34. 常識?
夢のマイホームを手に入れた私たちは、とりあえずこの家を住める程度にまずは掃除しながら、家でのルールを決めることにした。
まず、土間を除いて屋内は土足厳禁。
室内に土を持ち込まないように徹底する。
「──以上!」
「少ねぇ!?」
マーリンが吼えた。
「だって、正直これ以上はすぐには思い浮かばないし……住みながら2人で決めていこうよ」
「うん、まぁそうだな。
そんなすぐに決まるようなもんでもないしな……」
井戸から組んできた水を使って、とりあえず床と壁の汚れを取り除き、最低限の清潔を得る。
部屋は広いが、物がないので掃除は結構楽だ。
私物を全部ストレージに入れておけるというのもあるが、何よりキッチン──土間が結構適当で大丈夫なのが大きい。
普通なら、ここが一番時間がかかる。
あとトイレ。
ここのトイレにはスライムが住んでいて、そいつが屎泥を処理してくれるから基本的にほとんど掃除が要らない上に臭いも問題にならないというのが便利だ。
必要なトイレ掃除と言えば、スライムが吐き出す謎の白い結晶の処理くらいである。
「さて、掃除も終わったし次は家具だね」
言って、ショップ画面を開いた。
このショップ機能では大概のものが揃えられる。
今までは装備品か食料、あるいはポーション程度しか買ってこなかったが、素材アイテムである塩や胡椒は愚か、建築資材も売ってるし工具も売ってる。
少し値は張るけど宝飾品だって買えないことは無い。
……追加効果として、何かしらの魔法が付与されていたりするけれど。
「何から買うんだ?」
「まずは窓かな」
「……窓?」
私の回答に、マーリンが眉を顰める。
この家の窓は、現代日本人が想像するような窓ではなく、壁に四角い穴をあけているだけの簡素な造りなのだ。
そこに木製の跳ね扉をつけているだけなので、窓が開いているとダイレクトに虫とかが部屋に入ってくる。
それはちょっと個人的に嫌なのだ。
というわけで各部屋の窓を購入、設置する。
設置するのに苦労するかもと思ったがそんなことは無く、ストレージから設置したい場所にスライドすればあとは自動で設置してくれた。
魔法はイメージ。
それなら、この機能だってイメージを活用することでどんな風にでも扱いやすくできると思ったが、どうやら大当たりみたいだ。
「……」
マーリンが呆れとはまた違う、複雑そうな感情を孕ませた視線を向けてくるが、気にしない気にしない。
「よーし、この調子でジャンジャン改造していくぞ!」
「……この常識ぶっ壊れ女め」
さらに機能を拡大解釈して、マップ画面から家の間取りを呼び出し、そこに直接模様替えを設定していく方が楽なことにはすぐに気が付いた。
2足歩行するどうぶつの住人達とスローライフを送る某ゲームを参考にUIを魔改造し、鼻歌交じりに進めていく。
ううん、滅茶苦茶楽しいぞこれ!
この調子でいけば部屋の増築とかも簡単にできそうだな。
鑑定機能と組み合わせて予想される必要資源を算出して……あ、もともと平屋だから2階以上になるように壁の強度とか計算されてないかも。
だったらその分の補強も考えて、必要なのは──こんな感じか。
理想の家に必要な費用と資材を算出した結果を、スマホのメモ帳に書き出していく。
すべてをショップ機能から調達するとなると、どうやらお金が足りないらしい。
一番お金がかかるのは木材か……。
「マーリン」
「どうした、ご主人様ぁ」
ダイニングの椅子に腰を下ろし、こちらをジーッと観察していた彼に呼びかける。
「私、これから森に行って木を伐ってくるよ。
だからちょっとの間お留守番お願いね!
あ、もしかしたら遅くなるかもだから食費置いとくよ!
じゃ!」
「……は?」
マーリンの返事もそこそこに、私は玄関に飛び出した。
さぁ、楽しい楽しい素材採集の始まりだ!
***
マップによれば、始まりの街周辺には私がこの世界に来た時にいた例の南側の森を含めていくつかの森林地帯がある。
街から一番近いのはもちろんあの南の森だったが、街から数キロ離れたこの地点から一番近いのは、牧場のさらに北側に数キロほど行った先にある北嶺山脈沿いの森──通称、北の森だった。
「ついでにデイリークエストも1個消化できるし、ちょうどいいな」
北の森入り口──。
増えたスタミナを確認しながら、私はぽつりとつぶやいた。
今では数キロほど全力疾走しても、軽く息が付く程度になっている。
最近レベルも上がったし、きっとそのおかげでもあるのだろう。
今ならひょっとするとフルマラソンだって完走できそうな気さえする。
「さて、森に入る前に必要な素材を確認しておくか」
我が新居魔改造計画に必要なアイテムはいたってシンプル。
まず木材。
あればあるほどいい。
次に石材。
これもあればあるほどいい。
それから粘土。
これもあればあるほどいい。
あとはカタツムリの殻などの炭酸カルシウム──これはモルタルを作るのに必要な材料だ。
とりあえずこれらがあれば、我が家は理想的に魔改造することができるだろう。
私はとりあえずストレージから手斧を取り出すと、〈金属操作〉で木を切り倒そう──と考えて、やめる。
「そういえば、生えている木をそのままストレージに入れられるか、ってやったことがなかったな……」
イメージ的には、できなさそうな気はしない。
むしろ今までの使い方をさらに拡大解釈するなら、マップと連携すれば土地ごとまるっとストレージに放り込めてもおかしくはない……気がするが、どうだろうか?
