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転生勇者(♀)の異世界旅行記《トラヴェローグ》  作者: 青咲凛
第1章 地下水道の幽霊

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28. 陰謀?


 結界から外にはじき出された私は、右目の激痛に顔をしかめながらよろりと立ち上がり、周囲の様子を観察する。

 結界の入り口になっていた黒い球体は無くなり、代わりに大きな穴が石畳に穿たれている。

 おそらくマーリンの魔法によるものだろう。


 ……ということは、あれの発生装置の場所が分かったのか。


(まさか地下にあったなんて)


 そりゃあ、目視で調べてもわからないはずだ。


 思わず笑いがこみあげそうになって、内臓の痛みに顔をしかめた。

 出てきたときはアドレナリンで痛みを無視できたが、今となってはそうもいかないらしい。


「レベルが上がっても……HPが回復する仕様じゃないんだな……」


 〈負傷耐性〉や〈痛覚耐性〉、〈自動回復〉があったとしても、痛いものは痛い。

 切断された右目や破裂した内臓の中で、何かがうようよと蠢くような掻痒感があるのは何とか我慢できるが──これは〈自動回復〉で細胞が再生されている感触なのだろうか。


「そうだ、あの子たちは……」


 立っているのもしんどいが、確認を怠るわけにはいかない。


 私は倒れていた3人の方へ向かうと、その容態を確認した。


 状態異常の悪夢は──まだ継続しているらしい。


「状態異常:悪夢(記憶改竄中)……?」


 結界内で鑑定した時にはそんな表記はなかったはずだ。

 多分、何かしらの方法で隠蔽されていたのが、結界が解かれたことで露になったのだろう。


「再鑑定」


 記憶改竄の内容を確かめる。

 内容は……プログラミングのコードみたいで、いまいち読んでもわかりそうにない。


「星影……認知……宇宙……恐怖……?」


 読めそうなところを単語で拾ってみるが、やはり専門用語が多くてよくわからなかった。


 術式の中身はわからないが、おそらく結界の術式の断片がまだ動いているのだろう。

 多分そのリソースは──ジュンたちのMP残量の方に意識を移してみると、継続的に減少しているのが見られた。


「なるほど、だいたいわかった」


 私に結界の主導権を移した結果、結界の維持ができなくなったのは、たぶん私の魔力総量が結界維持に必要な単位当たりの減少量より低かったせいだ。

 あるいは、魔力の出力の方か。

 一方で彼女たちの記憶改竄が続いているのは、そのどちらも個人の魔力で運用可能なリソースしか必要としていないせい。


 なら、彼女たちの魔力から術式を抽出して削除してやればいいのだ。


「鑑定」


 私は動作中の術式を抽出すると、コントロールパネルを開いて全摘出──しようとして止めた。


 これって、今作動中のやつは止められるけど、すでに改竄された部分はどうなるんだ?


 よくある話だ。

 改竄された記憶をもとに戻そうとすると、誤って元の記憶も一部消してしまうことがあるとかいう。

 それは避けたい。


 ならやるべきは──術式の作用ログの削除が先か?

 いや、同時に消さなきゃダメか?


