蛇の胴体は、想像していた以上に不安定だった。


 鱗の1枚1枚が鎧のように硬く、その隙間に裸足の指を引っかけながら、私は必死に体勢を保つ。


「落ちるかよ……!」


 うねる筋肉の流れを読む。

 次にどこへ力が逃げるのか、どこが沈み、どこが跳ね上がるのか。


 まるで暴走する列車の上を走っているみたいだった。


 スウバーンは首を激しく振り回しながら、何とか私を振り落とそうとしている。

 だが、それでいい。


(頭が動くなら、逆に軌道は読みやすい……!)


 私は手斧を2本、宙に展開した。

 蛇の頭部よりさらに前方。

 進行方向に回り込ませる。


 スウバーンの黄金の瞳が、わずかにそちらへ向いた。


(食いついた──)


 私はその瞬間、全力で加速した。


 胴体を蹴る。

 さらに〈障壁〉を足裏に展開し、反発力で空中へ。


 蛇の首元へ飛び乗り、そのまま顔面へ一直線に駆け上がる。


「もらったぁ!!」


 刀を逆手に持ち替え、残った左目に向けて全体重を乗せて突き立てる──






















 ──はずだった。


「……え?」


 刃が届く寸前。


 スウバーンの首が、視界から消えた。


「誘われたッ!?」


 気配がない。


 見失った。


 〈気配察知〉にも、〈先の先〉にも引っかからない。


 と来れば大抵──上。


 そう察した頃には、既に巨大な影が頭上を覆っていた。


「やば──」


 避けきれない。


 咄嗟に全身へ〈障壁〉を纏う──。


「がぁッ!!?」


 肺の中の空気が全部吐き出された。

 天井から振り下ろされた奴の頭突きが、私ごと石畳を叩き潰したのである。


 白く染まる視界。

 響く耳鳴り。

 頭蓋の割れる衝撃だけが、ただゆっくりと感覚されていく。


(これはたぶん、脳が一部潰れたな……)


 ひっそりと這い寄る死神の気配に、私は全身の力を抜いた。


 ……埋もれた瓦礫の中で、指一本動かせない。

 腕も脚も、今やどこにあるのかわからない。


 感覚がないのだ。


 ただ、暗くなった視界の左下だけは皮肉みたいに鮮明だった。


『スキル〈自動回復〉がレベル5に上がりました』

『スキル〈負傷耐性〉がレベル4に上がりました』


「……は、はは……」


 笑うしかなかった。


 強い。

 強すぎる。

 正直言って何回やっても勝てる気がしない。


 でも──。


 その時だった。


 うっすらと回復した視界の中で、瓦礫越しに見えたスウバーンの黄金の瞳が、じっとこちらを見下ろしているのが映った。


(……青い、きれいな髪……なわけないか)


 死にかけに幻覚でも見ているのだろう。

 瞬きを繰り返せば、そこには見慣れた爬虫類の頭がこちらを覗き込んでいる。


 不思議なことに、追撃はこなかった。

 ただ、見ている。

 まるで、何かを確かめるみたいに。


 それが何かまで、考える余裕はなかったが。


「……なんだよ」


 血を吐きながら、私は笑った。


「ぼうっとしてたら、回復しちまうぞぉ……いいのかぁ、それでぇ……」


 蛇は答えない。


 ただ、その頭上の車輪のような光輪だけが、ゆっくりと回転していた。


 次の瞬間。


「──」


 私の視界は、真っ暗になった。


現在の悠里のステータス


 +++


■ステータス■

 名前:鑑 悠里 Lv.12

 性別:女

 種族:異世界人 Lv.1

 職業:ノービス Lv.1

 称号:〈異世界人〉Lv.1

    〈臆病者〉Lv.2

    〈何にも束縛されない〉Lv.2

    〈無謀な挑戦者〉Lv.2

    〈導師見習い〉Lv.1

    〈追跡者〉Lv.1

    〈暗がりに潜む者〉Lv.1

    〈呪術医見習い〉Lv.1

    〈樵見習い〉Lv.1


 HP:120/120

 MP:120/120

 SP:150/150


 筋力:29

 活力:13

 速度:13

 知能:13

 感覚:19


 残りステータスポイント:0


■スキル■

◇武術系◇

 〈剣術〉Lv.5

  └〈偃月殺法〉Lv.1

   〈聖柄の太刀〉Lv.1

   〈居合抜き〉Lv.3

   〈鎧徹し〉Lv.1

 〈体術〉Lv.1

  └〈空気投げ〉Lv.1

   〈投擲〉Lv.1

   〈卍蹴り〉Lv.1

   〈蝦蹴り〉Lv.1


◇魔術系◇

 〈呪詛マスタリ〉Lv.1

 〈魔法〉Lv.1

  └〈術式理解I〉Lv.1

 〈結界〉Lv.1

  └〈反転結界〉Lv.1


◇身体操作系◇

 〈身体操作マスタリ〉Lv.1


◇防御・回復系◇

 〈自動回復〉Lv.5

 〈食い縛り〉Lv.1


◇耐性系◇

 〈驚愕耐性〉Lv.1

 〈痛覚耐性〉Lv.2

 〈負傷耐性〉Lv.4

 〈転倒耐性〉Lv.1

 〈気絶耐性〉Lv.2

 〈トラウマ耐性〉Lv.1

 〈脱水症耐性〉Lv.1

 〈熱中症耐性〉Lv.1

 〈精神攻撃耐性〉Lv.1

 〈拘束耐性〉Lv.1

 〈呪詛耐性〉Lv.4

 〈隷属無効〉Lv.1

 〈恐怖耐性〉Lv.3

 〈不意打ち耐性〉Lv.1

 〈閃光耐性〉Lv.2

 〈麻痺耐性〉Lv.1

 〈粉塵耐性〉Lv.1

 〈冷気耐性〉Lv.1

 〈病魔耐性〉Lv.1

 〈瘴気耐性〉Lv.1


◇隠遁系◇

 〈忍足〉Lv.2

 〈気配隠蔽〉Lv.2


◇感知系◇

 〈洞察〉Lv.2

  └〈名推理〉Lv.1

 〈気配察知〉Lv.5

  └〈霊感〉Lv.1

   〈先の先〉Lv.1

 〈魔力感知〉Lv.1

 〈遠見〉Lv.1

 〈暗視〉Lv.1


◇生活系◇

 〈交渉〉Lv.1

 〈高速思考〉Lv.3

  └〈並列思考〉Lv.2


◇ギフト系◇

 〈水神の加護〉Lv.1

  └〈水中呼吸〉Lv.1

   〈水上歩行〉Lv.1

   〈水袋勁〉Lv.1


 〈木神の加護〉Lv.1

  └〈成長促進〉Lv.1

   〈効力増強〉Lv.1

   〈笑桜勁〉Lv.1


 〈火神の加護〉Lv.1

  └〈二段跳び〉Lv.1

   〈燃焼無効〉Lv.1

   〈火鳥勁〉Lv.1


 〈土神の加護〉Lv.1

  └〈障壁〉Lv.3

   〈土圧無効〉Lv.1

   〈捻央勁〉Lv.1


 〈金神の加護〉Lv.1

  └〈金属操作〉Lv.4

   〈即死耐性〉Lv.1

   〈拡金勁〉Lv.1


 〈五行神の加護〉Lv.1

  └〈気功法〉Lv.1

    └〈遠当て〉Lv.1

     〈沈墜勁〉Lv.1

     〈纏絲勁〉Lv.1

     〈十字勁〉Lv.1


 残りスキルポイント:1


 +++



読んでいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願いいたします!


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