「……とりあえずやってみるか」
ストレージとマップを連結。
マップ上に指でマスキングして範囲選択し、そのままストレージへ──としようとした時だった。
突如、ブー、と警告音のようなものが響いて、目の前にメッセージウィンドウが展開された。
「『この操作は禁止されています』……ふむ、そう来たか」
できなくはないが、何かしらの存在に邪魔されてできないらしい。
いったい何に?
……まぁ、神様くらいしかいないよなぁ。
このスマホ型の魔道具自体、マーリンの反応を見るに規格外も甚だしいらしく、もはや魔道具と呼ぶよりも神器の類だというのが彼の見解だった。
リューの話によればどうやら神様は実在するみたいだし、おかしな話でもないだろう。
ひょっとすると、私をこっちの世界に連れてきたというのも、その神様だったりするのかもしれない。
理由は……よくわからないけど。
「まあいいや。
だったら当初の予定通り、熟練度上げもかねて〈金属操作〉で木を切り倒す方向で行くか」
私は追加でストレージから数本の手斧を引っ張り出すと、3本まとめて動かしながら木材の採集にいそしむのだった。
『スキル〈金属操作〉のレベルが3に上がりました』
『高速思考スキル関連アーツ〈並列思考〉を獲得しました』
『称号〈樵見習い〉を獲得しました』
現在の悠里のステータス
+++
■ステータス■
名前:鑑 悠里 Lv.8
性別:女
種族:異世界人 Lv.1
職業:ノービス Lv.1
称号:〈異世界人〉Lv.1
〈臆病者〉Lv.2
〈何にも束縛されない〉Lv.2
〈無謀な挑戦者〉Lv.2
〈導師見習い〉Lv.1
〈追跡者〉Lv.1
〈暗がりに潜む者〉Lv.1
〈呪術医見習い〉Lv.1
〈樵見習い〉Lv.1
HP:80/80
MP:80/80
SP:110/110
筋力:25
活力:9
速度:9
知能:9
感覚:15
残りステータスポイント:0
■スキル■
◇武術系◇
〈剣術〉Lv.5
└〈偃月殺法〉Lv.1
〈聖柄の太刀〉Lv.1
〈居合抜き〉Lv.3
〈体術〉Lv.1
└〈空気投げ〉Lv.1
〈投擲〉Lv.1
〈卍蹴り〉Lv.1
◇魔術系◇
〈呪詛マスタリ〉Lv.1
〈魔法〉Lv.1
└〈術式理解I〉Lv.1
〈結界〉Lv.1
└〈反転結界〉Lv.1
◇身体操作系◇
〈身体操作マスタリ〉Lv.1
◇防御・回復系◇
〈自動回復〉Lv.2
〈食い縛り〉Lv.1
◇耐性系◇
〈驚愕耐性〉Lv.1
〈痛覚耐性〉Lv.1
〈負傷耐性〉Lv.2
〈転倒耐性〉Lv.1
〈気絶耐性〉Lv.2
〈トラウマ耐性〉Lv.1
〈脱水症耐性〉Lv.1
〈熱中症耐性〉Lv.1
〈精神攻撃耐性〉Lv.1
〈拘束耐性〉Lv.1
〈呪詛耐性〉Lv.4
〈隷属無効〉Lv.1
〈恐怖耐性〉Lv.3
〈不意打ち耐性〉Lv.1
〈閃光耐性〉Lv.2
〈麻痺耐性〉Lv.1
◇隠遁系◇
〈忍足〉Lv.2
〈気配隠蔽〉Lv.2
◇感知系◇
〈洞察〉Lv.2
└〈名推理〉Lv.1
〈気配察知〉Lv.5
└〈霊感〉Lv.1
〈先の先〉Lv.1
〈魔力感知〉Lv.1
〈遠見〉Lv.1
〈暗視〉Lv.1
◇生活系◇
〈交渉〉Lv.1
〈高速思考〉Lv.2
└〈並列思考〉Lv.1
◇ギフト系◇
〈水神の加護〉Lv.1
└〈水中呼吸〉Lv.1
〈水上歩行〉Lv.1
〈水袋勁〉Lv.1
〈木神の加護〉Lv.1
└〈成長促進〉Lv.1
〈効力増強〉Lv.1
〈笑桜勁〉Lv.1
〈火神の加護〉Lv.1
└〈二段跳び〉Lv.1
〈燃焼無効〉Lv.1
〈火鳥勁〉Lv.1
〈土神の加護〉Lv.1
└〈障壁〉Lv.1
〈土圧無効〉Lv.1
〈捻央勁〉Lv.1
〈金神の加護〉Lv.1
└〈金属操作〉Lv.3
〈即死耐性〉Lv.1
〈拡金勁〉Lv.1
〈五行神の加護〉Lv.1
└〈気功法〉Lv.1
└〈遠当て〉Lv.1
〈沈墜勁〉Lv.1
〈纏絲勁〉Lv.1
〈十字勁〉Lv.1
残りスキルポイント:0
+++
読んでいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いいたします!