「ちょっと難しそうだけど……やってみるか」


 あまりもたもたしてると術が終わってしまう。

 そうなるとどうなるかわからない。


 怪我の治療はとりあえず後回しだ。

 こんなのはスキルに任せておけばすぐ治る。


 私は彼女らにかけられた術式のログを鑑定で引っ張り出すと、急いで改変された記憶の処理に取り掛かった。


『呪詛スキル関連アーツ〈記憶操作〉を獲得しました』

『呪詛スキル関連アーツ〈呪詛返し〉を獲得しました』

『呪詛スキル関連アーツの獲得率が100%に達しました。

 関連アーツを統合し、スキル〈呪詛〉を〈呪詛マスタリ〉に編成しました』

『称号〈呪術医見習い〉を獲得しました』


 ***


「……ここは……?」


 無事に術式の摘出と改竄された記憶の回復に成功してしばらくした時だった。

 倒れていたジュンたち3人がゆっくりと目を覚ました。


「たしか、私たち……ここで黒い球を見つけて……」

「それからお嬢様が『きっとこれよ!』と走って行って……」

「えっと……それからどうしたんでしたっけ?」


 頭を押さえながら、記憶を振り返る3人。

 多少混乱しているみたいだが、命に別状はないみたいだ。


「よかった……起きた……!」


 私は無事に目を覚ました3人を見て、ようやく安堵の息を吐いた。

 正直、治療が終わった後も起きてこないから、失敗したんじゃないかとひやひやしていたのである。


 私の声で、ようやくこちらの存在に気づいたのだろう。

 ジュンとそのお付きのメイド2人の顔がこちらをバッと振り返った。


「あ、貴女……ッ!?」


 ジュンが驚き、こちらを指さしながら立ち上がった。


「どうしてあなたがここにいるのよ!?

 まさか、私の邪魔をしに──」

「──お取込み中のところ、失礼するよ」


 激昂し、いわれもない訴訟を受けそうになった時だった。

 不意に、石畳に空いた穴から1人の獣人が顔を出したのは。


「──わっ、誰!?」

「お姉さん面白いねぇ。あ、そっちの黒髪のお姉さん! 久しぶり!

 あの時以来だねぇ。調子はどうだい?」


 ジュンが驚いて仰け反るのを見て、獣人の少年が笑う。


 この声、どこかで聞いたことがある気がする。

 いや、今まで出会った獣人なんて1人しかいない。

 この街に始めてやってきたとき、熱中症で倒れそうになった私を助けてくれた少年である。

 名前は確か──


「おい、リュー。

 早く上がってくんねぇか? ずっと肩車してんのも重いんだけど」

「ああ、ごめんよカシュ―。

 マーリンは最後、登ってくるときに石畳直しておいてね」

「……承知しています」


 続いて、マーリンの不貞腐れたような、いつもの覇気がない声が耳に届いた。


「いったい何があったの?」


 リュー、カシュ―、と続いて最後に出てきたマーリンに駆け寄って事情を聴くと、彼は少し渋い顔をしながらリューと呼ばれた獣人の方に視線を投げた。


「それについては、僕の方から話すよ」


 そういうと、彼はニコリと笑みを浮かべてことの顛末を話し始めた。


 ***


「──えっと、つまりこれはその魔族というのが、魔王を復活させるための下準備のために仕掛けてたってことでいいのかしら?

 私たちはそれに巻き込まれて、その救出のために彼女が来た、と?」

「大方、そういう認識で大丈夫だよ」


 リューの話を聞き終えた後だった。

 ジュンはそれまでの彼の話をまとめると、頭を抱えながらため息を吐いた。


「……ありえない。ありえないわよそんなこと……」

「だが事実だ。てめぇは調子乗ってしくじって、そこの女がケツ拭きに来たんだよ。

 詳しい話は、こいつの話が事実ならてめぇのメイドに聞けば一発でわかる」


 いまだ信じられないという様子の彼女に、カシュ―が辛辣な態度で答えた。


 獣人の彼、リューの話を要約するとこの事件の真相の一端は以下の通りということらしい。


 曰く、魔王の下僕(しもべ)として魔族というのがいるらしく、彼らは日々、魔王復活に向けて秘密裏に活動している。

 今回の事件は実はその一端が表に出たものらしい。

 彼らの今回の作戦は、ある結界魔法を使って人々に魔王に関する記憶を植え付けること。

 そうやって人々の間で魔王に関する噂話や、実際に見たことがあるなどの伝聞を流すことによって、魔王がこの世界に実在するという共通認識を民間の間に広めることが目的だったらしい。


 彼曰く、今の世界は、神話の内容はただの御伽噺であり寓話であり、説法のための作り話という認識が一般的に広がっている。

 これによって、間接的に『魔王なんて存在しない』という認識が民間で共有されていて、この状態が魔王に対する封印を強固にすることにつながっているのだとか。


 だから、その認識を崩すことで、魔王の復活をしやすくする──あわよくば、これによって自力で魔王が復活してくれることを狙った行為らしい。


「ただ、この話が広まるのはあまりよろしくないんだ。

 だからお姉さんたちにも、このことについては黙っていてほしい。

 もし約束を破ったことがわかったら──」


 リューは、それぞれの目に1人ずつ視線を合わせると、ニコリと笑みを浮かべてこう脅した。


「──神殿の方から、何かあるかもしれないからね」


 生唾を飲み込む音が、静かな貯水槽に響き渡った。

 あの時は優しそうなかわいらしい少年だと思っていたのに、今は何というか──少し怖かった。 


現在の悠里のステータス


 +++


■ステータス■

 名前:鑑 悠里 Lv.8

 性別:女

 種族:異世界人 Lv.1

 職業:ノービス Lv.1

 称号:〈異世界人〉Lv.1

    〈臆病者〉Lv.2

    〈何にも束縛されない〉Lv.2

    〈無謀な挑戦者〉Lv.2

    〈導師見習い〉Lv.1

    〈追跡者〉Lv.1

    〈暗がりに潜む者〉Lv.1

    〈呪術医見習い〉Lv.1


 HP:80/80

 MP:80/80

 SP:110/110


 筋力:25

 活力:9

 速度:9

 知能:9

 感覚:15


 残りステータスポイント:0


■スキル■

◇武術系◇

 〈剣術〉Lv.4

  └〈偃月殺法〉Lv.1

   〈聖柄の太刀〉Lv.1

 〈体術〉Lv.1

  └〈空気投げ〉Lv.1

   〈投擲〉Lv.1


◇魔術系◇

 〈呪詛マスタリ〉Lv.1

 〈魔法〉Lv.1

  └〈術式理解I〉Lv.1

 〈結界〉Lv.1

  └〈反転結界〉Lv.1



◇身体操作系◇

 〈身体操作マスタリ〉Lv.1


◇防御・回復系◇

 〈自動回復〉Lv.2

 〈食い縛り〉Lv.1


◇耐性系◇

 〈驚愕耐性〉Lv.1

 〈痛覚耐性〉Lv.1

 〈負傷耐性〉Lv.2

 〈転倒耐性〉Lv.1

 〈気絶耐性〉Lv.2

 〈トラウマ耐性〉Lv.1

 〈脱水症耐性〉Lv.1

 〈熱中症耐性〉Lv.1

 〈精神攻撃耐性〉Lv.1

 〈拘束耐性〉Lv.1

 〈呪詛耐性〉Lv.4

 〈隷属無効〉Lv.1

 〈恐怖耐性〉Lv.3

 〈不意打ち耐性〉Lv.1

 〈閃光耐性〉Lv.2

 〈麻痺耐性〉Lv.1


◇隠遁系◇

 〈忍足〉Lv.2

 〈気配隠蔽〉Lv.2


◇感知系◇

 〈洞察〉Lv.2

  └〈名推理〉Lv.1

 〈気配察知〉Lv.5

  └〈霊感〉Lv.1

   〈先の先〉Lv.1

 〈魔力感知〉Lv.1

 〈遠見〉Lv.1

 〈暗視〉Lv.1


◇生活系◇

 〈交渉〉Lv.1

 〈高速思考〉Lv.2


◇ギフト系◇

 〈水神の加護〉Lv.1

  └〈水中呼吸〉Lv.1

   〈水上歩行〉Lv.1

   〈水袋勁〉Lv.1


 〈木神の加護〉Lv.1

  └〈成長促進〉Lv.1

   〈効力増強〉Lv.1

   〈笑桜勁〉Lv.1


 〈火神の加護〉Lv.1

  └〈二段跳び〉Lv.1

   〈燃焼無効〉Lv.1

   〈火鳥勁〉Lv.1


 〈土神の加護〉Lv.1

  └〈障壁〉Lv.1

   〈土圧無効〉Lv.1

   〈捻央勁〉Lv.1


 〈金神の加護〉Lv.1

  └〈金属操作〉Lv.2

   〈即死耐性〉Lv.1

   〈拡金勁〉Lv.1


 〈五行神の加護〉Lv.1

  └〈気功法〉Lv.1

    └〈遠当て〉Lv.1

     〈沈墜勁〉Lv.1

     〈纏絲勁〉Lv.1

     〈十字勁〉Lv.1


 残りスキルポイント:3


 +++



読んでいただきありがとうございました!

次回もよろしくお願いいたします!


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